馬が速く走れる理由
馬が全速力で走ると迫力があり、すごいスピードが出ることがわかります。レッスンを受け駈足をしているだけでも、乗っている側の体感スピードはかなり速いと感じることができますが、さらに競走馬は人を乗せた状態でも時速60~70㎞ものスピードを出すことができるといいます。
ではなぜ馬は速く走ることができるのでしょうか。単純に大きな体と長い脚を持つから進む力があるのでしょうか。ここでは速く走るための馬の体の秘密を紹介します。
足の指が中指1本なのは速く走るための進化だった
草食動物である馬は、自然界においては肉食動物に狙われる存在です。厳しい環境下で生き延びるためには、速く走り肉食動物から逃げるほかありません。
人間も含め動物は環境に合わせ進化します。馬も速く走るために進化を遂げていると言えます。例えば肢です。肢が長い方が一回に進める距離が長くなり、より速く進むことができます。
馬はより肢を長くし速く走れるよう、4本あった足の指を一番長さのある中指のみで支え進むようになりました。次第に中指以外の指が退化し今の蹄に進化したと言われています。
また馬が走る際の蹄に注目すると、かかとを地面に付けることなく走っていることが分かります。これは人も同じで少し前のめりになり、地面への接地面を少なく走る方が速く走れるのではないでしょうか。
このように速く走るために馬は大きな進化を遂げ、今の蹄を手に入れたのです。
関節の動き方にも速く走れる秘密が!
馬の手足は、極端に言ってしまえば歩いたり走ったりすること以外に使いません。人のように手足をひねったり複雑に動かす必要がないのです。馬が速く走るのに、動きが制限した状態の方が安定して地面を蹴ることができ、スピードを出しやすい構造であると言えます。
逆に複雑に動く構造だと、力強く地面を蹴って全速力で走る際にひねりケガをする恐れがあり、危険を伴ってしまいます。馬にとって肢のケガは死に繋がります。
競走馬で言えば馬体重は450~500kgと言われ、1本の肢にかかる重さは100~150kgです。肢がケガで支えられなくなれば正常な肢に大きな負担がかかることになるでしょう。
「ケガが治るまで横になっていれば良いのでは?」と感じる人いるかもしれません。しかし馬にはそれができない理由があります。それはふくらはぎが第二の心臓と呼ばれる補助機能の役割を果たしているからなのです。馬は心臓だけでなくふくらはぎでも血液を循環するポンプの役割があります。
偏った体重のかけ方や長期間横になってしまうことで、血行障害を起こし蹄の炎症など様々な故障を引き起こすのです。馬の肢は動きが制限され不便に感じるかもしれませんが、馬にとってはそれがベストな造りであるということです。
速く走れる馬は心臓も大きい!
競走馬のようにレースに出て凄いスピードで走る馬は、先ほど紹介した脚の進化や関節動きやトレーニングをして筋肉を付けているという点が、速さの理由と言えるでしょう。実はもう一つ見た目には見えない違いがあります。
それは心臓です。人間の心臓の大きさは300g程度、それに比べ馬は4~5kgもの大きさの心臓を持っています。馬は体の大きい動物なので、人間に比べ大きいのは当たり前です。見てもらいたいのは比率です。
人間は50~60kgの体重に対し0.4~0.5%が心臓と言われ馬は400~500kgの体重に対し1.0%が心臓です。
人間の中でもスポーツ選手はトレーニングで心臓が大きくなると言われます。馬の心臓は激しい運動の際に上がる心拍数に耐えられるようなっているのでしょう。競走馬の中でも心肺機能が高い馬はレースでも活躍できる、すなわち速く走れる馬は心臓が大きく強いのです。
まとめ
馬の迫力ある走りには、目を奪われます。あの速さには草食動物であるからこそ備わった、速く走るための身体的特徴があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
ただトレーニングし筋肉をつけるだけでは、あのスピードは出ません。馬の足は蹄という他の動物とは違った形をしていることに、驚き疑問を持っていた人も馬が速く敵から逃げるための進化であったことが分かったでしょう。
また思ったよりも馬の脚は関節の動きに制限あります。それも馬が速く走るうえで重要な特徴でした。馬は足にけがを負うと致命的であると言われる意味がここにありました。
優しい性格の反面、力強い走りを見せ強さが目立つ馬ですが、体の造りは繊細な特徴が表れていると言えるでしょう。