【馬のマニキュア?!】馬の蹄に塗る油「蹄油」について

大きな馬の足元は、犬や猫のように毛に覆われているわけではなく、立派な蹄がついています。この蹄に蹄油(ていゆ)を塗るとマニキュアのようにピカピカします。
しかしこの蹄油の働きは、マニキュアのように見た目をよくするだけでなく、蹄の質を守る働きもあるのです。具体的な働き、効果的な塗り方を紹介します。

蹄油とは

蹄のケアに欠かせない蹄油。塗るとピカピカになり、見ている方も気持よくなりますが、実は奥が深いケア用品です。
もともとは蹄のケアを目的に使用する蹄油ですが、馬場馬術の競技に参加される方の中には、足元の美しさを引き出すために使用することもあります。
蹄油の成分は馬油・肝油・ワセリン・ティーツリー油・スピンドル油・タール油などさまざまで、人間でも使用できる天然成分でできているもの、蹄だけでなくたてがみや尻尾にも使用できるものなどもあります。
なぜこんなにも蹄油は馬にとって身近なケア用品なのでしょうか。まずは蹄油を塗る目的を見てみましょう。

蹄油を塗るのはどうして?

草食動物である馬は肉食動物から1秒でも1メートルでも速く遠くに逃げる必要があります。そのため馬は速く走れるように体型が変化するとともに蹄も進化してきました。
そんな中、馬の足元は皮膚のままでは耐えられず、人間の爪と同様に角質化し蹄になりました。角質化した蹄は、通常、馬にとって靴になる蹄鉄の装着も痛みを感じないようですが、蹄が裂けたりひびが入ったりすると致命的な問題になります。
馬にとって「第二の心臓」といわれるほど大切な蹄。それを守るためのケア用品の一つとして、蹄油は欠かせないものです。

蹄油の働き

蹄を守るために必要不可欠な蹄油は主に2つの目的で塗られます。一つ目は乾燥を防ぎ保湿のためで、もう一つは汚れを防止するためです。詳しくみてみましょう。

保湿の働き

人間の爪も乾燥をするとひびが入ったり、割れやすくなったりともろくなります。馬の蹄も同様に乾燥するとひびが入ったり、割れたり裂けてしまうことがあります。亀裂が大きく知覚部まで達すると痛みや出血により歩様が悪くなります。
馬の肢のうらは血液を心臓に戻すポンプの役割もあるので、上手く歩けなくなると蹄だけの問題ではなく、体への負担がでてきます。
蹄から体内の水分を放出するのを防ぐためにも、蹄油はとても重要な役割を果たしています。

汚れ防止の働き

蹄を乾燥させてしまうとひびが入ったり割れてしまうことがあると説明しました。
しかし、乾燥とは逆に水分が多すぎるのもまた問題です。蹄油は名前の通り成分は油です。油を塗ることで余計な水や汚れが付くのを防ぐことができます。
そのため予め油を塗っておくことで水をはじくことができます。また、砂や泥の汚れの他に馬房などの汚れた敷物の上にいることで、汚物などが蹄底につまり、蹄の蹄叉と呼ばれる部分が腐って悪臭を放つ蹄叉腐爛という病気になることがあります。
この病気は蹄叉がボロボロに崩れ、悪臭がし、化膿した液体が出てきます。ひどくなると出血を伴い、歩様も悪くなります。
この病気は馬房などを清潔に保ち、蹄のケアをしっかりすること、また汚物などによる汚れが蹄に付着しないよう予防することで防ぐことができます。

蹄油はいつ塗るのがいい?

蹄油は馬の蹄のケアには欠かせないもので、塗る目的は一つだけではないということがわかったかと思います。
蹄だけでなく馬の健康を守るためにも適切に蹄油を塗ってあげたいところですが、どのタイミングで塗ってあげるのがいいのでしょうか。目的別に紹介します。

保湿を目的に塗る場合

蹄油を使用してケアしている方の多くは、運動後や馬房から蹄洗場(洗い場)に連れてきたときに、蹄を洗浄し、その後に塗っているのではないでしょうか。これは保湿を目的にした場合、合理的なタイミングです。
人間が入浴後に保湿クリームを塗るのと同じように、馬も足元をきれいに洗った後に蹄に蹄油を塗ることで乾燥を防ぐことができます。

水分量を減らしたい場合

蹄が乾燥することによりひびが入ったり、割れてしまうというリスクがあることは理解できたかと思います。しかし、常に水分たっぷりの状況がいいということではないことも知っておきましょう。
人間の爪も水分を含むとふやけてきます。その状態がずっと続くと爪は柔らかく、もろくなります。馬の蹄も同じです。
特に乗馬の練習馬は濡れた蹄洗場に立つことが多く、さらに練習ごとに蹄を洗浄することを考えると、乾燥させること・水分が入ってこないことを考える必要もあります。
しかも雨の日や水たまりのある馬場で練習をすることがあります。
このようなときは馬場に出る前に蹄油を塗ってあげると、水をはじき、蹄がふやけるのを防ぐことができます。

蹄油を塗るときの注意点

馬の蹄は私達の目に見えている部分と蹄の底の部分は性質が同じではありません。具体的には目に見えている蹄壁から水分を放出し、足の裏にあたる蹄底から水分を吸収します。
そのため蹄油を塗る目的に合わせて塗る場所を考える必要があります。例えば乾燥を防ぐためには蹄壁に塗ります。水分や砂、汚物が入ってくるのを防ぐためには蹄底に蹄油を塗りコーティングします。
蹄底を塗るときには、馬に肢をあげてもらう必要があります。馬の肢を動かすとき、また戻すときには自分の安全にも注意しましょう。
さらに馬の蹄の様子により、蹄油を塗るべきかどうか判断に迷うことがあります。蹄油は蹄の質を維持する働きがありますが、塗ることによりトラブルを起こすことがあります。
例えば水分を含んでいるときに蹄壁を塗ってしまう場合などです。水分が放出されずふやけたままの状態が続いてしまい、それが続くと蹄はもろくなります。塗った方がいいのか判断できない場合は乗馬クラブなどであれば指導員に確認してみましょう。

蹄油を塗るときの準備と塗り方

では、実際に蹄油を塗ってみましょうといいたいところですが、その前に準備があります。それは、蹄をきれいに洗うということです。

蹄油の前にきれいになっていますか?

蹄が汚れたまま蹄油を塗った場合どうなるでしょうか。汚れたまま蹄が油でコーティングしてしまいます。このとき、きれいにするのは蹄壁だけでなく、足を持ち上げて蹄の底もきれいにしましょう
例えば蹄鉄と蹄の間、蹄の溝に敷き藁などが詰まった状態のままだと、蹄の角質部分が腐ってしまう蹄叉腐爛という病気を引き起こすこともあります。鉄爪(てっぴ)などを使用し、蹄の裏に挟まった藁やおがくず・石・泥・汚物などをかきだしましょう。
この蹄を洗う作業で注意したいのは、水の温度です。温かいお湯を使うと人間の毛穴が開くように蹄がどんどん水分を吸収してふやけてしまいます。寒い冬、水の冷たさが心配になるかも知れませんがお湯ではなく水を使いましょう。

いざ塗ってみましょう!

蹄油を塗るときは、蹄油についているハケやブラシを使って適切な場所に、薄く全体的に塗っていきます。
以前は生えぎわには塗らないように注意していたことがあります。理由はそのころの蹄油には体に悪い成分が含まれており、それを体内に吸収させないためといわれていました。しかし今は蹄油の質もよくなり、体への影響は関係ないといわれています。
蹄油を塗るときには、馬の肢を持ち上げるため、肢を地面に置くまで人間も注意する必要があります。

まとめ

蹄油は馬にとって足元をピカピカにするマニュキュアのようなものですが、見た目だけでなく、馬にとって欠かせないケア用品です。
大きな体を支え、早く走るために進化した蹄。そんな蹄を守るための蹄油は、塗る目的により塗る場所が変わってきます。また間違えた塗り方により蹄にトラブルを起こすこともあります。
じっとしていない馬の重たい足を持ち上げたり、その持ち上げた足には尿やボロが直接ついているため汚いと感じることから、蹄のケアをさぼりたくなる人もいると思います。しかし蹄は馬にとって「第二の心臓」といわれるほど大切なものです。蹄をきれいにし、蹄油を適切に使用し、丈夫で健康な蹄を維持しましょう。

 

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