サラブレッドに限らずとっても気になる馬の病気やケガ

口で呼吸できないので病気は要注意

馬の呼吸は鼻呼吸だけだということをご存知でしょうか?同じ哺乳類なのに、人間と違い口呼吸ができません。
しかし、馬が特別なわけではありません。人間が特別なのです。哺乳類で口呼吸が出来るのは人間だけなのです。犬が「ハア、ハア」息をしているように見えても、呼吸ではなく実際は体温のコントロールをしているようです。人間に近いといわれているチンパージーでさえ口呼吸はしません。
口呼吸は、言葉を話す人間だけができる特別なことで、他の動物にとって口は食事をするための器官、鼻は呼吸するための器官と分けられています。
それを踏まえて想像してみてください。私たち人間は鼻詰まりのときは口呼吸に頼ります。しかし、口呼吸ができない馬はどうしたらいいでしょう。
人間と同じようにはいきません。病気になる前に予防、病気になってしまったら初期段階で治療ができるよう、普段からの観察は重要になります。

気になる病気とケガ

人間とは体のつくりが違う馬は、馬特有の病気やケガがあります。人間にはない病気やケガの場合、緊急性や重大性がわからず命にかかわるほど大きな問題に進行することもあります。ここからは馬の気になる病気とケガを紹介します。
馬の体調の変化を見逃さないようにしましょう

馬インフルエンザ(うまいんふるえんざ)

馬インフルエンザは馬インフルエンザウイルスの感染によっておこる呼吸器疾患です。症状は、発熱、食欲の低下、乾いた咳、鼻汁などです。感染の拡大は、咳などによる飛沫によるもものといわれています。馬インフルエンザは馬から馬への感染はありますが、馬から人への感染はありません。
また、鳥インフルエンザのように死に直結するような毒性はなく殺処分などの規定はありません。しかし、毎年のワクチン接種と感染馬が発生した場合は都道府県知事への届出が必要になります。
治療法は安静と対症療法が基本になります。

疝痛(せんつう)

疝痛とは、腹痛を伴う病気を総称したもので、食べ過ぎにより過食疝、冷雨・寒風による痙攣疝、便秘による便秘疝、寄生虫による寄生疝など種類はさまざまです。
もともと、馬の腸管は太い部分と細い部分があり内容物が溜まりやすく、また腸が長く固定されにくいため腸の位置が変わりやすいなど、疝痛をおこしやすい仕組みになっています。
そのため疝痛にかかる可能性が高く、軽症ですむこともありますが、腸捻転の場合など命にかかわることもあります。
疝痛の治療方法は原因により異なります。

骨折(こっせつ)

みなさんの中に骨折を経験したことがある方もいるのではないでしょうか。または、家族や友人などが骨折をしてサポートをした経験がある方もいるかもしれません。
その骨折はきっと、手術や安静期間があり、必要な治療を受け、元気になられているかと思います。
しかし、馬にとって骨折は「引退」や「安楽死」など今後が大きく変化する要因になることがあります。
もちろん、軽症の場合は患部を固定し、安静にすることで完治することがあります。しかし、重症の場合や治療の経過やその見通しがよくなく予後不良となった場合、「安楽死」という選択肢がでてきます。
「安楽死」と聞くと、かわいそうと感じるかもしれませんが、競走馬や乗用馬など軽種の馬の体重でさえ400~500㎏といわれています。その体重を4本肢で支えていたところ3本になると、健康な3本の肢に負担がかかり、別の病気やケガを引き起こすことがあります。
安楽死という方法を取らず、命を長らえても、骨折だけではなく闘病が始まることにもなります。
できれば、いつまでも健康で長生きしてほしいものです。骨折は、レースや練習、調教の際にも起こりうるケガなので注意が必要です。

感冒(かんぼう)

主にウイルス感染による炎症で、いわゆる風邪のことです。疲労やストレスが要因になることもあります。症状は発熱、食欲の低下、咳、鼻汁です。しかし、ウイルスにより症状は異なり、これらがすべて症状として出るとは限りません。元気にみえて、毎日の体温測定で発熱に気が付くこともあります。
通常は、初期に治療を受け、十分な休養と栄養をとれば数日で回復します。しかし、発熱に気が付かず運動を行うと、肺炎などに進行し重篤になることもあるようです。
また、症状が馬インフルエンザに似ているため、それと識別するためにも獣医の診察が必要になります。

鼻出血(びしゅっけつ)

鼻出血とは鼻血のことです。馬は口呼吸ができないので、鼻出血が呼吸困難につながるのは容易に想像が出来るかと思います。
原因は、外傷性のものと内因性のものが考えられます。外傷性の場合は短期間で治り再発はありませんが、内因性の場合は、肺や気道が原因の場合があります。内因性のものは再発の可能性もありますので、注意が必要です。

裂蹄(れってい)

裂蹄とは蹄壁が割れて亀裂が入ったものです。原因としては冬など乾燥のしすぎ、運動時に前肢と後肢がぶつかりその衝撃によるもの、衛生管理が挙げられます。
その原因により亀裂が縦に入る縦裂蹄と横に入る横裂蹄があります。具体的には、縦に入るものとして乾燥があります。普段から蹄油をしっかり塗り、乾燥の予防をしましょう。横に入るものとしては、蹄壁の生え際に異常がおこり、横一線が弱い角質でできることによります。
どちらも悪化防止のため蹄鉄学的な処置に合わせて内科療法を施すことがあります。重症の場合は蹄が伸びるまで休養になる場合があります。

挫跖(ざせき)

歩行、走行中に石など硬いものを踏んでしまった場合や、後肢の先端で前肢ぶつけてしまった時に蹄底におきる炎症(内出血)を挫跖いいます。
一般的に蹄に熱を持ち、重症の場合は歩様が悪くなります。予防として、石など硬いものは取り除いておくようにしましょう。

屈腱炎(くっけんえん) 別称:エビハラ

屈腱炎は俗称として「エビハラ・エビ」ともいわれ、腱の一部断裂による炎症をいいます。発症すると腱がエビのように腫れあがることからそのようにと呼ばれています。
屈腱炎の原因は、継続的な運動によりおこると推測され、再発の可能性が高いケガです。命に係わるケガではありませんが、競走馬にとっては「引退」の原因になる病気の一つです。

筋炎・筋肉痛(きんえん・きんにくつう) 別称:コズミ

筋炎や筋肉痛の俗称として「コズミ」ともいわれます。過度の調教、激しいレース後に表れます。軽症の場合は指で圧をかけると痛がる程度です。しかし、重症の場合は歩き方がスムーズではなくぎこちない状態になります。
たいていウォーミングアップで解消されますが、重症の場合は休養を必要とすることがあります。

管骨骨膜炎(かんこつこつまくえん) 別称:ソエ

管骨骨膜炎は、俗称として「ソエ、ムコウゾエ」ともいわれます。若い骨が完全に発育する前に強い調教や硬い走路で調教をおこなうことにより発症する、疲労骨折の一種です。
初期であれば運動量を減らしたり、患部を冷却することにより治癒しますが、レザー治療も有効とされています。
骨がしっかりしてくる5歳くらいになると、自然と落ち着いてくるようです。

馬の健康管理と予防

馬の病気やケガはどんなものも早期発見、早期治療が重要です。しかし、馬は人間にわかる言葉で伝えてはくれません。そこで大切になるのは、日常の健康管理と何気ないしぐさを見逃さない観察力です。
日常の健康管理には、体温、脈拍数、呼吸数、可視粘膜、採食の仕方、皮膚や被毛、尿の色・量、便、腸の動き、運動器の触診、蹄の温度や蹄輪・蹄底の観察等、多岐にわたります。
しかし、「体温を計る」だけでも馬の体温の計り方や平熱を知らないと正しい判断ができません。正常脈拍数も子馬と成馬でも違います。
日常の健康管理は馬との大切なコミュニケーションの場です。正しい知識をもち、しっかり観察し、異常がみられたら早めに対処をしましょう。
また、蹄油を塗ることで裂蹄を、硬い石を取り除くことで挫跖を予防することができます。病気やケガにつながる前の予防も心がけましょう。

まとめ

馬の体は人間と違うため、病気やケガをした場合に想像以上に進行が速かったり、致命的な問題につながることがあります。
言葉で理解が出来ない分、日常の健康管理と予防、そして普段と違うしぐさを感じ取ることが重要です。「普段と違うしぐさ」が感じられるよう、普段からのふれあい・観察の時間を大切にしたいですね。

 

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