袴姿の和式馬装で大疾走!富士の樹海を駆け抜ける女性に釘付け!
今Twitterを活用する人は多く、皆さんの中にもTwitterを楽しむ人は多くいることでしょう。Twitterでは様々な情報を気軽に得ることができます。もちろん乗馬や馬に関する情報も溢れています。
今回はTwitterに投稿し、4万件を超えるほどの「いいね」をつけられるほど話題になっている動画を紹介します。
大河ドラマ?戦場を駆け巡るとこんな感じ?
今話題となっている乗馬動画があるのをご存じでしょうか。馬に乗り颯爽と走る姿にカッコ良さと気持ちよさを感じ、動画が進むにつれどんどん引き込まれていく感覚を覚えます。
ここで注目したいのは2つ。「騎乗者の格好」と「ブレのない映像」です。ここではこの2つに注目して話題の動画を紹介します。
和種馬で和式馬装、袴をはいて襲歩
紅葉台木曽馬牧場の外乗コースを駈け、途中、ちょっと道から外れて山に入ってみたりしている動画馬は先頭から凛、撮影者が乗っている二番目が章姫、三番目の白馬は翼。オリエンテーリングの子供達が道にいたので、注意しながら見通しの良いところだけを走りました pic.twitter.com/BFivpZckD7
— 市村弘 (@kerpanen) October 12, 2020
騎乗者の格好が話題?
話題の動画に写る女性の乗馬の上手さはもちろんのこと、注目されているのは格好です。女性が身にまとっているのは、「袴」です。
流鏑馬を思えば袴をはき乗馬するのも普通なのですが、それはイベントなどで目にする姿と言えます。「さあ乗馬しよう」と思い付き袴を用意する人は少ないでしょう。一般的に乗馬をする時には乗馬用キュロットという乗馬に適したズボンを履く姿が多いと言えます。
ビシッと決められた女性の袴姿は、なんだか身が引き締まる思いも感じ印象的です。また自然に映えより一層カッコ良さを感じます。
ぶれない映像
映像で分かる通り、女性は襲歩という歩度で馬を走らせています。ギャロップとも呼ばれる、全力で走らせている状態です。
映像は固定カメラを設置して横から撮ったものではなく、女性を追う形で馬に乗り一緒に襲歩させながら撮っている映像です。そのため馬に乗って走る爽快感を感じることができるようになっています。
馬の背中は反動が大きく、どんなに乗馬歴が長い人でも揺れを感じるものです。しかし全く映像がぶれることなく撮影されています。また先を走る女性もまた、馬が全力で走っているのにもかかわらず、体を安定させ乗り続けており、映像を見た人からは驚きの声が寄せられるほどです。
なぜこのような乗り方ができるのか、それは和式馬術の「立ち透かし」という方法を用いて騎乗しているからです。和式馬術については後ほど詳しく紹介します。
「立ち透かし」とは、鞍からお尻を上げた状態で膝を使って馬の反動を吸収し乗る方法です。この乗り方を用いることで、頭や体を安定させることが可能になるのです。またこの乗り方は流鏑馬と同じ乗り方になります。
女性も動画を撮影している人も、立ち透かしで騎乗しているからこそブレのない迫力のある動画を撮ることができたのです。
和式馬術は小柄な馬でもパワーが出せる
この動画では和種馬に和式馬術で騎乗されていることが記されています。「和種馬」「和式馬術」は馴染みのある馬の種類でも乗馬方式でも無いと言えるでしょう。
乗馬クラブに通おうとしたとき、多くの場所は「ブリティッシュ」「ウエスタン」といったスタイルが一般的で、馬も和種馬は見られません。オリンピックや硬式の大会でも、ブリティッシュスタイルで行われることがほとんどです。
ではこの動画で記される、「和種馬」「和式馬術」とはどのようなものなのでしょうか。ここで詳しくご紹介します。
和種馬とは
和種馬とは日本古来からいる馬の事を指し、日本では在来馬・和種馬・在来和種と呼ばれています。モンゴルから来た蒙古系の馬が始まりと言われており、外来の馬との混ざりなく残った種類が和種馬とされています。
和種馬の最大の特徴は、体高が130cm前後の小さい体と言えます。日本人も世界で比べれば体の小さい人種であり、和種馬は騎乗しやすい馬と言えるでしょう。
また体は小さいものの丈夫で、扱いやすいと言われており、学習やトレーニングをすることにより様々な仕事に力を発揮できる馬です。脚の関節や首が太く、胸幅が広いこともありがっちりした体型です。小さくてもパワフルな走りを見せてくれます。
純血の和種馬は、「北海道和種」「木曽馬」「御崎馬」「対州馬」「野間馬」「トカラ馬」「宮古馬」「与那国馬」の8種類の品種がいます。しかし現在では個体数が少なく、絶滅が危ぶまれています。
和式馬術とは
和式馬術とは130cm前後の和種馬の力が、最大に発揮できるように工夫された乗馬技術を指します。昔は甲冑を着た男性を背中に乗せ走る必要があり、小さい体の馬には大変重労働でした。馬の負担を減らし体力の消耗を減らすと共に最大限力が発揮できるよう考えられたのが、和式馬術なのです。
基本の乗り方は、「居鞍乗り」と「立ち透かし」で、どちらも馬の肩甲骨や背中の動きを邪魔しない乗り方と言えます。特に「立ち透かしは」上体を安定させ動かすことが可能になるため、戦闘の際などに用いられていました。
今でも和式馬術を応用し、「流鏑馬」「馬上武芸」「和式競馬」「馬上舞」「遠乗り」「和式馬場」といった競技や演技が行われています。
日本唯一!大学の和式馬術部発見!
古くから日本で使われる馬術スタイルですが、今現在もこの和式馬術を教える乗馬クラブは少ないと言えます。また学生たちによる馬術部の多くも、ブリティッシュスタイルやウエスタンスタイルで活動されています。
今ではすっかり少数派となってしまっている和式馬術ですが、現在でも和式馬術で活動している大学があります。それは名古屋大学です。名古屋大学には和式馬術部があり、学生たちがかわいい和種馬と共に和式馬術を楽しんでいます。
サラブレッドとの馬術を楽しむ馬術部とは違い、和式馬術部は和種馬と日本の歴史が関わってきます。そのため日本の馬文化に触れるため、馬術という実践的練習だけでなく馬学会という日を設け、日本馬や馬術について「馬」「馬具」「武術」「馬を使った神事」などを文献から学んでいます。
まとめ
乗馬や競馬など様々な場で様々な馬が活躍している中で、どうしてもシュッとした見た目で数も多いサラブレッドに注目が集まりがちです。皆さんのお近くの乗馬クラブでも、ブリティッシュスタイルやウエスタンスタイルの馬術を教える教室は見かけても、和式馬術での乗馬クラブはなかなかないでしょう。
しかし日本には古くから、和種馬と共に生活したり戦に挑むといった暮らしがありました。和種馬の体をに合わせ、力を発揮できるようにと考え出された和式馬術からは、日本の歴史や日本の生活の知恵・馬に対する愛情を学ぶきっかけとなります。現在馬に興味がある・乗馬を習っている人は、新しく乗馬の知識を得るきっかけになるのではないでしょうか。
今回は袴姿の女性の和式馬術で馬と駆け抜ける動画が話題になったことで、和種馬と和式馬術に注目されることとなりました。ここをきっかけに今一度、和種馬と和式馬術に注目を集め興味を示す人が増えることを願います。