乗馬メディア EQUIA エクイア

メインビジュアル

【びっくりするほど奥深い!】馬の歩法

歩法(ほほう)とは馬の前進の仕方です。動揺「おうま」にあるように「ぽっくりぽっくり」歩くこともありますし、「パカラッパカラッ」走ることもあります。
馬の歩法はどれくらいの種類があるのでしょう。一番速い歩法のスピードはどれくらいになるのでしょう。知れば知るほど奥が深い、馬の歩法について解説します。

4種類ある?

【びっくりするほど奥深い!】馬の歩法

馬の歩法は「常歩(なみあし)」「速歩(はやあし)」「駈歩(かけあし)」「襲歩(しゅうほ)」の4種類があります。これを馬の基本歩法といいます。
また、「常歩」「速歩」「駈歩」を馬術の基本「三種の歩度」といい、これには「襲歩」が含まれません。
それぞれについて、もう少し詳しくみてみましょう。

常歩

常歩は馬が歩くときの歩法です。人間で例えるとウォーキングです。馬にとって楽な動き方で、持久力にすぐれています。

速歩

速歩は人間で例えるとジョギングです。ダッシュほど速くはありませんが、継続的に長い時間速く進むことができます。対角線上にある2本の肢をほぼ同時に前にだすことから、人間の足の動かし方に近いといわれています。

駈歩

乗馬検定4級になると審査対象になるスキルです。肢が4本ある馬ならではの動きで、3拍のリズムで足を動かし、身体を大きく動かして前に進みます。
全ての肢が地面から離れ、宙に浮く時間があります。

襲歩

襲歩は駈歩よりも速度が速い歩法です。競馬で馬が疾走している場面を思い出すと分かりやすいかと思います。前肢も後肢も大きく伸ばし、勢いよく走っていますよね。その歩幅や7mにもなります。

どんな歩き方?

【びっくりするほど奥深い!】馬の歩法

まず人間は足が2本、馬は肢が4本あります。4本の肢をどのように動かしているのか、すぐに理解するのは難しいと思います。ここからは基本歩法といわれる4種類歩き方で、どのように足を動かしているのか解説します。しかし、知識を深めるだけでなく、ぜひ実際の馬の動き方も観察してみることもおすすめです。

常歩

常歩は頭を上下に動かし、バランスをとりながら歩きます。4本の肢が別々のタイミングの着地をし、地面には2本または3本の肢が付いています。
イメージしやすいように足が前にでる順番を具体的に説明すると、左後肢、左前肢、右後肢、右前肢の順です。地面に付いている肢で体重を支えているため、他の歩法に比べて安定しており、騎乗者も軽く前後の揺れを感じる程度になります。しかし、乗馬を始めたばかりの方は、慣れていないためにその揺れさえも大きく感じると思います。
なお、常歩のスピードは分速110mほどです。

速歩

速歩は対角線上にある2本の肢をほぼ同時に前に出します。つまり「左後肢と前右肢」「右後肢と左前肢」をセットにして交互に動かします。そのため、左右どちらかの前肢と後肢に注目すると、近づいたり離れたりを繰り返しています。
速歩は上下の揺れが大きく、初めは騎乗者のお尻が馬の背中から跳ね上げられて痛い思いをすることがあります。しかしレッスンを重ねると、その反動を受け流せる姿勢を覚えていきます。
速歩のスピードは、常歩の2倍の速さ、分速220mほどです。

駈歩

「パカラッパカラッ」と効果音を付けたくなるような、動き方のときに駈歩になっています。具体的には、障害を跳んだり、広い草原を走ったりするときです。
これも肢の動きを説明すると、1右後肢、2左後肢と右前肢が同時、3左前肢と動かすため、3拍子のリズムを刻みます。ブランコのように、後ろから前に大きくゆったり動く揺れを騎乗すると感じられます。
また、前肢の手前肢が方向を決め、手前の反対側の後肢が推進力になることを覚えておきましょう。
駈歩のスピードは常歩の約3倍、分速340mほどです。

襲歩

襲歩はギャロップともいわれ、全速力で走るときの前進の仕方のです。競馬を想像するとイメージをしやすいと思います。それぞれの限界に挑むように勢いよく走ります。
肢の動きをみてみましょう。
襲歩には、交叉襲歩と回転襲歩があり、通常は交叉襲歩を用いますが、手前を変えるとき、あるいは走り始めてからある程度のスピードが出るまでは回転襲歩を用いて走ります。
交叉襲歩は、「左後肢、右後肢」「左前肢、右前肢」の順に交互に肢を動かします。駈歩では最大で3本の肢が地面についている瞬間が存在しましたが、襲歩では3本以上の肢が地面に付くことはなく、また地面から全部の肢が離れて宙に浮く瞬間があります。
では回転襲歩とはどんなものでしょう。これは、「左前肢」「右後肢」「右前肢」「左前肢」の順で肢を動かし、上からみると肢の動きが円を描くように回転しているように見えます。この動き方はエネルギーを使うため馬の場合は5㎞ほどしか継続して走れません。そのため馬は、ある程度スピードがでたら交叉襲歩に走り方を変えているのです。
そしてこの回転襲歩の動きをする動物がチーターなどネコ科の肉食動物なのです。スピードがでる歩法として納得できますね。
襲歩では馬たちは肢だけではなく体も伸ばし、前へ前へ進むため歩幅も駈歩に比べて広くなり、なんと7mにもなります。そしてスピ―ドは常歩4倍どころではなく、分速1,150m、時速にすると60㎞になります。

意外と早い「常歩」

【びっくりするほど奥深い!】馬の歩法

他の歩法と比べると、常歩は安定していますが、スピードが遅く感じます。しかし、ぽっくりぽっくりゆっくり歩いているようで、よく考えてみると意外とスピードが早いことに気が付きます。
わかりやすく説明します。常歩の分速は110mで時速に直すと6.6㎞になります。そこで人間が歩くスピードと比べてみましょう。
人間が歩くスピードは時速4㎞といわれています。そうすると馬の常歩の方が早いということですよね。実はゆったり、のんびり歩いているように見えた常歩も意外と早いということに気が付いたのではないでしょうか。

他にもある歩法

【びっくりするほど奥深い!】馬の歩法

馬の基本歩法として4種類の解説をしましたが、他にも特殊な歩法もあります。馬場馬術の競技会などをみていると競技中に馬が不思議な動きをしているのをみたことがありませんか。このように馬場馬術では運動項目で特殊な歩法もでてきます。代表的なものをいくつか紹介します。

ピアッフェ

ピアッフェは速歩の一種ですが、前進を伴わない速歩のことをいいます。前進せずにその場で足踏みをしているのを、馬場馬術でみたことがありませんか。この動作は馬にとっても人間にとっても難易度が高い歩法です。

パッサージュ

パッサージュはピアッフェ同様に速歩の一種ですが、その違いは前進をすることです。前進といっても非常に収縮した速歩で、ピアッフェほどではありませんが、パッサージュも難易度が高い歩法です。

ピルーエット

ピルーエットは常歩や駈歩の運動中、後肢を軸として360°旋回することをいいます。また同じように180°旋回することをハーフピルーエット、半ピルーエットといいます。

ハーフパス

ハーフパスは馬の肢を交差させながら斜めに移動させることをいいます。常歩・速歩・駈歩のときに取り入れられます。

まとめ

【びっくりするほど奥深い!】馬の歩法

歩法には基本の4種類の他にも種類があることがわかったのではないでしょうか。
基本の4種類では目にする機会も多いと思いますが、馬場馬術で用いられる歩法はなかなか目にする機会もありません。だからこそ、馬場馬術をリアルでも映像でも見る機会があれば、注意して見てみてください。
そして基本の4種類の中でも、「常歩」「速歩」「駈歩」の「三種の歩度」は乗馬をやっていると経験する歩法になります。歩き方を理解することで、揺れの違いを知り、対策を取ることができます。
習っているものからしっかり学び、知識を深め、馬の肢の動きをよく観察することをおすすめします。

新着記事