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優しくて力持ち!馬界の高身長「クライズデール」について

重種に分類されるクライズデールという馬をご存知でしょうか。重種だけあって、身長も体重もある大きな馬です。顔にある白い模様、4本の脚にある白い部分・球節付近に豊かにある距毛からは品と安定感を感じる馬です。
そんなクライズデールですが、もともとはそれほど大きい馬ではなかったようです。では、どのようにして今のような大きな馬になったのでしょう。その経緯と働きっぷりについて紹介します。

馬の身長はどこからどこまでを測るの?

優しくて力持ち!馬界の高身長「クライズデール」について

人間も人種によって体格が違うように、馬も種類によって体の大きさが違います。体の大きさを比べるときにわかりやすいのが、身長と体重です。馬の場合、身長を「体高」とよびますが、どこからどこまでの長さを示すかご存知でしょうか。
馬の「体高」は、地面から「き甲」と呼ばれる首のつけ根までの高さです。人間の場合を考えると、き甲から上にある頭や耳の部分が含まれないことを不思議に思うかも知れません。これは「人間より大きな馬の一番高いところまで測るのは難しい」ということが、理由になっているようです。
体高を表す単位は「センチメートル」の他に「インチ」「ハンド」で表されることがあります。インチはアメリカで使われている長さの単位で、一般的に1インチは2.54センチメートルで計算されます。1ハンドは人間の手の幅を意味していたようですが、のちに4インチ(10.16センチメートル)に規定されました。

他の種類の馬と「クライズデール」の身長を比べてみよう!

優しくて力持ち!馬界の高身長「クライズデール」について

「馬といえば競走馬!」とイメージする人が多いと思います。しかし、馬は競走馬の他にも農耕に使われる馬・運搬に使われる馬・軍用馬・乗用馬などさまざまな仕事のために、それに適した種類の馬がいます。そのため、種類によって馬の大きさや性格も違ってきます。
ここでは、パレードなどにも用いられる「クライズデール」の大きさについて他の馬と比較をしながら紹介します。

クライズデールの大きさ

クライズデールは1800年代のスコットランド地方で成立した品種です。もともとは小さい品種でしたが、パレードやショーに出たときの見栄えから、大きい身体を持つようになりました。
今では、体高は163~183センチメートルとなり、体重は820~910キログラム、これらの体格から重種に分類されています。
額の幅や鼻孔も大きく、背中もたくましく、また距毛も豊かなことから安定感が感じられます。
毛の色は鹿毛・青毛・栗毛・芦毛などさまざまですが、顔に白い模様がみられ、足元も靴下を履いているかのように白い馬がほとんどです。

他の馬の大きさ

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クライズデールの大きさを他の馬と比較してみましょう。まずは同じく重種の馬と、そして次に競走馬や乗用馬としてよく見られるサラブレット、小さい馬の代名詞となっているポニーと比較してみます。

他の重種の馬たち

重種にはクライズデール以外にも力持ちの馬たちがいます。例えば、8世紀のフランスで成立したペルシュロン。ペルシュロンの体高は160~170センチメートルです。胴が太く、脚が短いのが特徴です。
また重種の中でも大きいといわれているシャイアーの体高は160~170センチメートルで180センチメートルを超えるものもあります。体高だけみるとクライズデールと変わらないように感じますが、体重は1トンをこえるものも珍しくありません。

サラブレット

競走馬や乗用馬としてよくみるサラブレットは、軽種に分類されます。サラブレットの平均体高は160~170センチメートル、平均体重は450~500キログラムです。
サラブレットは速く走るために改良が重ねられ、頭は小さく4本の脚は長く、体はスマートですが胸やお尻の辺りは筋肉が発達しています。その結果、速く走れる体だけでなく美しい体となり、人間が作り出した最高の芸術品ともいわれています。
その一方で、サラブレットは怪我をしやすかったり、物音にも敏感だったりと心身ともにデリケートな品種になっています。

ポニー

ポニーは特定の品種ではありません。体高が147センチメートル以下の馬を総称してポニーとよびます。つまり体高70センチメートル、大型犬ほどの大きさのファラベラも体高130~140センチメートルのコネマラもポニーになります。

「クライズデール」の性格と働きっぷり

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大きな体で安定感のあるクライズデールはどんな性格をしているのか、またその大きな体を活かしてどんな仕事をしているのかを紹介します。

性格は?

馬は一般的に繊細・臆病といわれますが、種類によって異なる部分もあります。
例えば、サラブレットなどの軽種は、気性が荒い・音に敏感・動きが機敏といわれています。
一方でクライズデールなどの重種は、従順・温厚なため、調教がしやすい、またスピードは遅くてもパワーがあるといわれています。
つまりクライズデールも体が大きく力持ち、そのうえ温厚で優しい性格ということで、とても頼りがいのある馬です。

働きっぷりは?

スコットランド原産のクライズデールは、もともと農業や石炭・その他重い物の運搬に使われていました。
今では農業や伐採、馬車をひくための輓馬として使われている他に、足元に白い房毛があることから見栄えもよく、馬車やパレードに使われる馬として人気があります。
また、調教のしやすさや乗用馬としても使えることから乗用馬としても活躍しています。
英国では王立騎兵隊で重い太鼓を演奏する人を乗せるときに、体高173センチメートル以上のクライズデールやシャイヤーを用いています。英国の祝典のパレードのときに、お仕事中のクライズデールをみることができるかもしれません。

「クライズデール」とビール会社の関係

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クライズデールをマスコットキャラクターにしているビールがあるのをご存知でしょうか。それば日本でもアメリカでも有名なバドワイザーです。馬たちはバドワイザークライズデールとよばれ、主役としてCMにも出演しています。

バドワイザークライズデールの始まり

バドワイザーはアメリカの大手ビール製造会社のアンハイザー・ブッシュ社が生産・販売するビールです。
アンハイザー・ブッシュ社は1852年に創業し、バドワイザーは1876年から生産が開始されました。その頃はもちろんトラックはなく、荷馬車でビールを輸送していました。しかし、その頃はまだクライズデールはマスコットキャラクターにはなっていません。
その後アメリカでは1920年~1933年の間、禁酒法が施工され、消費のためのアルコールの製造・販売・輸送が禁止されていました。そんな時代の終盤、所有していた馬から始まり、クライズデールとバドワイザー双方のシンボルとしてバドワイザークライズデールが誕生しました。

バドワイザークライズデールになるには…

アンハイザー・ブッシュ社は、ミズーリ州のセントルイスにあります。そしてアンハイザー・ブッシュ社が所有するクライズデールの多くは、その近くのグランツファームで育ちます。そこには約35頭のバドワイザークライズデールがおり、毎年約15頭の子馬が生まれています。
グランツファーム以外にも、アメリカのさまざまな場所でアンハイザー・ブッシュ社はバドワイザークライズデールを所有しており、その数は合計約250頭といわれています。
しかし、アンハイザー・ブッシュ社が所有している厩舎で生まれたクライズデールが全頭バドワイザークライズデールとしてCMやイベントに参加できるわけではないようです。
そこには年齢や身長以外にも毛の色・たてがみと尻尾の色・顔の白い部分の形・4本の足元の白い部分が均等であるかなど、基準があり、その基準にクリアしたクライズデールだけがCMやイベントに参加できるようです。

まとめ

18世紀の中頃、スコットで誕生したクライズデール。始めは今ほど大きくはなく、農業や荷物の運搬に使われていました。
時代と共に活躍の場は世界に広がり、農業や荷物の運搬だけでなく、パレードにも用いられるようになりました。
また、日本でも知られているアメリカのビール、バドワイザーのシンボルにもなっています。性格は温厚・従順で、大きな体で力持ち。これからもクライズデールの活躍の場は広がっていくかもしれません。

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