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【馬のマラソン】エンデュランス競技の魅力

日本では、テレビを付けていてもほぼ競技を見ることはできないエンデュランス。今回の記事では「一体どのような競技なの?」「日本で見る機会はあるの?」といった疑問について解説していきます。

エンデュランスってどんな競技?

【馬のマラソン】エンデュランス競技の魅力

乗馬経験者の中でも、エンデュランスの競技会に参加したことがある人は少ないのではないでしょうか?まずは、エンデュランスがどのような競技なのか紹介します。

エンデュランスは「長距離走」

障害飛越競技がハードル走だとしたら、エンデュランス競技は「馬のマラソン」と言えるかもしれません。この競技では、選手を乗せた馬たちが数十km〜ときには100kmを超えるコースを走り抜けることも。


馬場馬術と異なり「元来は馬が行わない動きをさせる」といった難しさは無いものの、車ですら「ちょっと遠いな」と感じるほどの距離を馬で走り抜けるのは簡単なことではありません。

「速達」から始まった競技?

馬に乗って行うスポーツにも、昔の生活や労働・風習など様々なルーツがあります。その中で、エンデュランスのルーツになったのは西部開拓時代の馬乗りたちの遠乗り勝負とも、重要な文書を迅速に届けるための「速達」だったとも言われています。


いずれも、生活になくてはならない走行技術にプライドを持つ人たちが、その技術愛馬の能力を競わせるために段々と競争を競技化していったと考えて良いでしょう。


これが国際馬術連盟(FEI)に競技として認められたのは1982年。その後から急速にスポーツとしての知名度が上がり、競技会への参加者も増加したと言われています。

勝利のカギは速さだけではない

エンデュランス競技も障害飛越競技と同じく、基本的な得点の基準は「タイム」です。ただし、速さだけに気を取られていると途中失権になってしまうかも・・・?


なぜなら、エンデュランス競技ではコースが複数のフェイズ(レグ)に区分されて各フェイズの最後に獣医師による馬の健康チェックがあるからです。速さを求めるあまり馬に無茶をさせれば、ここで獣医検査をパスできなければ強制的に一定時間の休養を課されます。


そうならないために、馬の負担を常に考えながら進むことがポイント。ちなみに、エンデュランスではスタートとゴールでは騎乗していなければなりませんが、走行中は曳き馬でもOK。馬の状態とタイムを見ながらの判断が必要となります。


エンデュランスでは、タイム上での「優勝」のほかに「ベストコンディション賞」というものがあることからも、馬の体調管理がいかに重要かが分かりますね。

クルーという存在

エンデュランス競技では、各フェイズ(レグ)のあいだで馬の健康チェックだけではなく休憩を行います。もちろんのんびり休憩をするわけではないので、限られた時間でいかに馬に蓄積された疲労をやわらげるかが勝負。


そこで活躍するのが「クルー」と呼ばれるサポートスタッフです。馬に直接乗る騎手ではないものの、競技中のクルーの動きはピットインしたレーシングカーを素早く整備するスタッフさながら。これを見ると「騎手と馬が優秀なだけでは優勝は狙えないんだな」と感じます。

オリンピック種目ではない!

【馬のマラソン】エンデュランス競技の魅力

馬と人間が二人三脚で挑む長距離走。それは、馬に乗る者としても馬を世話する者としても、もちろん馬自身にとっても極限への挑戦


運動能力×馬体管理という2つの評価基準が観戦者からも見えやすく、個人的には競技を見るたびに「エンデュランスって奥が深いな」「やっぱり面白いな」と感じます。


しかし、実はエンデュランス競技はオリンピック種目ではないんです!


その理由はハッキリとは分かりませんが、他の例を見てみると「世界での競技人口はどれくらいか?」「多くの国や地域で行われているスポーツか?」「競技団体がオリンピック種目になることを望んでいるか?」などオリンピック種目になるにはいろいろな基準があるようです。

有名な大会はこちら

【馬のマラソン】エンデュランス競技の魅力

オリンピックで見られないとなると、エンデュランスの最高峰は一体どのような大会なのでしょうか?今回は、世界的に有名な大会を2つ紹介します。

FEI世界馬術選手権大会

エンデュランスのみならず、馬術におけるワールドカップといえば「FEI世界馬術選手権大会」です。この大会は国際馬術連盟(FEI)が運営し、オリンピックの中間年に行われる馬術大会。


オリンピック競技になっている馬場馬術・障害馬術・総合馬術のほかに、エンデュランス・ウエスタン・馬車競技・軽乗競技・障害者馬術競技など普段はなかなか見ることができない競技も見ることができます。

テヴィス・カップ(Western States Ride)

エンデュランスのルーツともいわれ、アメリカ・カリフォルニア州をスタート地点として、24時間以内に山岳地帯も含む100マイル(160km)を走破するという人馬の限界に挑戦するようなレースです。


このレースの始まりは、1955年。決まったポイントで獣医師のチェックを受けるという大まかなルールは現在と変わりませんが、その時は5人の馬乗りたちが郵便物を持って100マイル先の郵便局を目指し、消印の押印をもってゴールとしたそうです。

日本でも競技会は見られる?

日本国内でもエンデュランスの競技会は行われています。国内で見ることができる競技会は①トレーニングライド②JEF公認競技③FEI公認競技の3種類。トレーニングライドは20kmから挑戦することができるので、まずはここから参加となります。


国内でエンデュランスの競技会を行うことができる場所は、北海道(鹿追ライディングパーク/その他2か所の特設会場)、山梨県(山梨馬術競技場)、静岡県(伊豆ホース・カントリー特設会場)の5か所です。

日本エンデュランス・ライド協会

【馬のマラソン】エンデュランス競技の魅力

エンデュランスの世界的な大会で上位を狙う強豪国に比べると、日本は乗馬自体の競技人口も少なく、とくにエンデュランスについては練習できる場所指導できる人も限られているというのが現状です。このような背景もあり、国内では100kmを超えるコースの参加者はなかなか集まらないのだとか。


日本のこうした乗馬事情の中、エンデュランス・ライドの理念を普及させ、競技環境の整備競技人馬の育成を目指しているのが「日本エンデュランス・ライド協会」です。


日本エンデュランス・ライド協会のホームページ(http://japanendurance.jp/)では、エンデュランス競技の紹介のほか、大会カレンダーなども見ることができます。エンデュランスに挑戦する方だけでなく「競技を見たい!」「もっと知りたい!」という方も、ぜひチェックしてくださいね。

まとめ

馬と騎手、そしてそれを支えるクルーや獣医師が一丸となって挑む長距離走「エンデュランス」。日本では欧米に比べて開催できる地域も少なく知名度も低いですが、一度競技を見れば馬場で行う乗馬とは違った魅力に引き込まれるはずです!

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