障害物の飛び方やポイント
障害は、乗馬愛好者なら、一度は憧れる競技ではないでしょうか。オリンピックでも実施されている競技ですが、細かいルールまでご存じの方はまだまだ少ないかもしれません。この記事では、障害馬術競技について基本的なルールから飛越する際のポイントまで紹介します。
障害馬術競技とは
障害馬術競技は決められたルート(経路)上に設置された12〜15の障害物を落とさずに、どれくらい早くゴールできるかを競う競技です。
ルールには障害物の落下回数を減点とする標準競技や落下をタイムに換算して加算するスピード&ハンディネス競技のほかに、ダービー競技、六段障害飛越競技、トップスコア競技など乗り手の戦略を求められる様々なものがあります。
標準競技のルール
ここでは、標準競技のルールを簡単に説明します。
標準競技では、落下を減点することから、いかに落下を少なく経路を回ってこれるかが重要です。以下の場合は減点や失格(失権)となります。
減点
障害物の落下(4点)
反抗1回目(4点):障害物前での拒止や横への逃避など
規定タイムの超過:規定タイム超過1秒ごとに1点減点
失権
反抗2回目
反抗の継続が45秒以上
制限タイムの超過:標準競技では規定タイムの2倍が制限タイム
落馬・人馬転倒
経路違反
※上位ペアの減点数が一緒だった場合はタイムが早いペアを優勝とするか、ジャンプオフと呼ばれる優勝決定戦が行われます。
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競技としての歴史
障害馬場馬術競技は狩猟で馬に乗っていた人たちによる技術の競い合いがルーツです。1900年のパリオリンピックで初めて競技として行われました。1912年のストックホルムオリンピックからは現在のオリンピックと同じように障害馬術、馬場馬術、総合馬術の3競技に分けられて、実施されています。
1932年のロサンゼルスオリンピックではバロン・ニシこと、西中尉と愛馬ウラヌスが金メダルを獲得する大活躍したのが有名です。
競技として正式に認められてから120年ほどですから、意外にもまだまだ新しいスポーツですね。
障害物の高さってどれくらい?
馬たちはどれくらいの高さまで飛越できるのでしょうか。日本馬術連盟の規定では、一番低いグレード中障害Dでも最大の高さが110cmです。グレードが1つ上がるごとに最大の高さが10cmずつ上がっていき、一番高いグレード大障害Aでは160cmにも達します。
ギネスワールドレコーズ社の公式サイトによれば、世界一の障害飛越の記録は1949年にチリのHuaso号が達成した2.74メートルだそうです。
馬は普段、目にしないものを怖がる性質があります。そのため、怖がりの馬は地面に置いてある棒ですら、逃避します。障害に向かっていく人馬は素晴らしい信頼感で結ばれているのです。
障害物の種類
障害と言って思い浮かべるのは「垂直障害」ではないでしょうか。バーが1本のシンプルな障害物です。「オクサー障害」はバーが2つ並んでいる幅のある障害です。
この2種類を連続で飛越させるように設置したものが「コンビ―ネーション障害」。1番手前の障害をスムーズにこなすことや障害と障害の間の助走を何完歩にするか、乗り手の戦略と技能が試されます。
水濠(すいごう)障害は小さなプールのような水たまりを超えていく障害で、水に馬の肢がついてしまうと減点になります。
障害物の高さや種類、順番や経路はコースデザイナーがデザインします。その大会のレベルや出場する人馬のレベルなど、様々な要素を考慮してデザインするそうです。
飛ぶときの馬の動き
馬が高くジャンプするためには、助走が必要です。障害が高ければ高いほど、長い助走が必要になります。障害の高さや種類に応じて、十分な助走が取れるように、馬を上手くコントロールしましょう。
障害飛越をする場合は、馬は前肢をあげたあとに後肢にパワーを溜めて、両後肢を蹴り上げたら体を伸ばしながら持ち上げていきます。そのため、体が宙に浮くタイミングや感覚は、駈歩する際のものと全く違います。
この動きに合わせて乗り手が馬の動きをサポートする必要があります。
飛ぶときの人間の動き
障害を飛ぶときは、ツーポイントで騎乗します。ツーポイントは競馬の騎手のようにお尻を鞍につけない乗り方です。ツーポイントにすると馬への負担を減らすことがでるため、前進気勢(馬が前に行こうとする力)が強まります。
はっきりとした3拍子の駈歩を出して、ペースを一定に保てるようにします。ペースを維持しながら、障害に向かってまっすぐアプローチしていきます。軽く随伴をしながら、馬を促し障害を飛んで欲しいという意思を伝えます。
踏み切るタイミングで前傾姿勢をとり腰を浮かせて、馬の飛越の邪魔をしないようにします。踏切の際に下を見るとバランスが崩れやすくなります。必ず前を向くようにしましょう。
助走や飛越の際に重要なのは、乗り手が馬上で鐙を安定した状態で踏んで、バランスを上手に取ること。乗り手が馬上でグラグラしていたら、馬は駈歩のペースを一定に保つことはできません。ペースが一定に保たれないと馬の踏切位置が遠すぎたり、近すぎたりして上手くいきません。
また、飛越時も鐙をしっかりと踏んで、馬上では膝の裏を伸ばすようにして動きについていきます。この時に手綱を引かないように、こぶしは馬の動きに合わせて譲ります。
着地の際は上体を下げて、各関節を柔らかく使うことによって、衝撃を吸収します。一連の動作の中でも、やはり鐙が安定している必要があります。
大切なのは馬の動きを邪魔しないこと。パートナーに気持ちよく飛越してもらえるように意識しましょう。そうすれば、一層、人馬の絆が深まるに違いありません。
まとめ
いかがでしたか。文字通り、人馬一体でないと上手く行かない障害馬術のルールやポイントについてご紹介しました。馬と一緒に障害を飛べたときの一体感は普通のレッスンでは得られません。是非、挑戦してみませんか。