【知れば知るほど奥深い!】馬術競技の世界
日本では身近に見ることが少ない馬術競技ですが、実はほとんど毎週のように各地で競技会が開催されています。
馬術は主にブリティッシュスタイルとウエスタンスタイルの2つに分類されますが、今回はそれぞれの特徴や競技などについてご説明します。
馬術のメジャーな2つのスタイルとは?
「乗馬」と「馬術」の違い
「馬術」のスタイルについてご説明する前に、そもそも「乗馬」と「馬術」はどう違うのかについて整理してみましょう。
乗馬(horseback riding):馬に乗ること全般。馬術を含む。
馬術(equestrian):馬に乗って自分が意図するように動かす技術。
端的に言うとこうなりますが、「乗馬」と「馬術」の違いについては様々な考え方がありますので、そのうちの一つと捉えていただければと思います。
様々な馬術スタイル
「馬に乗って自分が意図するように動かす技術」は、ユーラシア大陸の騎馬民族が戦いに勝つための重要な手段として発展させ、そこから世界中に拡がっていったため、世界の各地域で独自のスタイルが定着しました。日本でも武芸の一つとして和式馬術が発展し、今でも流鏑馬などの伝統が継承されています。
その中でもメジャーな2つのスタイルは「ブリティッシュスタイル」と「ウエスタンスタイル」で、競技の種類、馬具や人の装備など、たくさんの違いがあります。
ブリティッシュスタイルは貴族由来の優雅な馬術
ブリティッシュスタイルはイギリスの貴族のたしなみから発展したもので、馬の動きの正確さや美しさを重視します。
代表的な競技
馬場馬術(ドレッサージュ):定型の馬場の中で、馬を正確に美しく運動させることを競うものです。スキップのように駈歩の手前を換える踏歩変換、その場で速歩をするピアッフェ、駈歩しながら後肢を軸に回るピルエットなど、馬が踊っているように見える動きが多く優雅です。
障害馬術(ジャンピング):障害物が設置された馬場内のコースを、障害物を飛び越えて通過する技術を競います。
総合馬術(イベンティング):同一人馬が初日に馬場馬術、2日目にクロスカントリー、3日目に障害馬術を行い、3日間の合計減点の少なさを競います。
馬具
鞍はシンプルで馬にフィットする形のため、人が脚で馬に指示を出しやすくなっています。馬場馬術用の鞍はより脚を下に伸ばしやすく、障害馬術用の鞍は膝当てで膝をホールドしやすくなっているなど、各競技により形が異なります。
人の装備
公式な試合では、馬場馬術は燕尾服またはジャケット・ハットまたはヘルメット・タイ・乗馬ズボン・長靴・拍車、障害馬術ではジャケット・ヘルメット・乗馬ズボン・長靴を身に付けることが決められています。軍隊に所属する選手は軍服を着用することもあります。
馬の体勢
競技や運動の段階にもよりますが、チェスの駒のように馬の頸が起きて顎を引いた状態(屈頭)が良い状態です。
ウエスタンスタイルはカウボーイの生活に密着した馬術
北米のカウボーイが長距離移動や牛追い作業などを行う生活から発展した馬術です。人馬ともに疲れない自然な姿勢や、機敏な動作が要求されます。
代表的な競技
ウエスタンホースマンシップ:騎乗者の姿勢、馬への指示など基本的な技術を審査する競技。一人馬ずつ行う「パターン」と複数人馬で同時に行う「レイルワーク」があります。
レイニング:規定のコースに従って走行し、馬がいかに人の指示に従っているかを審査する競技。後肢を軸にして高速回転するスピン、後肢を滑らせながら急停止するスライディングストップ、後肢を軸に180度方向転換するロールバックなど、激しく逃げる牛を追い込む時に必要な動きを競技にしたものです。
トレイル:外乗で遭遇する門、橋や倒木などの障害物を模したコースを馬がうまく通過できるか審査する競技。スピード競技ではなく、障害物に馬が肢などを当てると減点されます。
馬具
鞍は頑丈で、長時間乗っても疲れず、作業で使うロープや荷物を括り付けられるようになっています。
ハミは僅かな力でもテコの原理で馬にしっかり伝わるものを使うことが多いため、手綱はゆるくたるませた状態を保ち、手綱を馬の頸に当てて左右の指示を出します。
人の装備
カウボーイと言えば思い浮かぶ、カウボーイハット、ベルトの大きなバックル、ジーンズ、カウボーイブーツを身に付けます。
ベルトのバックルが大きいのは、鞍のホーン(前鞍にある大きな突起。ロープを固定する。)にお腹をぶつけた時にガードするため。ウエスタンの競技会ではトロフィーの代わりにバックルを授与されることもあります。
馬の体勢
馬の頸が地面と水平になっているのが良い状態です。
馬術競技を見たい時にはどうすればいい?
まずは気軽に動画を見てみよう
(公社)日本馬術連盟のWebサイトには、過去に開催された競技会の動画のアーカイブス(https://www.equitation-japan.com/jefmovie1.php?tno=3815&vdate=2023/06/15)があります。
ライブ配信されることもありますので、ぜひ覗いてみてくださいね。
競技会場で生の迫力に触れてみよう
日本国内ではほとんど毎週のように馬術競技会が開催されています。
お近くでの開催状況については、当サイト内「大会情報」(https://equia.jp/?s=&post_type=tournament_desc)で調べることができます。
「開催地を選択」欄でご希望の都道府県名を選択、競技種別でご希望の競技を選択し、検索ボタンを押すと下に「大会一覧・競技結果」が表示されます。見てみたい競技会の「大会名」をクリックすると、(公社)日本馬術連盟の「競技一覧」ページで開催会場や競技内容を確認することができますので、ぜひご活用ください。
なお、馬を驚かしてしまうと競技成績に影響が出たり、事故につながったりすることもありますので、会場では「大声や大きな音を出さない」「カメラやスマートフォンのフラッシュを使用しない」「馬場の囲いから身を乗り出さない」よう、ご注意ください。
まとめ
今回の記事では、馬術のメジャーな2つのスタイル、ブリティッシュスタイルとウエスタンスタイルの違いや競技についてご説明しました。2つのスタイルには違うところもたくさんありますが、共通しているのは馬を大切にする「ホースマンシップ」です。
まだ馬術競技を見たことがない方は、ぜひ会場で馬の足音や息遣いを聞きながら生の迫力に触れてみてくださいね。