【ケアしよう】馬の脚
乗馬では、レッスン前と乗り終わった際には馬のお手入れをします。レッスン後は、運動中に怪我をしていないか、十分に馬体チェックをすることが大切です。特に脚のケアは重要ですね。熱感はないか、腫れているところはないかなど、脚を触って確認をします。
馬の脚によく見られるトラブルとしては、エビハラとコズミがあります。このようなトラブルがあると、回復するまで乗り運動ができなくなってしまうことも。
今回はエビハラとコズミの症状やケアの方法についてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧下さい。
エビハラとは?
エビハラとは、単にエビと呼ばれることもある屈腱の炎症のことです。正式名称は屈腱炎と言います。屈腱とは脚の裏にある腱のことで、ヒトにあてはめると中指の付け根から手首までにある骨の、手のひら側にある腱ということになります。
エビハラの症状
エビハラの主な症状は、屈腱の発熱・腫れ・痛みなどです。腱の一部が切れたり、変形することで出血や炎症を起こします。
慢性になると腱が次第に厚く腫れてきて固くなり、見た目が海老の腹のような形になります。この見た目の形から、エビ・エビハラと言われるようになりました。エビハラは前脚に多く発症し、一度発症すると完治しにくく再発の可能性が高い病気です。
エビハラの原因
エビハラの原因は、走った際の腱の激しい伸縮運動による摩擦熱や、体温の上昇です。
馬の平熱は約37℃です。運動すると屈腱の温度は45℃くらいにまで上昇します。屈腱の温度が43℃を超えると腱繊維が変形し始め、それが継続して起こると腱繊維の断裂が起こります。
コズミとは?
コズミとは、馬の脚に見られる筋炎や筋肉痛の俗称です。
コズミの症状
軽度の場合は指で押すと痛がる程度ですが、重症の場合は跛行するようになります。跛行とは、歩様に見られる異常で、歩行がぎこちなかったり、脚をひきずるように歩く状態のことを言います。
皆さんも筋肉痛の部分を動かすときに、何となく動きがぎこちなくなりませんか?馬も筋肉痛になると人と同じような状態になるのです。
コズミの原因
コズミは疲れが溜まっていたり、急激な運動やハードな調教などで筋肉が固くなることが原因で起こります。また、寒さなどの環境の変化や移動によるストレスで症状が表れることもあります。
ケア方法
エビハラのケア方法
エビハラは、まず患部を冷却することが重要です。運動によって体温が上がると、腱繊維は細くなり断裂しやすい状態にあります。冷却することによって腱繊維は元の状態に戻ります。脚を冷やしている間に、筋肉をほぐすためのマッサージをおこなうことも効果的です。
症状が悪化した場合には、超音波やレーザー治療をおこないます。
エビハラを発症した場合、1~2ヶ月はあまり動き回らないように馬房内での休養も必要となります。放牧することも控えます。
コズミのケア方法
コズミは筋肉痛なので、人の筋肉痛の際のケアとほぼ同様です。
歩様がぎこちない場合にはマッサージや電気針治療、筋肉注射やマイクロウェーブなどの治療によるメンテナンスが必要となります。
こんなところも気を付けて
エビハラやコズミは、発症させないことが一番です。そのためには予防が大切です。
エビハラの予防は、運動後に速やかに体や脚元の冷却をすることが効果的です。
コズミの予防方法は、筋肉疲労を蓄積させないことです。過度な運動をさせない、十分なウォーミングアップをおこなうことで筋肉へのダメージを少なくすることができます。
最近のJRAの研究によると、コズミは筋肉内にできた活性酸素が原因であることがわかりました。運動することによって発生する活性酸素が筋肉内に増加すると、筋細胞膜を傷つけて炎症が起こります。コズミのある馬に抗酸化作用のあるサプリメント(アスタキサンチン)を与えたところ、コズミを発症する馬の割合が減少したとの実験結果が報告されました。コズミが起きやすい馬には、予防のためにサプリメントを与えるという方法もあるということですね。
コズミは筋肉痛なので、軽い症状のように思われるかもしれません。しかしコズミが悪化すると、スクミと呼ばれる、より重度の筋肉損傷を引き起こす可能性があります。たかが筋肉痛と侮らずに、しっかりケアをしましょう。
どちらの症状についても、毎日脚を触ることで馬の脚の変化を見つけられるようになることが重要です。些細な変化も見逃さずにケアをおこなえば、症状は最小限に止められます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
コズミは病気ではなく筋肉痛なので、日頃のケアで解消することが多いです。日々乗り運動をしている馬にとって、コズミはある意味職業病ともいえるでしょう。とはいえ、コズミも悪化すればスクミという深刻な症状となります。
また、エビハラ(屈腱炎)は一度発症してしまうと回復が難しい病気です。
発症を防ぐためにも毎日馬の脚を触ることで、少しの異変も見逃さず、早期発見を心がけましょう。
それでは、これからも楽しく充実した乗馬ライフをお過ごし下さい!