気分は武士!流鏑馬を体験してみませんか?
直線を馬で疾走しながら矢を射る流鏑馬(やぶさめ)。馬術も弓術もできなくてはいけないなんて難しそうですよね。でも実は、その流鏑馬を体験できる牧場や乗馬クラブがあるんです!今回の記事では、そんな流鏑馬の歴史や体験コースについて紹介します。
武士のたしなみ、流鏑馬とは?
流鏑馬の概要
流鏑馬(やぶさめ)は、馬に乗って直線の馬場を駆け抜けながら左側にある3つの的を弓矢で射る古式馬術です。本来は和種馬(在来種の木曽馬など)を使用しますが、流派や催事によってはサラブレッドなどで行われることもあります。
直線の馬場はスタート(馬場元)からゴール(馬場末)まで約250m。長いように感じますが、馬で疾走すると30秒もかかりません。馬場元から一の的(最初の的)までは約35m。その後、90mおきに二の的・三の的が立っています。疾走する馬の上で安定した姿勢を保ちながら、10秒にも満たない時間で次の矢をつがえて放つ姿は圧巻です。
流鏑馬の歴史
流鏑馬が形式化される以前から、実戦において馬上から弓を射る「騎射」は行われていました。これが「複数の的を続けざまに射る」という形になったのは欽明天皇の時代(522年)。天下泰平・五穀豊穣を願うための神事として、騎射に長けた者が選ばれ3つの的を射抜いたのが始まりとされます。
それから流鏑馬は神事・催事として広まり、平安時代には「礼法」として確立されたのでした。しかし、戦国時代以降は騎馬ではなく鉄砲などによる集団戦術が主流となり、また明治時代には武士の世が終わりを告げるなど何度となく技術継承の危機に見舞われました。
そんな中でも、弓馬故実の流派である小笠原流や武田流、そして各地の神社や諸藩の尽力により今にその姿を伝えています。
乗馬初心者、弓道初心者でも大丈夫?
初心者でも安心の理由
ここまで読んでみて「かっこいい!」「やってみたい!」と思った人も多いのではないでしょうか?逆に、馬に乗ったことがある人は「走っている馬の上で弓を持つだけでも難しそう」と感じたかもしれませんね。
とはいえ、流鏑馬体験は多くの場合初心者コース・経験者コースに分かれています。そのため、乗馬や弓道の経験が無くても大丈夫。馬術と弓術それぞれ必要な練習をしてから、安全な範囲での体験をすることができます。
流鏑馬体験ができる主な牧場・乗馬クラブ
- 青森県十和田市 十和田乗馬クラブ
- 茨城県桜川市 大和ホースパーク
- 山梨県南都留郡 紅葉台木曽馬牧場
- 山梨県北杜市 カナディアンキャンプ八ヶ岳
- 滋賀県近江八幡市 御猟野乃杜(みかりののもり)牧場
- 福岡県飯塚市 乗馬クラブピント
- 福岡県宗像市 カナディアンキャンプ乗馬クラブ
- 佐賀県武雄市 武雄流鏑馬乗馬クラブ 藤武会
体験コースの内容は?
1~3時間のコース
体験コースといっても時間設定はさまざまで、1~3時間程度の体験を行っているところもあります。「1日コースは体力に自信がない…」という人は、ぜひ数時間のコースで流鏑馬を体験してみましょう。今回は、滋賀県近江八幡市の御猟野乃杜牧場が行っている1時間の「流鏑馬体験」を参考に流れを紹介します。
数時間の場合は、最初に馬と軽く触れ合ってから前半30分は弓術の体験をします。内容は、矢の持ち方・つがえ方、的の狙い方の練習などです。地上に立った状態での練習ですが、鏑矢を射ったことがある人はなかなかいないので覚えることは盛りだくさんですね。
普段乗馬では上半身も手綱を引いたり馬に合わせて姿勢を変えたりと「馬」に集中しているので、乗馬経験者でも「馬に乗りながらこんなに複雑な動作ができるかな?」とちょっと心配になるかもしれません。
そして、残り30分で馬装をして、いよいよ馬に乗ります。もちろん、初心者でも安心して体験できるよう先導馬が付いて、まずは並歩で馬場内を散歩するように回ります。その後、並歩の状態で進んでいる馬の上からの騎射体験。
たった1時間でもここまで体験できるなんて、これはぜひやってみたいですね!ちなみに、御猟野乃杜牧場では1日コースの流鏑馬スクーリングも行っているので「1時間じゃ足りない!もっと本格的にやってみたい!」という方は、ぜひそちらもチェックしてみましょう。
1日コース
コース内容は牧場や乗馬クラブによりさまざまです。そのため、今回は紅葉台木曽馬牧場の「流鏑馬スクーリング」の流れを参考にコース内容を紹介します。
まず、午前中は馬の世話や馬装から。乗馬経験者にとっても和鞍での馬装は新鮮な体験です。乗馬経験がない人にも、馬に慣れるために大切な時間ですね。準備ができたら、1時間程度の外乗へ出かけます。
この外乗では、観光乗馬で行うようなトレッキングではなく「立ち透かし」の練習を行います。立ち透かしは和式馬術独特の乗法で、ツーポイントのように腰を浮かせることで疾走する馬上でも安定した姿勢を保つ乗り方です。
基本姿勢を習得したところで一旦昼の休憩となり、午後はいよいよ弓の練習です。まずは馬に乗らずに弓の構え方や矢のつがえ方、的の狙い方などを練習します。矢の種類や姿勢が弓道とは違うので、弓道経験者にとっても新鮮な体験かもしれません。
馬と弓の基本がある程度身に付いたら、馬上からの実射にうつります。先導馬を付けて並歩で弓を射ることから始めますが、スクーリングに繰り返し通っている人は走路(直線の馬場)での体験を行い単騎&駆歩での騎射ができるようになります。
他の乗馬クラブや牧場では、木馬を使って馬上での姿勢を練習したり軽トラックの荷台から的を狙う練習をするところもあるそうですよ。
一日体験の費用は?
1日体験の費用は、17,000~25,000円程度。それに加えて、事故に備えた1日スポーツ保険の料金や弓矢や衣装のレンタル代が別にかかる場合があります。
金額としては決して安くはありませんが、普通の乗馬クラブでの体験乗馬が30分で5,000円ほどかかるのを考えたら「この金額でこんな経験が長時間できるの!?」と感じますね。
まとめ
神事やイベントで見る「流鏑馬」。体験できる場所は限られているものの、少しでもあのカッコよさに近付けるならぜひやってみたいですよね!普段の乗馬とは違う姿勢や乗り方をすることで、何か新しい気付きに出会えるかもしれませんよ。