ドレスを着て行う馬術競技「チャレアーダ」
メキシコの伝統的な馬術競技「チャレアーダ」。非常に華やかだと有名ですが、一体どのような競技なのでしょうか?今回の記事では、チャレアーダの歴史や競技内容について紹介します。
チャレアーダの歴史
伝統的な衣装を身にまとい、馬にまたがるチャレアーダのチャロ(騎手)たち。馬と共に生活してきたという歴史を感じさせる競技ですが、メキシコと馬、そしてチャレアーダにはどのような歴史があるのでしょうか?
メキシコと馬
世界には、モンゴルやトルコなど古代から騎馬民族とのかかわりが深い国もあります。これに対してメキシコと馬の歴史は少し浅く、中世の後半から始まったようです。きっかけは、スペインによる南米侵略でした。
現在のメキシコがある地域には当時アステカ帝国と呼ばれる国がありましたが、アステカ帝国の遺跡からは馬をかたどった壁画や像があまり見られないことから、騎馬文化は無かったと考えられています。
一方、そんなアステカ帝国にやってきたスペインには、この頃すでに騎馬文化がありました。アステカ帝国征服を目的としてやってきたスペインの一団も馬を連れており、この文化的接触がメキシコにおける馬の歴史の始まりのようです。
チャレアーダの始まり
おそらく「カウボーイといえばアメリカ」というイメージがあるかもしれません。しかし、南米でも同じく牛の群れを管理するために、馬に乗って牛を追いこんだり縄をかけて捕まえたりという作業が行われていました。
こうした牛の世話を行うバケーロ(牧童)たちが、自分の技術や度胸を競うために始めた娯楽がチャレアーダの起源とされています。こうした歴史や競技内容から、チャレアーダは「メキシコのロデオ」と呼ばれることも。
チャロ(騎手)たちは、ソンブレロと呼ばれる帽子をかぶり伝統的な刺繍が施された衣装を着ています。そのなかでも、SNSでたびたび注目されるのが「エスカラムザ」という種目。ドレスをまとった女性騎手たちが勇ましくも華麗に集団演技を披露する姿に注目が集まります!
チャレアーダに適した馬の品種
障害馬術や馬場馬術ではアングロアラブやセルフランセといった品種をよく見かけますが、競馬ではサラブレッドが中心となって活躍していますね。このように適した競技は馬によって異なりますが、チャレアーダに適した馬はいるのでしょうか?
アメリカンクオーターホース
クオーターホースはアメリカ開拓期に成立した品種。クオーターマイル(約400m)レースに多用されることから「クオーターホース」と名付けられました。それもそのはず、クオーターホースのトップスピードは時速80km台!短距離ならばサラブレッドに勝るスピードです。
しかも、スピードがあるだけでなく温和で、急停止・急発進・急旋回など敏捷性が高く小回りも利きます。そのためウエスタンをはじめとした多様な競技で好成績を収めることができる「器用な馬」と言っても良いかもしれません。
日本では、サラブレッドの放馬に備えてクオーターホースを誘導馬として採用している競馬場もあるということからも有能さが分かりますね。大きさはサラブレッドと同じくらいですが、筋肉質なのでガッチリ&ムチッとした印象がある品種です。
アステカ・ホース
アメリカンクオーターホースのほか、アンダルシアンやアラビアンホースを交配して生まれたのがメキシコ原産の品種「アステカホース」。クオーターホースと同じく機動力に優れた品種です。
個体差はあるものの、アメリカンクオーターホースやアンダルシアンの特徴を受け継ぎ、首や浅胸筋がガッチリしています。日本での飼育頭数は少ないので、もし競技会などで見ることができたらとってもラッキーですよ!
チャレアーダの競技内容と採点基準
チャレアーダには男性競技9種目と女性競技1種目、合計10つの種目があります。
Cala de Caballo
走らせた馬を急停止させる種目。馬とコンタクトを取る技術が顕著に表れることから、停止にかかった距離や時間、馬の反応など採点は非常に細かく行われるそうです。
Piales en Lienzo
騎手が馬に乗って停止した状態で、数メートル先を全速力で横切る牝馬の後脚にロープをかけて停止させる種目。牝馬がスピードを落として停止するまでの時間などが審査対象となります。
Colas en el Lienzo
馬に乗って雄牛と並走し、60m以内で牛の尾を騎手の足に巻き付けたり牛を地面に倒す種目。馬をコントロールする技術や縄をかける技術などが審査対象となります。
Terna en el Ruedo
3人の騎手が1チームとなって、首や後ろ脚など雄牛の決められた部位をロープでとらえる種目。馬をコントロールする技術や縄をかける技術などが審査対象となります。
Jineto de Toro
Jineteo de Yegua
決められたタイミングまで、暴れる馬や牛にロープ1つで騎乗し続ける種目。「ジネテオ・デ・トロ」は牛、「ジネテオ・デ・イェグア」は馬に乗ります。いずれも牛馬の暴れ具合と騎手のバランス、騎乗していられた時間などが審査対象です。
Manganas a Pie
Manganas a Caballo
ロープを投げて、走っている馬の前脚にロープをかける種目。「マンガナス・ア・パイ」では騎手は馬に乗らずフィールド上に立って競技を行い、「マンガナス・ア・カバロ」では、騎手が馬に乗った状態で競技を行います。ロープをかける技術やタイムが審査対象で、3回のチャレンジの累積点数を競うシステムです。
El Paso de la Muerte
騎乗している馬から、並走している裸馬へと乗り移る種目。3頭の馬がすぐ後ろから追い立てるように疾走しているため、落馬すれば後続の馬に踏まれることもありうる危険な競技です。その危険性から「死への一歩(死への道)」という種目名が付きましたが、裸馬が停止するまで騎乗を続けられるかなど審査基準は“安定性”を重視しています。
Escaramuza
女性のみが出場できる種目。8人で約15分の集団演技を行う種目。構成や馬のコントロールなどが審査基準となる、シンクロのような競技とも言えますね。エスカラムザでは、華やかな衣装や美しい集団演技だけでなく、サイドサドル(女性用の、脚を開かずに両脚を鞍の左側に流すように乗るための鞍)を使用する点にも注目です!
まとめ
メキシコの伝統的な馬術競技・チャレアーダ。日本では見る機会がほとんどありませんが、種目名などで検索して動画で楽しむのも良いかもしれません。きっと、華やかでスリル満点のチャレアーダに引き込まれるはずですよ。