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馬は暑いのが苦手?

梅雨が明けると本格的な夏がやってきます。
これまでにも「観測史上初めての暑さ」「最高気温を更新」といった報道をよく耳にしてきましたが、今年の夏もやっぱり暑いのでしょうか。
今回は、馬と暑さについてご説明します。

品種による違いはあるの?

馬は暑いのが苦手?

現在、様々な品種の馬が世界中で飼育されています。
日本国内の在来馬も、北海道の道産子(北海道和種)から沖縄の宮古馬や与那国馬まで、様々な環境に分布しています。

道産子は、江戸時代には夏の漁獲物の運搬に使われていました。
夏の仕事が終わると人に世話されることなく放置され、北海道(当時は蝦夷)の冬を自力で生き延びたものが翌夏の運搬に使われる、ということが繰り返されていたそうです。
このような環境で、北海道の寒さと粗食に耐えられる馬となりました。

宮古馬は宮古島、与那国馬は与那国島で、他の品種と混ざることなく維持され、農耕などに利用されてきていますので、それぞれの島の気候風土に合った馬が残ってきていると考えられます。

このような品種による違いもありますが、馬の体は飼われている環境に順応し、管理によって変化していきます。

人も、暑さに体が慣れる前、5月頃に急に真夏日になると、熱中症になりやすいですよね。
馬も同じです。
暑い地域の品種だから熱中症にならないということはありませんので、どの馬も同じように健康状態を良く観察してあげる必要があります。

馬はどうやって体温を調節する?

馬は暑いのが苦手?

人も馬も、基本的な体温調節のしくみは同じです。
体温を下げたいときには汗を出し、汗の水分が皮膚の上で蒸発する時の気化熱を利用して体温を一定に保ちます。

ここで問題です。
人と馬は、どちらが効率的に体内の熱を放散することができるでしょうか?

「馬はあんなに早く走ることができるし、汗もすごくかくから…馬!」とお答えになった方。

残念!正解は人でした。

人が馬よりも効率的に熱を放散できる理由は二つあります。
一つは体重あたりの体表面積、もう一つは体表面の被毛の有無です。

体重あたりの体表面積が大きいほど、熱は効率的に放散できます。
一見、体が大きい馬の方が有利なのではと思われるのですが、下の表のとおり、体重あたりの体表面積は人の方が大きいのです。

体重(A)体表面積(B)体重あたりの体表面積(B/A)
60 kg1.7 m228.3 m2/t
500 kg5.0 m210.0 m2/t

また、人は体表面に被毛がないため、汗が皮膚の上で蒸発しやすく、熱も放散しやすいのです。

体表面積はどうすることもできませんが、被毛の抜け替わりの時期には丁寧にブラッシングをして、せめて余分な被毛は取り除いてあげたいですね。

人と馬の汗腺の違い

馬は暑いのが苦手?

人の汗腺には「アポクリン汗腺」と「エクリン汗腺」があります。
暑いときや運動をしたときには、全身のエクリン汗腺からサラサラの汗をかきます。
一方のアポクリン汗腺は、ワキの下などの毛根に開口していて、脂質やタンパク質を含む白く濁った汗を分泌します。
エクリン汗腺では汗に含まれる塩分を再吸収できますが、アポクリン汗腺では塩分の再吸収ができません。

馬は、アポクリン腺と似た構造の汗腺が全身に分布していますが、機能的にはエクリン腺に近く、ここから大量の汗をかくことができます。
ですが、塩分の再吸収はできないため、馬は人よりも発汗による塩分の損失割合が高いのです。

汗をかいた後は、人も馬も水分と塩分の補給が大事ですね。

馬の汗の秘密

馬は暑いのが苦手?

馬の汗が白く泡立っているのを見たことがありますか?
これは、洗剤などと同じ界面活性作用を持つ「ラセリン」という物質が汗に含まれているためなのです。

ウールのセーターを水に浸すと、繊維が水をはじいてしみ込みませんが、洗剤を入れた水はしみ込みますよね。洗剤の界面活性作用によって、水が繊維に浸透するためなのです。

馬が汗をかくと、同じことが体の表面で起こります。
水だけでは被毛にはじかれて拡がりませんが、ラセリンを含む汗は被毛になじんで体表に拡がり、効率良く熱を放散することができるのです。

体重あたりの体表面積や、体表の被毛で人より劣勢だった馬ですが、秘密兵器のラセリンで少しは追いつくことができたでしょうか。

白く泡立つほど汗をかいた後は、丸洗いをして水気をしっかり拭き取り、馬体を清潔にしてあげたいですね。

まとめ

馬は暑いのが苦手?

東京オリンピック・パラリンピックの馬術競技では、暑熱対策のために早朝や夕方以降に競技が行われ、その日の天候によってはさらに涼しい時間帯に変更されたことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

また、2024年から夏の競馬の熱中症リスクが高い時間帯にはレースの休止時間が設けられることがJRAから発表されました。
競馬場によってはパドックなどの施設にミストを設置して暑熱対策を行なっているところもあります。

馬にとって快適な温度域は、年齢や品種などによって差はありますが、7~23℃が目安(『馬のウェルフェア飼養管理評価マニュアル』、公益社団法人日本馬事協会、平成29年3月)とされています。

馬は暑いのがとても苦手です。

厩舎の風通しを良くしたり、新鮮できれいな水をいつでもたっぷり飲めるようにしたり、快適な環境を整えて、暑い夏を元気に乗り切りましょう!

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