乗馬メディア EQUIA エクイア

メインビジュアル

【野生馬っているの!?】群れの中で生きる野生馬について

大草原の中を颯爽と走る馬は、ご存知のとおり草食動物です。そんな馬は群れで生活しています。今回は、人間に飼われていない野生馬について紹介します。馬はなぜ群れで生活するのか、その群れのリーダーはどんな馬なのか、みてみましょう。

いまも野生の馬っているの?

【野生馬っているの!?】群れの中で生きる野生馬について

普段、私たちが目にする馬は競走馬であったり、乗用馬であったり人に飼われている馬ばかりです。実際には、今もどこかに野生の馬がいるのでしょうか。それは、「野生の馬」の解釈により異なってきます。

野生の馬は絶滅した!

人が馬を家畜として飼うようになってから、人は、人の役に立つように馬を調教し、改良もしてきました。馬は人から餌を与えられ、守られる環境の中、身の危険を感じながら生きることがなくなりました。一方で、野生馬たちは厳しい自然の中、20世紀初めにユーラシア大陸の広い草原からも姿を消したといわれています。

野生の馬はいる!

ところが、アメリカのムスタングや宮崎県に生息する御崎馬が野生馬として紹介されていることもあります。
どちらの馬も一度は人間に飼われた経験のある馬ですが、野生馬として紹介がされているには理由があります。
その理由は、ムスタングはスペインの探検家がアメリカに持ち込んだ馬が野生化したもの、御崎馬に関しては牧場の開設当時から自然のまま育てられているというところから野生馬といわれています。

野生の馬が群れで暮らす理由

【野生馬っているの!?】群れの中で生きる野生馬について

動物の中には、猫や熊のように基本は単独で行動する動物と、馬・牛・羊・犬・猿・人間のように群れを作って行動する動物がいます。この違いは、集団で行動することが身を守ることにつながるかどうかによります。その具体的な例を説明します。

集団で逃げる

馬や牛のような草食動物は、常に肉食動物に襲われることが考えられます。身を守るためには、いち早く危険を察知し、より安全な方へと逃げていくことが必要になります。そのためには、集団で行動することが重要になります。
もし集団でなく一頭だけでいた場合は、あっという間に捕まってしまうリスクが高いため、このような草食動物は、集団でいることでお互いの身を守ります。
このような理由から、野生馬も群れを作り、集団で行動を共にしているのです。

集団で狩りをする

犬や狼など狩りをする動物は、狩りをすることで飢えから身を守ることができます。狩りをするときに一頭で狩りをすると獲物を得ることが難しく、集団で狩りをすることで獲物を得られやすくなります。そのため集団で行動をしているようです。
大昔の人間も同じことがいえますよね。集団で協力して狩りをすることで獲物を捕獲し、みんなで分け合い、飢えから身を守っていました。狩りをする時代が終わっても、人間は協力し合って食べ物を収穫しています。

群れのリーダーは年配のメス馬?

【野生馬っているの!?】群れの中で生きる野生馬について

群れを作って生活をする動物たちのリーダーといえば、若くて全盛期を迎えた雄を想像する人が多いのではないでしょうか。しかし、馬の場合は年配のメス馬が群れのリーダーになります。なぜ、年配のメス馬がリーダーとなるのでしょうか。群れのリーダーの役割・資質について説明します。

群れで安全を保つ

まず、馬にとって群れで生活することは生きていくために必要不可欠になります。群れから離れ、草原に一頭だけでいたら肉食動物に「狙ってください」とアピールしていることと同じです。
そして群れで生活するためには、群れのルールを守らなければいけません。またリーダーはルールを守らせなければいけません。ではリーダーはどのようにルールを守らせているのでしょうか。
例えば、年頃のオスが自分の力を試したくなり、他の馬にちょっかいを出すことがあります。他の馬にしてみたらいい迷惑ですよね。そのときリーダーは、噛んだり蹴ったりねじ伏せて、怒るわけではありません。
リーダーは、相手が子馬でもなんでも全力で叱り、歯を立て、お尻を向け群れから追い出します。追い出された馬は、孤立=危険を察知し群れに戻ろうとします。しかし、リーダーはそれを許しません。二度とそんなことをしません、と反省するまでリーダーは睨み続けます。反省できたことでリーダーは睨むのを止め、違う方向を向き、群れに戻ることを許すのです。
動物の中でも社会性があるといわれている馬は、このように集団生活をする中でルールを守り、社会性を身につけているようです。

群れで逃げるために要なこと

馬の場合、肉食動物に襲われたときの防御行動はただ逃げることだけです。固い角があるわけでも、鋭い爪があるわけでもないので戦うことは基本ありません。
しかし、「走って逃げること」は、簡単そうにみえて実は奥が深いものです。まず、周囲を的確に把握できる能力・感覚、周囲の異常や変化にいち早く気付いて対応できること、信用できる記憶力や経験が必要になります。
年配のメス馬は、群れの中で一番逃げる経験をしながら、生き延びてきた馬です。どのタイミングで逃げ出すか、どの方角に逃げるかを知っているのです。
そして、やみくもに遠くまで逃げるということも実は危険があります。気が付かないうちに他の動物の縄張りに入り込んでしまう危険があるからです。ある程度逃げて距離が取れたら、振り返って捕食者が諦めて去るのか、まだ追ってくるのか見極める必要があります。
逃げるときに、年配のメス馬が先頭にいる必要はありません。先頭を走っていなくても群れを導くには、年配のメス馬が適しているのです。

年配のオス馬ではない理由

ここでなぜ、年配のオス馬ではないのか、疑問をもちませんか。ここにはオス馬にはオス馬の世界があり、オス馬は全盛期をすぎると若いオス馬にその地位をとって代わられるからです。一方メス馬は閉経期がないことから生涯子供を産むことができるため、年をとって衰弱するまでその地位にいることができるのです。体力が衰弱し、群れについていけなくなったときに、捕食動物に捕まり群れから離れるのです。

メス馬でないこともある

しかし人間に飼われている馬の群れの中には、メス馬ではなく去勢馬がリーダーになる例もあります。中にはシェットランド・ポニーの去勢馬がリーダーになっていることがあります。
この場合は、体力面で馬たちは自分より体の小さいリーダーを殺すこともできますが、体の小さいリーダーの芯の強さ、リーダーとしての資質に抗うことが出来ないのです。
このことから、体の大きさで支配権が決まることはないということを説明しています。もし、体の大きさで支配権が決まってしまったら、人間は自分が乗っている馬を支配できなくなりますよね。

オス馬の役割

【野生馬っているの!?】群れの中で生きる野生馬について

年老いた年配のメス馬がリーダーとして、群れをまとめ、捕食動物から逃げているときにオス馬はオス馬の役割を持っています。それは群れの最後尾について、遅れをとっている馬たちを励ましているのです。「自分さえ助かれば!」という考えではなく、群れの仲間たちと一緒に助かることを考えているのです。

まとめ

【野生馬っているの!?】群れの中で生きる野生馬について

野生の馬たちは、羊や牛、猿などと同じように群れを作って生活しています。群れを作らず、一頭だけで草原にいると、簡単に捕食動物に狙われてしまいます。そのため、群れを作り捕食動物から身を守っているのです。
そして、馬の最大の防御行為といえば速く走れる肢を活かして、「逃げる」ことです。固い角や鋭い爪があるわけでもないので、基本的に戦うことはできません。
しかし、「逃げる」といっても簡単ではありません。どのタイミングで、どの方向に、どこまで逃げるか、これを熟知しているのが、一番経験の多い年配の馬になります。このような理由から、よぼよぼでも年配のメス馬が群れのリーダーとなります。体力的には勝てるであろう全盛期のオス馬がリーダーにならないのは、抗えないほど年配のメス馬がリーダーとしての芯の強さや資質を持っているからです。

新着記事