実は深刻、馬の鼻血について
馬の鼻血を見たことがあるでしょうか?馬の鼻は大きく特徴的な形をしているので、鼻血を出しているとすぐに気が付くでしょう。
馬の体からして、人の鼻血よりはるかに大量の出血をすることもあり、見たことがある人は驚きが隠せなくなりますし、心配になります。では馬にとって鼻血はどのような物なのでしょう。また馬が鼻血を出す原因は何があるのでしょうか。
今回は馬の鼻血について解説していきます。
馬の鼻血、馬出血が深刻なのはなぜ?
鼻血と言われどのようなイメージを持ちますか?ケガや病気・ぶつけた時にも鼻血を出すことがありますが、暑さでのぼせた時にも出すことがあり、人によっては鼻血が出やすい人もいるので、あまり深刻に捉える人はいないかもしれません。
しかし馬にとって鼻血は深刻なことです。馬の鼻血は「鼻出血」と呼ばれ、人と同じように鼻から血が流れ出ます。乗馬クラブなどではあまり鼻出血をしている馬は見かけないかもしれませんが、競馬をご覧いただいている人は、レース中に鼻出血をしている馬を見たことがあるかもしれません。
レースの途中に他の馬と接触したわけでもないのに鼻出血を起こすので、何が起こったか不思議に感じたことのある人もいるのではないでしょうか。馬にとって鼻出血は単に暑さによってのぼせたからという理由ではないのです。そのため馬にとって鼻出血は体の異常を表す症状であると言えます。
また馬の体の造りから見ても、鼻出血を起こすことは命の危険があります。馬は鼻呼吸です。これは鼻呼吸の方がしやすいとかいうことではなく、馬は口呼吸ができないようになっているのです。
馬は鼻と口で道筋がしっかり区別されており、誤嚥を防げるつくりになっています。口呼吸ができない馬が鼻出血によって呼吸ができなくなってしまえば、命の危険があるということが分かるかと思います。
鼻出血が起こる原因
馬が鼻出血を起こす原因は大きく分けて3つあります。「外傷性」「カビによる真菌性」「肺出血」です。ではこの3つの原因がどのようなものなのか、詳しく解説していきます。
外傷性
外傷性の鼻出血とは、鼻をぶつけたり傷がついてしまったことで鼻から血が出るものです。これは人が鼻血を出すときと同じ理由であり、ケガを治療することですぐに止まるため、そこまで深刻に考える必要はありません。また再発する恐れもありません。
カビによる真菌性
カビによる真菌性は、カビが体内に入り込むことで起こる鼻出血です。馬が健康を維持するためには清潔な環境で栄養ある食事をし、適度に運動をすることが大切です。しかし乾ききっていない牧草や藁を寝床に使用してしまうことでカビを発生させてしまい、粘膜・毛細血管からカビ菌に感染し鼻出血に繋がってしまうのです。
肺出血
肺出血は競走馬に多く見られる内因性の出血です。競馬でレース中またはレース後に鼻出血を起こしながら走っている馬の原因のほとんどは、この鼻出血によるものと言えます。
レース中の馬は全力疾走で走るので、心臓や血管に大きな負荷がかかります。肺には数多くの血管があり血が集まりやすい部分があります。負荷がかかりすぎてしまった際に血圧が上がりすぎてしまい、血管が破れてしまうのです。馬の肺は鼻に繋がっているので、結果鼻出血が起こります。
予防対策は?
外傷性の鼻出血に関しては、どんなに気を付けてもぶつけてしまったり、鼻を傷つけてしまうことはあります。そのため予防対策は、ぶつけにくい環境を作るということになるでしょう。
カビによる真菌性に関しては、馬自身が気を付けようがありません。何よりもカビが発生しないよう衛生的な環境を整えてあげることが1番です。また餌の質の向上や保管方法を見直し、カビ発生を防ぐ取り組みも進められています。
一番予防が難しいのが肺出血です。肺出血の一番の予防は負荷のかかる激しい運動を控えることです。しかし競走馬は全力疾走するのが仕事であり、肺出血を予防するために走ることをやめさせるわけにはいきません。
そのため鼻出血を出してしまった馬に対し、1ヶ月間レース出場を停止命令をし休ませることができます。また鼻出血の回数によって、この停止期間が伸び、2回目なら2か月、3回目なら3か月以上休みます。国によっては更に厳しい決まりがあり、2回目の鼻出血を発症した時点で、永久にレースへの出場はできなくなります。
治療方法は?
鼻出血の治療法は確立された治療法がありません。一度発症してしまうと完治させるのは難しいという意見や漢方薬で治ったなど、様々な意見が調教師より出ています。
また餌やサプリメントを使用して、血圧の上昇を抑えるといったことをすることもあるようです。止血剤を含んだ治療薬もあるようですが、1番良いのはレースで走る際に力を入れ過ぎず、リラックスして走れるように工夫すればよいという意見も出ています。
このように馬にとって鼻出血は、治療の難しい三大疾患の一つなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
人間にとってはそこまで深刻に捉えることが少ない鼻血ですが、馬にとってはとても大変深刻に考えるべき病気になります。外傷性であれば治しようがありますが、内因性であるカビによる真因性や肺出血に関しては、1度かかってしまうと治すのに時間を要してしまいます。時には治らないということもあるのです。
どちらも馬自身では防ぎようがなく、馬に関わる人が気を付け予防してあげる必要があります。乗馬をする人にとって馬は大切なパートナーです。馬の健康と命を守るために何ができるかを考えていきましょう。