乗馬経験者が忘れがちなこと

乗馬を続けていると、自分なりに課題がみえてきます。その課題をひとつずつ解消していくために、その日の目標を考えて騎乗する方も多いのではないでしょうか。そんなときにも、覚えておきたいのはパートナーの馬たちにもその日の気分や体調があるということ。今回は、乗馬に慣れてきたころに、つい疎かになりがちなポイントについて解説していきます。
馬の“気持ち”は毎回ちがう:調子や気分の変化に気づけてる?

人間もその日によって、気分や体調が違うのと同様に馬たちもその日の気分や体調に変化があります。乗り手に必要なのは、その日のパートナーの様子を見て、レッスン中にどのようにアプローチをしていくのがいいのかを意識しながら、コミュニケーションをとっていくことです。
お手入れや鞍をつける際に今日はイライラしているなと思ったら、鞍上は落ち着いて、うまくできたら馬をたくさん褒めながら、接してあげることが必要かもしれません。本当は仕事をするのが好きではないのかもしれないのに、乗り手に付き合ってくれています。できれば、馬たちにも乗り手と一緒に乗馬できて、楽しいという気持ちになってもらえるのがベストです。しかし、なかなかそう簡単にはいきません。そんなときもレッスン後には、ありがとうの気持ちをたくさん伝えましょう。
馬は人間の顔の表情を読めると言われているため、乗り手の皆さんの顔が笑顔であれば、馬にもその気持ちは伝わるはずです。また、馬の知能はだいたい人間の2〜3歳児と同じくらいだと言われており、褒め言葉は特によく記憶している馬も多いようです。いっぱい褒めて、馬の気持ちが乗ってくるように工夫しましょう。
また、ちょうど春は馬の繁殖シーズンですので、牝馬は少し落ち着きのないこともあります。なかには「フケ」と呼ばれる発情を示す牝馬もいます。この時期は少し怒りっぽくなったり、集中力に欠けてしまったりする牝馬もいます。フケのきている牝馬に騎乗することはないかもしれませんが、優しく接してあげましょう。
馬房に迎えに行くときから、耳や目の表情を見て、その日の気分などを観察するクセをつけるのがいいのかもしれませんね。
基礎の姿勢は崩れやすい:中・上級者ほど要注意

冬は寒いので騎乗をしていないという方もいらっしゃるかもしれません。馬上での基礎の姿勢は、慣れてしまえばクセになっているものですが、長い間、騎乗していないと、自分の体の本来のクセの方が強く露呈することもあります。中・上級者の場合はそれでも、意識をすれば、すぐに基礎の姿勢を取り戻すことができます。
また、経験豊かな乗り手であれば、自分の体のクセについて把握している方も多いので、修正力も十分にあります。例えば、股関節まわりが硬くなりがちであれば、馬上運動で股関節を十分にストレッチをしようと自分で判断できるでしょう。脚が前に流れてしまう場合も、鐙上げをして、脚をリラックスさせて騎乗しようと自分で対応策を見出すことができるはず。それでも、筋肉の衰えから下半身が不安定になってしまう場合はハムストリングや腸腰筋に効くストレッチやエクササイズをおすすめします。坐骨を立てて座るためにもある程度の筋肉は必要です。
久々に騎乗をして、あれ?ちょっとおかしいな、と思った場合は、まずは鏡を見たり、動画を撮影したりして、客観的にどこが崩れてしまっているのかを判断しましょう。特に怪我や病気で長期離脱していた方は、怪我や病気をしていた部分の筋力が衰えて、騎乗姿勢に影響してくることもあります。それを矯正していくのは、また新しいチャレンジにはなりますが、中級者や上級者の方であれば問題点をすぐに見つけて、対応していくことができるはずです。
鞍の手入れとフィッティング:馬具の状態が馬にも影響する

鞍のフィッティングは馬の背中のコンディションに直接、影響します。よくみられるのが、鞍傷(あんしょう)。鞍が擦れることによって、馬の背中に傷ができてしまいます。鞍の形や馬の背中の形もそれぞれなので、鞍傷ができないようにボアやゲル、鞍を固定させる馬具を使うことを検討する必要があります。腹帯の長さも適切なものを使用することが大切です。今一度、馬装をした際に確認してみましょう。経験者であるからこそ、馬にあたりの優しい馬装を目指したいですね。特に腹帯を装着する際は、馬にも人間にも優しい装着のコツがいくつかあるようです。いくつかご紹介しますので、是非、お試しください。
また、馬の体に密着させるものなので、鞍自体も清潔に保つ必要があります。特に馬体が直接触れる部分は砂などのごみもきれいにしなければ、擦り傷を作ってしまうこともあります。馬たちが傷つかないように鞍のお手入れも大切です。
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馬との“挨拶”を忘れてない?:信頼関係は毎回ゼロから積み上げ

馬たちにも気持ちがあり、自分のことを理解して、接してくれる人間を信頼します。馬は草食動物で、常に捕食されるリスクのある環境で生き残ってきたことから、とても用心深く、怖がりで慎重な動物です。自馬で毎日会ってお手入れをしている、ということでもなければ、毎回、必ず挨拶をきちんとして、関係性をしっかり築き上げる必要があります。
まずは自分のことを覚えてもらうことから始めましょう。1ヵ月に1度のペースで騎乗する乗り手の場合、馬は乗り手のことをあまり覚えていないかもしれません。いい印象を与えられるように、その都度、挨拶をして愛情をもって接していきましょう。
まとめ
今回は乗馬経験者が忘れてしまいがちなことについて、深掘りしてみました。レッスンのときは乗り手の要求をたくさん馬に聞いてもらっています。馬からのコミュニケーションを受け取って、スムーズに返してあげられる乗り手を目指していきたいですね。