【見たことある?】馬が登場する有名な伝統行事・その1
日本各地では、四季折々に伝統的なお祭りや行事が開催されていますね。今回はそんな中から、馬が登場する伝統行事をいくつか紹介します。みなさんの県にも、馬が活躍する行事があるかもしれませんよ!
綾競馬(宮崎県綾町)
最初に紹介するのは、宮崎県東諸県郡の綾町で開催される「綾競馬(あやけいば)」。大人も子供も大盛り上がりということで、一体どんな行事なのか気になりますね。
今も昔も秋の楽しみ
みなさんがテレビなどで見かける競馬と言えば、JRA(日本中央競馬会)が主催する中央競馬、もしくは地方自治体が主催する地方競馬ではないでしょうか?
しかし、こうした公営競技としての競馬とは別に、日本では昔から「地域の娯楽」として草競馬が行われてきました。特に、農閑期を迎える秋の刈り入れ後は互いに繁忙期の労をねぎらい楽しく過ごすチャンス。
こうした理由から、宮崎県の綾町でも11月に草競馬を催すようになりました。時代の流れで一度は中断した時期もありましたが、町政施行50周年となる昭和57年に地域おこしのイベントとして復活。現在も、多くの人が草競馬で盛り上がります。
公営では味わえない臨場感
そうは言っても「やっぱりGⅠとかに出ている馬のほうが速いでしょ?」という方もいるかもしれませんね。もちろん、タイムで言ったらその通りだと思います。
とはいえ、草競馬の醍醐味は速さよりも「近さ」。公営競馬場ではなかなか味わえない、柵のすぐ向こうで馬が疾走するという迫力を味わえます!
綾町はかつて優れた馬の産地だったそうなので、昔の人たちは地域で育った名駒たちの勝負を間近で楽しんだかもしれませんね。
・場所:綾町大字北俣2687(綾馬事公苑)
高ボッチ高原観光草競馬大会(長野県塩尻市)
続いても、迫力満点の草競馬。地域は変わって、長野県塩尻市にある「高ボッチ高原」で開催される観光草競馬大会を紹介します!
日本一“高い”競馬!?
高ボッチ高原観光草競馬大会の特徴は、なんといっても日本一高い競馬だということ。何が高いのかというと「日本一標高が高い場所で開催される競馬」なのだそうです。入場料や馬券の金額ではないので、安心してくださいね。
高ボッチ高原の標高は約1,600m。高ボッチ山の頂上は、日本アルプスを見渡せる360°の大パノラマや雲海が見える絶景スポットとしてカメラマンにも大人気。高原なら真夏でも涼しいので、馬たちも過ごしやすいのではないでしょうか。
ポニー好きなら要チェック
競馬と言えばサラブレッドと思われがちですが、日本には全国ポニー競馬選手権大会(ジョッキーベイビーズ)というポニー競馬の大会があります。
実は、高ボッチ高原観光草競馬大会はジョッキーベイビーズの北信越地区代表決定戦となるレースも含まれているので「サラブレッドだけでなくポニーが頑張る姿も見てみたい!」という方は是非観戦してみてくださいね。
・場所:長野県塩尻市大字片丘 高ボッチ公園
相馬野馬追(福島県南相馬市)
次に紹介するのは、800年以上の歴史を持つ福島県南相馬市の伝統行事・相馬野馬追(そうま-のまおい)です。震災で一時は継続が危ぶまれた時期もありましたが、どのような由来の行事なのでしょうか?
妙見様の祭礼
相馬野馬追は、相馬中村神社・相馬太田神社・相馬小高神社という3つの神社の例祭として行われています。もともと、これらの神社が祀っていたのは妙見菩薩(みょうけん-ぼさつ)と呼ばれる神様。
妙見菩薩は、その昔に相馬市周辺の地域を拝領した相馬氏が信仰していたとされています。いろいろな姿で描かれることがありますが、馬に乗った姿とされることも多く「馬の守護」にご利益があるそうです。
軍事演習が起源
野馬追自体は、鎌倉幕府が成立する以前から行われていた武士たちの軍事演習が起源。その軍事演習とは、野に放った野生馬を敵の騎馬に見立てるという実践的なものでした。
しかし、鎌倉時代以降は各地の武士が力をつけ幕府に離反することを防ぐためにも軍事演習は禁止されるようになります。そんな中でも野馬追は、神社に奉納される「神事」という名目のもと一部の地域で続けられました。
震災での被害
2011年の東日本大震災以降は、これまで相馬野馬追に参加してきた地域の人や馬が地震や津波の被害を受けたこと、参加地域が原発事故の避難区域となったことなどから存続自体が危ぶまれました。
現在も住民の中には県外に避難している方も多く、震災から10年以上が経過してやっと「震災後初めて地元での騎馬行列を実現できた」という地域も。
避難先で訓練を続けたり、関東圏から馬を借りるなど、県をまたいだ努力によって少しずつ野馬追も元の姿に戻りつつあります。
騎馬武者が500騎以上も集まり、行列をするだけでなく神旗の争奪戦まで行うという行事は国内を探してもなかなか見つかるものではありません。戦国時代にタイムスリップしたかのような迫力満点の神事は、ぜひ生で見ていただきたいです!
・場所:福島県相馬市
チャグチャグ馬コ行進行事(岩手県滝沢市・盛岡市)
最後に紹介するのは、岩手県の滝沢市~盛岡市で行われる「チャグチャグ馬コ」の行進行事です。ちょっと不思議な名前ですが、どのような行事なのでしょうか?
絢爛な小荷駄装束に注目!
チャグチャグ馬コの「チャグチャグ」とは、馬が着けた装束の鈴が鳴る音を表しているといわれています。この色とりどりの布やクッションのような飾りが特徴的な馬装は小荷駄装束(こにだ-しょうぞく)。
この装いはもともと、大名の参勤交代に付き従い荷物を運んだ馬たちの装束でした。甲冑のような鼻隠しや首鎧は見た目にも美しいですが、移動中に荷物を狙われた場合に馬を守る役割もあったようです。
「蒼前さま」に馬の健康祈願
滝沢市から盛岡市までの行進が注目されがちなチャグチャグ馬コですが、この行進が始まったのは昭和になってからなのだとか。
もとは、鬼越蒼前神社の縁日である端午の節句(5月5日)に村の人々も田植えを休んで農耕馬たちの労をねぎらい、また馬たちの健康を祈願するために滝沢市にある鬼越蒼前神社(おにこし-そうぜん-じんじゃ)へお参りしたといいます。
蒼前さまは馬の守り神とされ、田植えの繁忙期である5月を避ける形で行事が6月に変わってからも、チャグチャグ馬コの行進行事では鬼越蒼前神社に馬たちが集まって神社にお参りをしてから盛岡に向けて出発します。
出発前に神社に行くと、小荷駄装束の馬装をしている様子や、お母さん馬に付いて行列に参加する仔馬たちがリラックスしている様子なども見ることができるはずですよ!
・場所:岩手県滝沢市 鬼越蒼前神社~盛岡市 盛岡八幡宮
まとめ
車などが無かった時代は、馬は人間の生活になくてはならないパートナーでした。そのため日本の伝統行事では馬が頻繁に登場します。そこから昔の人の楽しみや生活文化を垣間見ることもできるかもしれませんね。