偶蹄類と奇蹄類の違いと見分け方

ウシやブタなど、馬と同じように蹄を持つ動物はたくさんいます。蹄の数によって「偶蹄類」「奇蹄類」と分類されることもありますが、この2つのグループでは体の構造にどのような違いがあるのでしょうか?今回は、こうした蹄を持つ動物に焦点を当てて「偶蹄類」と「奇蹄類」について解説していきます!

偶蹄類と奇蹄類の違いと言葉の意味

蹄を持つ動物は、大きく分けて偶蹄類(ぐうているい)奇蹄類(きているい)に分かれます。この2つの分類群の違いは、その名前からも分かるように蹄の数です。偶蹄類は偶数の蹄を持ち、奇蹄類には奇数の蹄があります。では、それぞれどのような動物が含まれるのか具体的に見てみましょう。

偶蹄類の例

まず、偶蹄類の中には鯨反芻亜目、イノシシ亜目、ラクダ亜目という3つのグループがあります。鯨反芻亜目という名前からも分かるように、最近になってクジラが偶蹄類の仲間に分類されるようになったそうですよ。

そのほか、反芻亜目の代表的な動物としてはウシ、シカ、キリン、カバなどが挙げられます。また、イノシシ亜目といえば日本人にとってなじみ深いイノシシブタ。ラクダ亜目には、乾燥した地域に住むラクダ、リャマなどが含まれます。

奇蹄類の例

奇蹄類は偶蹄類に比べて極端に種類が少なく、ウマ科・サイ科・バク科の3つに分かれます。乗馬でおなじみの馬だけでなくロバシマウマなどもウマ科の仲間ですね。昔は偶蹄類と同じくたくさんの種類が存在したと言われていますが、現在では蹄を持つ動物のなかで奇蹄類は1~2割ほどしかいません。

馬はどっち?

先ほども紹介したとおり、ウマは奇蹄類に分類されます。馬の蹄は1本の脚に対して1つ。人間で言うとくるぶしから先が硬い蹄になっていると思われることがありますが、実は中指の爪だけで蹄を形成しているような状態。

もちろん、指先だけで体重を支えるために蹄は人間の爪よりもかなり厚く丈夫です。また、足の裏の大部分は蹄底(ていてい)と呼ばれ、人間でいえば指先にあたりますが蹄と同じように硬い角質でできています。唯一、蹄底の中央にある三角形の蹄叉(ていさ)は触ってみると少し柔らかいことが分かるでしょう。

偶蹄類と奇蹄類の見分け方のポイント

偶蹄類と奇蹄類にどんな動物が含まれるかイメージできたところで、次は身体のパーツごとに特徴を比べてみましょう。

蹄の数

ブタやウシなどの身近な偶蹄目を思い浮かべると、蹄の数は2つですよね。ただし、ブタやイノシシを見ると2つの蹄の後ろには、さらに2本の指があります。こうして見ると、もともとは5本指だったものが徐々に変化して2本の蹄になったことが分かりますね。

ちなみに、同じく2つの蹄を持つ動物でも、不安定な岩場で生活するヤギは蹄の間が広く開いているなど、生息する環境によって少しずつ脚の形には違いがあります。

一方、奇蹄類と言えば馬のように蹄は1つというイメージが強いでしょう。ですが、サイのように第3指を支える2・4指が残ったことで3つの蹄を持つ偶蹄類もいます。また、バクは前脚に4つ、後脚に3つの蹄があり判断が難しいですが奇蹄類となっています。

歯の生え方

次に、歯の生え方を見てみましょう。まず、偶蹄類と奇蹄類の歯を比べる前に“歯の種類”についてお話しします。食べものを口に入れるために切り離すのが切歯(前歯)、食べ物を細かくすりつぶすのが臼歯(奥歯)なので、おおよそ人間と同じですね。

偶蹄類と奇蹄類の違いとして「偶蹄類は上顎に切歯がない」と言われることがありますが、これは偶蹄類全体というよりも反芻亜目であるウシやヒツジ、ヤギ特有の特徴です。奇蹄類である馬やバクには立派な切歯があるのに対して、ウシやヒツジなどの上顎には切歯がありません。その代わりに、上顎には歯茎が硬く変化した歯床板(ししょうばん)と呼ばれる突起があります。

そして、この反芻亜目と奇蹄類の大きな差は反芻(はんすう)をできるかどうかという点です。ウシやヒツジなどは複数の胃袋を持っていて、胃に入れたものを口に戻して何度も咀嚼することで栄養の吸収効率を上げています。

対して、馬などの奇蹄類は反芻できません。つまり、同じ量の草を食べた場合に反芻亜目の動物のほうがたくさんの栄養を吸収できるということですね。

耳の違い

耳に関しても絶対に「こうならば偶蹄類/奇蹄類」と判断できるとは言いにくいですが、偶蹄類は耳が横向き(地面と平行)、奇蹄類は耳が縦向き(地面に垂直)の傾向があります。

理由として考えられるのは、耳の向き自体というよりは耳の付いている位置。偶蹄類は目と同じくらいの高さで顔の横面に耳があるのに対して、奇蹄類はより頭頂部近くに耳があります。なぜ位置が違うのかは分かりませんが、ヤギやウシと馬を比べてみると分かりやすいですね。

奇蹄類 進化の過程

馬の祖先

では、なぜこうした違いが出てくるのでしょうか?それには、馬の先祖にあたる奇蹄類の進化が深く関わっています。

奇蹄類が誕生したのは、およそ6000万年前の“暁新世”という時代とされています。さらに、5200万年ほど前になると馬の祖先とされるヒラコテリウムという動物も誕生しました。ヒラコテリウムはキツネくらいの大きさで、脚には5本の指がある動物です。

環境が寒冷化

この形から、体高が高くなり蹄が1つになったのには、ある環境の変化が関わっています。今から3000万年ほど前の“漸新世”という時代に、地球は以前よりも寒冷で乾燥した気候へと変わっていったのです。

それに伴いジャングルのような深い森は減り、草原のような場所が増えたと考えられます。すると、今まで森の中で木々や草に身を隠すことで身を守ってきた奇蹄類たちは隠れ場所を失いました。

草原で生きることになった馬の祖先たちは、身体を小さくして隠れることより大きくなって遠くの敵をいち早く見つけるという形で進化を遂げます。また、発見した敵から逃げるスピードを手に入れるために、脚は長く指の数は少なくなったのです。

絶滅と繁栄は人間のせい?

生き延びるための進化を続けた馬ですが、1つ目の見出しでも紹介した通り現在は奇蹄類より偶蹄類のほうがかなり多くなっています。この理由には諸説ありますが、ウシの仲間は反芻(はんすう)ができるため、その優れた消化能力が生存競争での勝因ではないかとも言われています。

さらに、人類が二足歩行を始めたのは約440万年前とされていますが、人類は二足歩行することで手が使えるようになり狩猟の能力が格段に上がりました。ちょうどその頃の地層を境に馬の祖先の化石が全く出土しなくなるため、乱獲など人為的な理由によって絶滅寸前にまで追い込まれたのではと考える研究者もいるそうです。

しかし、6000年ほど前の地層からは再び馬の骨などが出土。この頃には馬が飼育下にあったことも分かっており、野生での数は減ったものの人間の使役動物として数を増やしていきます。イヌと同じく、狩猟の対象から人間のパートナーへと変化した動物というわけですね。

まとめ

馬を見るとスラリとして走るのが速く「美しい」と感じる人も多いはず。ですが、こうして見ると“この姿”も馬が生き延びるために必要な進化だったんですね。馬を含む奇蹄類とウシやブタに代表される偶蹄類では、似ている部分も多いですが消化機能、蹄の数などいろいろな面で違いがあります。たまには他の動物とも比べながら、馬の身体の構造や機能について知ってみましょう。

 

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