外乗や大会に参加するための乗馬に関するライセンスや騎乗者資格など総まとめ
ライセンスの認定団体
全国乗馬倶楽部振興協会
公益社団法人 全国乗馬倶楽部振興協会では「乗馬技能検定」を行っています。この検定は騎乗者としての技術を確認するもので、大きく分けて1~5級があります。
日本では乗馬といえばブリティッシュが主流ですが、全国乗馬倶楽部振興協会の乗馬技能検定ではウエスタンの技能検定も設けられているのが特徴です。
日本馬術連盟
公益社団法人 日本馬術連盟では「騎乗者資格」の認定を行っています。騎乗者資格には大きく分けてA~C級があり、エンデュランスや馬場に限定した資格もあります。
この資格は騎乗技術の確認になるだけでなく、国内外の大きな試合ではエントリーの条件となってきます。そのため、乗馬を一定期間続けていくと騎乗者資格の受験を勧められる人も多いのではないでしょうか?
その他
日本で乗馬技能の資格といえば、先ほど紹介した2つが主流です。しかし、そのほかにも乗馬に関する技術認定を行っている団体があるのでご紹介しますね。
日本社会人団体乗馬連盟
日本社会人団体乗馬連盟は、職域乗馬団体で構成された馬術連盟です。この連盟が主催する「キャロットステークス」は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
認定を行っているのは「馬術技能資格」と呼ばれる資格でA~Cグレードの3区分があります。
一般社団法人 全日本学生馬術連盟
大学によって組織される全日本学生馬術連盟(学馬連)。令和3年からは、晴れて一般社団法人となりましたね。大学の馬術部では、学馬連が主催している“三大大会”目指して練習を重ねているという人も多いかもしれません。
学馬連では、騎乗者資格B級相当とされる大学生用ライセンス「騎乗者資格SA級」の認定を行っています。学馬連が主催する大会や競技会では、日馬連の騎乗者資格B級、もしくは学馬連のSA級を持っていることが出場条件となっています。
全日本高等学校馬術連盟
高校によって組織されている全日本高等学校馬術連盟(高馬連)。ここでは、高校生が使用することができる騎乗者資格の認定を行っています。
この騎乗者資格には「HC級」と「HB級」の2区分があり、それぞれが日馬連の騎乗者資格C級・B級相当のレベルとなっています。
日本乗馬少年団連盟
小さい頃から乗馬をやっていた人は、もしかすると各乗馬クラブの“少年団”に入っていたかもしれません。この少年団関係者で組織される日本乗馬少年団連盟では、技能認定試験を行っています。
技能認定試験には「初級」「中級」の2区分があり、それぞれが日馬連の騎乗者資格C級・B級相当のレベルとなっています。
馬に関するライセンス一覧
ここまで、国内の主な乗馬ライセンス認定団体を見てきました。ここからは、主なライセンスである日本乗馬倶楽部振興協会の「乗馬技能検定」と日本馬術連盟の「騎乗者資格」について詳細を見ていきましょう。
乗馬技能検定・ブリティッシュ5級~3級
まずは通称で単に「乗馬ライセンス」とも呼ばれるこちらの資格について。日本で乗馬と言えばブリティッシュスタイルが主流なので、ブリティッシュ5級はもっとも基本的なライセンスとも言えますね。
ちなみに、実技の内容を比べると乗馬技能検定のブリティッシュ5級は、騎乗者資格C級よりも難易度が低くなっています。まずは自分が馬や乗馬技術についてどれくらい分かってきたかな?と気軽に挑戦してみるのも良いかもしれません。
気になる審査内容はこちら↓
ブリティッシュ 5級
実技:乗馬&下馬、手綱の操作、騎乗姿勢、軽速歩(誘導馬あり)
筆記:馬体名称、馬の手入れや取り扱いなど
ブリティッシュ 4級
実技:速歩での騎乗姿勢、手前変換、扶助など
駈歩の発進&維持
筆記:馬の毛色、馬体や馬具の名称、号令など
ブリティッシュ 3級
実技:駈歩の発進&維持、歩度の伸縮、巻き乗り、手前変換
基本的な扶助の適否、地上横木の通過など
筆記:5級と4級の内容+蹄の名称、馬場運動の図形など
日本乗馬倶楽部振興協会の乗馬技能検定は、ブリティッシュ5級から3級まで昇級すると、次からは競技ごとの検定に枝分かれしていきます。次の見出しからは、馬場馬術・障害飛越・エンデュランスについての検定内容をまとめたのでチェックしてみてくださいね。
乗馬技能検定・馬場2級~1級
ブリティッシュ3級を持っていると、馬場2級の受験資格が得られます。乗馬技能検定の馬場2級~1級での審査内容は、より馬場馬術競技に特化したものになっています。
馬場の筆記試験は、日本乗馬倶楽部振興協会から発行されている「レッツエンジョイライディング」とJEF競技会規程から出題されます。よく読み込んでおきましょう!
実技の審査内容はこちら↓
馬場 2級
日本馬術連盟制定馬場馬術競技 A2課目 にて審査
馬場 1級
日本馬術連盟制定馬場馬術競技 A3課目 にて審査
乗馬技能検定・障害3級~1級
ブリティッシュ3級を持っていると、障害3級の受験資格が得られます。乗馬技能検定の障害3級~1級での審査内容は、より障害飛越競技に特化したものになっています。
馬場と同じく、障害の筆記試験も日本乗馬倶楽部振興協会発行の「レッツエンジョイライディング」とJEF競技会規程からの出題となります。
実技の審査内容はこちら↓
障害 3級
障害数6~8個程度(コンビネーション障害なしでも可)
高さ90㎝程度の障害を2個以上設置
障害 2級
障害数8~10個程度で(ダブル障害を含む)
高さ110㎝程度の障害を1個以上設置
障害 1級
障害数8~10個程度で(ダブル障害を含む)
高さ110㎝程度の物を全障害数の70%以上設置
乗馬技能検定・エンデュランス3級~1級
ブリティッシュ3級を持っていると、エンデュランス3級の受験資格が得られます。馬に乗り、数十kmの長距離を駆け抜けるエンデュランスは、馬にとって負担の大きな競技です。そのため、筆記試験には馬の健康管理に関する出題も多そうですね。
各級の審査内容はこちら↓
エンデュランス 3級
実技:20kmトレイルライド完走
筆記:JEF競技会規定の競技ルール、馬の健康管理など
エンデュランス 2級
実技:40kmトレイルライド完走
筆記:JEF競技会規定の競技ルール、基礎獣医学など
エンデュランス 1級
筆記試験なし。国内外のエンデュランス競技で80km以上のコースを3回完走
(主催者の発行する完走証明書が必要となります)
乗馬技能検定・ウエスタン5級~1級
では、ここからは日本乗馬倶楽部振興協会の特徴でもあるウエスタンの乗馬技能検定についてまとめていきます。ブリティッシュを習っている人には馴染みのない言葉も多いかもしれませんが、気になる方はウエスタンの審査内容も見てみてくださいね。
ウエスタン 5級
実技:乗馬(マウント)・下馬(ディスマウント)、開き手綱の操作
停止(ストップ)・常歩(ウォーク)・速歩(ジョグ)
(ダブルハンド・手綱結び・部班先導馬可)
筆記:レッツエンジョイウエスタン等を参考に出題
馬体名称、馬の手入れや取り扱い
ウエスタン5級で使う運動号令
ウエスタン 4級
実技:方向転換、速歩(ジョグ)までの歩法の移行
駈歩(ロープ)の発進・維持
(ダブルハンド・手綱結び・部班先導馬可)
筆記:レッツエンジョイウエスタン等を参考に出題
馬の毛色、馬体や馬具の名称
ウエスタン4級で使う運動号令
ウエスタン 3級
実技:駈歩(ロープ)の発進・維持、手前(リード)の理解
駈歩(ロープ)までの歩法の移行、バックアップ
常歩(ウォーク)または速歩(ジョグ)でログを通過
(ダブルハンド可、手綱結び不可)
筆記:レッツエンジョイウエスタン等を参考に出題
馬の毛色、動き方、蹄の名称
ウエスタン3級で使う運動用語
ウエスタン競技種目について
ウエスタン 2級
実技:駈歩(ロープ)の伸縮、ロールバック
シンプルリードチェンジ(ストックシートメダルパターン含む)
扶助操作の適否・調和が取れているか
(ダブルハンド可、手綱結び不可)
筆記:レッツエンジョイウエスタンより出題
乗馬の心得、競技規定(小冊子から出題)
ウエスタン2級で使う運動用語
ウエスタン 1級
実技:扶助操作の適否・調和
(手綱結び不可)
筆記:レッツエンジョイウエスタンより出題。
競技規程(小冊子から出題)
採点法、スコア0とノースコアについて
騎乗者資格・C~A級
日本乗馬倶楽部振興協会の乗馬技能検定は、級の数も競技も盛りだくさんでしたね。ここからは、日本馬術連盟の騎乗者資格についてまとめていきます。
騎乗者資格 C級
日本馬術連盟の会員であれば、騎乗者資格C級を受験可能です。このC級に合格すると、騎乗者資格B級、B級馬場馬術限定、エンデュランスC級の受験資格を得ることができます。
審査内容はこちら↓
実技:馬場内での蹄跡行進や巻き乗り、横木の通過
(主に軽速足、一部は駈足。コース読み可)
合格基準は50%
筆記:馬体や馬具に関する問題が中心
80点以上が合格基準
騎乗者資格 B級
日本馬術連盟個人会員であり、騎乗者資格C級を取得していればB級の受験が可能です。B級を持っていると国内の日本馬術連盟主催・公認競技会に出ることができるので「いろんな試合に出てみたい!」という人はぜひ積極的に受験しましょう。
※「B級取得」以外の詳細な出場条件については、各競技会の要項をご確認ください
審査内容はこちら↓
実技:馬場(JEF馬場馬術競技第2課目) 45%以上が合格基準
障害(コース走行審査) 6点以上が合格基準
筆記:馬体名称や馬具、品種競技ルール、馬スポーツ憲章など
騎乗者資格 A級
A級は国際競技会へ出場するため必要な資格で、B級資格取得者かつ一定基準以上の競技経験を有することが認定条件となります。認定試験はなく、書類審査のみで認定が行われます。
騎乗者資格・B級 馬場馬術限定
騎乗者資格C級の取得した後はB級を受ける人が多いと思いますが、騎乗者資格には馬場馬術限定のB級も設けられています。通常のB級と同じく、C級を取得していることが受験条件です。
審査内容は筆記試験と実技試験(JEF馬場馬術競技第2課目)で、合格すると馬場馬術競技に限定した日本馬術連盟主催競技会・公認競技会の出場資格が得られます。
騎乗者資格・C~A級 エンデュランス限定
エンデュランス C級
通常の騎乗者資格C級を取得すると、「B級」「B級 馬場馬術限定」の他に「エンデュランスC級」も受験できるようになります。受験前に講習会を受講する必要があり、その上で実技試験と筆記試験も行われます。
エンデュランスC級は「B級 エンデュランス限定」の受験資格にもなっているので、そちらを目指している人は挑戦してみてくださいね。
B級 エンデュランス限定
エンデュランスC級の取得が受験条件となっています。筆記・実技の試験と併せて、講習会を受講または公認協議での完走証明を提出が必要となります。
「B級 エンデュランス限定」に合格すると、エンデュランス競技に限定した日本馬術連盟主催競技会・公認競技会の出場資格が得られます。
A級 エンデュランス限定
エンデュランス競技に限定したFEI公認国際競技会へのエントリーに必要な資格です。エンデュランス限定の場合も、A級の認定には試験はなく書類審査のみです。
乗馬技能検定と騎乗者資格の違い
ここまでは各資格の詳細を見てきましたが、いかがでしたか?ところで、乗馬倶楽部振興協会の「乗馬ライセンス(乗馬技能検定)」と日本馬術連盟の「騎乗者資格」は混同されてしまうことも多い資格。今回は、簡単に2つの違いを解説しますね。
まず、日本で乗馬をしている人の中では「ブリティッシュスタイルで乗馬を習っていて障害飛越の練習をすることが多いよ」というタイプが多数派だと思います。
そういった場合、もし受験理由が“自分の乗馬レベルの確認”であれば、2つの資格は「認定団体が違うだけ」と考えても大丈夫です。審査対象となる知識や乗馬技術には大きな違いがないので、タイミングや受験条件を確認して受けやすい方を選びましょう。
しかし、もし積極的に大きな試合に出ることを考えている場合は「騎乗者資格」の受験をおすすめします。さきほど各資格の紹介でもお話ししましたが、騎乗者資格B級は日本馬術連盟が主催・公認する競技会のエントリー条件となっているからです。
一方「まだ騎乗者資格C級は自信が無い」「ウエスタンに関する資格を取っておきたい」という人には「乗馬ライセンス(乗馬技能検定)」がおすすめです。
ラインセンス取得でこんなことができるようになります!
外乗(ホーストレッキング)が楽しめます
では、最後に乗馬のライセンスを取るとどんな場面で役立つのか見てみましょう!まず、どのライセンスにも共通のメリットは「騎乗技術を客観的に証明できる」ことです。
そうすれば「私は、これくらい馬に乗れます」と伝えることができますね。その結果、初めて乗馬をする場所でも未経験者よりも自由に乗らせてもらえることがあります。
具体的には、引き馬が基本の観光乗馬や、先導馬について決まったコースを歩く外乗(ホーストレッキング)。もしライセンスがあれば、引き馬ではなく馬場の中で駈足をしたり、外乗でもゆっくりと歩く以外の楽しみ方ができるかもしれません。
もちろん、実際どれくらい自由に乗らせてもらえるかは担当の方の判断となりますが、機会があればぜひ乗馬ライセンスがあることを伝えてみましょう!
乗馬技能検定(全国乗馬倶楽部振興協会認定)の場合
通称「乗馬ライセンス」と呼ばれている乗馬技能検定。使い道としては、先ほど紹介したように出先で乗馬を楽しむための“騎乗技術の証明”もしくは、自分自身が今の知識や技術を確認するための“目安”としている人が多いと思います。
この資格のメリットは、乗馬をしている人を広くカバーできることではないでしょうか。特に5級に関しては最短2日で取得できるとされていて、未経験者が週末のみで取ることも夢ではありません。
ライセンスというと経験者が受験するイメージが強いと思いますが、取得をきっかけに本格的に乗馬を習ってみるのもおすすめです。乗馬技能検定から始めても、障害2級まで進めば日本馬術連盟の騎乗者資格B級への移行もできるのも嬉しいですね。
騎乗者資格B級への移行や費用の比較については「日本馬術連盟の騎乗者資格とは?」の記事もチェックしてみましょう!
騎乗者資格(日本馬術連盟認定)の場合
これまでも紹介してきたように、騎乗者資格の一番の使い道は“競技会へのエントリー条件を満たす”ことではないでしょうか?なんと言っても日本の馬術に関しては最も大きい組織ですし、ここで資格の認定を受けておけば何かと安心ですよね。
もちろん競技会だけが乗馬の楽しみ方ではありませんが、競技を通して大好きな馬のことを「もっと知りたい」と感じることもあるはずです。
まとめ
日本で取得できる乗馬のライセンスは乗馬技能検定と騎乗者資格が主流です。しかし、それ以外にも騎乗者資格に移行可能なライセンスの認定を行っている団体があります。自分の年齢や状況に合わせて、将来的にはどのライセンスを取ってみたいか考えながら無理なく段階的に挑戦していきましょう!