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蹄(ひづめ)の形の違いと役割。そして保護する方法は?

動物の手足はそれぞれ違いがあります。猫など丸くてフワフワしてかわいい足、人間のように5本の指に分かれ器用に作業できる手足、カワウソのように水かきがある足など、その形は様々です。

その中でも個性的な足を持つのが馬です。馬の足は前足と後ろ足で形が違い、その形状も特殊と言えます。では馬はなぜあのような形を持つのでしょうか。馬のひづめの形・役割・馬に必要な蹄鉄について解説していきます。

蹄の形の秘密ご存じですか?

蹄(ひづめ)の形の違いと役割。そして保護する方法は?

馬の蹄の形と言われると思い浮かぶのは、どのような形ですか?足跡を見ても分かるように、
スラっと伸びる脚に丸く硬い蹄を持ちます。

前足後足共に丸い足跡なので、同じ形をしていると思われますが、実はよく見ると前足と後ろ足で形が違います。ここでは蹄の形について紹介します。

蹄の形は?

先ほど少し触れましたが、蹄の形は前足と後足で形が違います。馬の蹄は人間のように全く計上が違うというわけではなく、前足も後足も裏面を見れば同じ丸です。しかしよく見ると、前足は丸く横幅がありますが後足は縦長になっています。

これは馬の歩いたり走るときの前足と後足の役割の違いによるものです。前足は方向転換する役割があり、後足は前進するさせる役割があります。それぞれの力を発揮しやすくするために蹄の形が違うのです。形の違いについては、さらに詳しく下の項目で紹介しますので、参考にしてください。

なぜ今の蹄の形になったのか

馬の先祖は「エオヒップ」という動物だと言われています。その見た目は文献によっても違いがあるようですが、ウサギ・キツネ・犬のような見た目をしていたと言われています。

前足に4本の爪、後足には3本の爪を持っており、その見た目から馬との繋がりがあるとは思われていませんでした。しかし研究を重ねる中で骨格は馬に近い作りになっていることがわかり、馬の先祖であることが判明しました。

ではなぜ前足の4本後足3本の爪が今の蹄の形に変わったのか、それは進化の過程で体が大きくなり重さが増加したことと、葉食性から草食へと変わったことが関わっていると言えるでしょう。体の大きさや体重の増加により、中央の指へ体重をかけバランスを取るようになったことから、中央の指が発達していったことが考えられます。

また草食動物に進化したことで、肉食動物から狙われる確率は上がりました。ということは少しでも早く走り逃げる必要があるのです。早く走るためには接地面が少なく力強く地面を蹴ることができる丈夫さが求められます。早く走るために求められる条件へ少しずつ進化した結果、今の蹄になったと言えるでしょう。

なぜ形の違いがあるのでしょうか?

蹄(ひづめ)の形の違いと役割。そして保護する方法は?

蹄の形で少し触れましたが、蹄の形は前足と後足は形に違いがあり、前足は方向転換しやすいように、後足は前進する力を発揮しやすいように、それぞれ形が進化しています。ではなぜ前足は横幅が広い方が方向転換しやすいのか、なぜ後足は同じ横幅の広い形ではなく縦長でなければいけなかったのかを解説していきます。

大きな体を右や左に方向転換するときには、重心移動をする必要があります。その際により安定させ曲がるためには、後足のような縦長では安定させ体を支えることは難しいのです。そのため幅を広くし、左右に重心が傾いても支えられるようにしているのです。

逆に後足は、前進するために力を入れるため、左右への安定は求められません。前後へしっかりと力が伝わることができるように、縦長な形をしています

大切な蹄を守る蹄鉄

蹄(ひづめ)の形の違いと役割。そして保護する方法は?

蹄鉄の形をみて、馬を連想する人は多いでしょう。それぐらい馬にとって蹄鉄は必要不可欠なものなのです。では蹄鉄とはどのような物で、馬にとってなぜ必要なのかを紹介します。

蹄鉄は蹄になぜ必要

蹄鉄は馬の蹄に取り付ける金具の事を指し、乗馬クラブや競馬・牧場と言った、人に飼われた馬には必要不可欠な物になります。蹄鉄は馬の蹄を守る役割があります。

飼われている馬は、人を乗せ走ったり荷物を運んだり、足に何かと負荷がかかりやすく蹄はすり減っていきます。それを軽減することができるのが蹄鉄なのです。

蹄は弱い?

馬の蹄は「第二の心臓」と呼ばれるくらい馬にとって重要な部位です。大きい体に血液を循環させるためには心臓だけでは難しく、馬が足を動かすことで蹄が拡大・収縮し血液循環の手助けをしています。そのため馬は脚の病気にかかったり足をケガすると命の危険に繋がるのです。

蹄は定期的に検診したり手入れをする必要があります。怠ればケガや病気にかかる可能性は高くなります。ケガにより重心の偏りなどにより蹄の内部に炎症を起こす「蹄葉炎」、冬場の乾燥が原因で起こる「裂蹄」、蹄の手入れ不足による「蟻洞」や「蹄叉腐乱」など、気を付けなくてはならない病気やけがは多くあります。

人間も同じですが、ケガや病気は早期発見・早期治療が重要になります。その為にも日ごろの手入れや検診をしっかり行うことが大切です。

蹄鉄の管理も重要です

蹄(ひづめ)の形の違いと役割。そして保護する方法は?

蹄鉄は専用の釘を、馬の蹄の神経の通らない場所にしっかりと打ち込み固定します。ちょっとのことでズレるということはありませんが、競馬では全力疾走し乗馬でも人を乗せ走ったり障害物を飛ぶ為、蹄鉄への負荷は避けられません。

神経の通らない位置に固定しているとはいえ、何かの拍子でズレてしまうこともあります。また蹄は人間の爪と同じで伸びます。固定した位置からズレたり合わなくなることも考えられるのです。

馬の蹄は「第二の心臓」と言いましたが、蹄鉄のズレによってケガを負えば命に関わる病気になる可能性もあるため、定期的な調節や交換も必要になります。馬の健康保持の中に蹄鉄の管理も含まれると言えるでしょう。

蹄鉄は乗馬や競技用の馬で1ヶ月から1ヶ月半、競走馬で2週間で交換されます。動きの激しい競走馬の方が頻繁に交換されることが分かるかと思います。時速70㎞にも及ぶ走りをする競走馬はそれだけ足への負荷がかかりやすく、蹄鉄の消耗も早いということです。

また蹄鉄の管理をしっかりしていなければ落鉄の恐れもあり、レース中に落鉄をすれば馬だけでなく騎乗者・周りを走る馬も大きなケガをする可能性が出てきます。装蹄師による蹄鉄の管理は重要なのです。

まとめ

いかがでしたか?馬の蹄は裏掘りなどをしたことがある人は見る機会があるかもしれませんが、前足と後足を見比べる機会はなかなかありません。前足と後足の形に違いがあるのは、馬がより走りやすく、早く走れるようになるための進化の結果なのです。

馬から外れた蹄鉄を見て幅広な「U」と縦長な「U」といったように形が違うのを見て、「馬によってサイズが違うんだな」と思っていたあなた、馬のサイズの違いもありますが、前足と後足の違いだったかもしれません。

ここで紹介した内容を頭に、改めて蹄鉄や馬の蹄を観察してみると、新たな発見ができるでしょう。楽しんでみてください。

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