乗馬ズボンを検索したら何か違う!なぜニッカポッカが?
そもそも乗馬ズボンとは?
乗馬ズボンを検索してみると、「そうそう、これこれ!」と思うものがヒットする人、「思っていたのとは違う!」と感じる人もいるのではないでしょうか。
後者の場合、大工さんが着用しているニッカポッカが並んでいるのをみて、なぜ!何故!何だこれ~~!!って思いましたよね。乗馬で使うズボンを検索したい場合、検索キーワードにキュロットを使うか、ジョッパーズを使うか、はたまたパンツを使うのがいいと思います。
「乗馬のときに履くもの」というだけで、いろいろな呼び方があります。これらの「乗馬ズボン」について紹介します。
ドレッシーな乗馬服
乗馬の歴史はもともとヨーロッパの17世紀までさかのぼり、上流階級の社交の場でもありました。そのため他のスポーツに比べても、服装がフォーマル、ドレッシーな感じが強くなっています。
ブリーチ
当時、ポロ競技や狩りのときには自分の脚の形に合わせたオーダーメイドの革長靴を履いていたようです。そして、それに合わせ裾が邪魔にならないようにふくらはぎ丈の短めの「ブリーチ」というズボンを履いていたようです。
ジョッパーズ
19世紀後半になるとポロ競技で活躍していた北インドJodpurs地方の王子様が履いていた、腰回りに余裕があるズボンに改良を加え「ジョッパーズ」が誕生しました。
ジョッパーズは足首まで丈があり、革長靴より安いショートブーツ(ジョッパーブーツ)で合わせるものになります。
またこの場合、裾とブーツの隙間から砂が入るのを防いだり、見栄えがいいことからチャップスを付けることが多いです。
ここで、ジョッパーズを女性で初めて履いた人物をご存知でしょうか。それは、シャネルを創設したファッションデザイナー、ココ・シャネルといわれています。それまで女性の乗馬スタイルは、サイドサドル方式とよばれる横向きに座るスタイルが一般的でした。1920年代になって女性も男性と同じようにジョッパーズを履いて、馬に跨るようになりました。
ブリーチとジョッパーズの使い分け
ブリーチとジョッパーズという2種類の乗馬ズボンですが、欧米ではこれらが使い分けされていました。
ブリーチとロングブーツの組み合わせは競技会やプロなどの上級者用、ジョッパーズとジョッパーブーツはカジュアルな乗馬や普段使い用に使われていたようです。
しかし、すぐにサイズが合わなくなってしまう成長期の子供は、オーダーメイドでロングブーツを作るのはもったいないので、ジョッパーズとジョッパーブーツのスタイルが練習だけでなく競技会にも使える服装とされていました。
ジョッパーズも同義で、ニッカポッカも含まれる
日本では乗馬が一般的ではなく、欧米の裕福な人が嗜むスポーツという印象が大きかったようです。そのため、服装もトラディショナルなものとして、ブリーチが主に販売されて広まりました。
また、昔の日本人は欧米人に比べて身長も低く、足も短かったことが推測できます。そうすると日本人的には、欧米人の足首まであるジョッパーズよりは、ふくらはぎ丈のブリーチの方が受け入れやすかったのではいないかという説もあります。
そういった背景から、昔の日本では「乗馬ズボン」というとブリーチという認識が強かったようです
ジョッパーズもポピュラーに
次第に、安くカジュアルに使えるジョッパーズも受け入れられ、一般的になってきました。
今ではショートブーツやチャップスと合わせてジョッパーズも皆さんの選択肢に入ってきたのではないでしょうか。
ニッカポッカ
ニッカポッカをご存知でしょうか。建設現場などで働く鳶職人が履いている、ダボダボのズボンといえばイメージができるでしょうか。
「乗馬ズボン」で検索をするとこのニッカポッカがヒットすることもあり、その理由に驚く人もいるのではないでしょうか。
ニッカポッカはダボっとしているため動きやすく、身体との間に隙間があるためケガを予防できるともいわれています。また、高所作業で風を計測したりバランスがとれるなど、安全面に大きく影響があります。
さらに、この隙間があることで夏は涼しく、冬は下に着こんでいてもかさばらない利点もあり、作業員の必需品になっています。
ニッカポッカが乗馬ズボン?
実は現場で働く作業員のダボダボズボンには種類があるのをご存知でしょうか。時代の流行りもありますが、大きく分けて「ニッカポッカ」「七分(しちぶ)」「乗馬ズボン」に分かれます。
ニッカポッカは一般的なダボダボしたズボンで、そのゆとりが足首まであるものをいいます。よく建設現場や町でみかけることもあるのではないでしょうか。
七分はひざ下の七分丈くらいまではダボダボしていますが、そこから下はフィット感があるズボンになっています。七分は新人の作業員ではなく腕に自信を持つようになってきたころに履くようです。
乗馬ズボンは、一見スキニータイプのズボンと見間違えるくらいダボダボ感がありません。太もものあたりだけがダボっとしている感じで、乗馬ズボンという名前に納得する形をしています。乗馬ズボンを履くのは、親方くらいの腕と位がある人と言われています。
このように種類はあっても、作業内容・安全性を考えると建設現場で働く鳶職人にとっての作業ズボンは、形が特徴的なニッカポッカ・七分・乗馬ズボンが必需品となっています。
だから乗馬ズボン=作業ズボン
では、馬に乗る人にとって乗馬ズボンはどのような機能性が求められるのでしょうか。国際競技で定められている乗馬服からみてみましょう。
優雅さと安全性
まず国際競技では種目ごとに服装が決まっています。例えば、障害馬術競技では襟付きシャツにタイを締め、白のキュロットに競技用の上着を着ることになっています。そして革長靴に保護帽としてヘルメットを被ります。
馬場馬術競技では、基本は障害馬術競技と同じですが、さらに優雅に見せるため丈の長い燕尾服を着用し、頭にはトップハットをかぶることになっています。しかし近年は、安全面からトップハットではなくヘルメットの着用が推奨されています。
また、野外走行のクロスカントリーでは服は安全面を第一に考え、比較的自由になっています。しかしシャツの上にボディプロテクターを着用することになっています。
このように種目によっても服装に求められるものが変わってきますが、共通してもとめられているものもあります。
乗馬ズボンで大切なもの
乗馬で鞭を使うこともありますが、基本は人間の脚で馬に指示をだします。そのため、脚にフィットし、自由度が高く、繊細な動きができることがズボンに求められます。
また、快適に乗るためにも滑り止めの素材や場所もポイントになります。具体的には、お尻と鞍のグリップを高めることができる尻革タイプ、膝の内側のグリップを高める膝革タイプなどがあります。
尻革タイプはお尻から膝の内側にかけて革でできているズボンで、グリップ力が高く、お尻も滑らず良い姿勢が保ちやすくなります。特に初心者にはおすすめです。
膝革タイプは膝の内側が革になっているズボンで尻革タイプほどグリップ力はありませんが、障害飛越のジャンプをする人には好まれるものになります。
また、これらの革の厚みやごわつきが気になるかたは、グリップ力はありませんが革の部分がない共布タイプのズボンがあります。
このように乗馬用ズボンも鳶職人の作業ズボンと同じように、安全で動きやすいことが重要視されます。
キュロットは日本でのみ通用します
ブリーチやジョッパーズなど乗馬用ズボンをキュロットと表現することがありますが、この言葉は日本だけでしか通じないということをご存知でしょうか。
国際競技の服装についても「キュロット」と表現されていおり、当たり前のように使っていても海外では通じません。
そのため、海外のショップで買い物をするときに「キュロットを買いたい」と伝えても残念ながら伝わりませんので注意が必要です。
まとめ
何気なく履いている乗馬用のズボン。表現の仕方は複数あり、混乱することもあるかと思います。しかもそれらは、それぞれ違った歴史、デザイン、機能性があります。
しかし、共通していることもあります。それは、安全に、快適に乗馬を楽しむための工夫がされているということです。
次回、自分に合った乗馬ズボンを新調するのが楽しみですね。