競馬場のコースについて
日本では、馬といえば乗馬よりも競馬を目にする機会のほうが多いかもしれません。また、乗馬を習っていて「馬が好きで競馬も見に行く!」という人もいるでしょう。今回は、そんな競馬のコースに右回り・左回りがある理由について解説します!
右回りコースと左回りコース
競馬は“馬のトラック競技”のようなもの。人間も陸上競技のときは直線とカーブで構成されたレーンを走りますね。また、競馬でもハードル走のように障害物が置かれたコースもあります。
ただし、人間のトラック競技では必ずトラックは左回り。オリンピックや世界陸上などをテレビで見ても、ゴール前の競り合いの場面では選手たちが左から右へ走っていくイメージがあると思います。
一方、競馬では右回り・左回りの規定はないので、競馬場やコースによって回る方向が異なります。ただし、まったくバラバラというわけではなく、国ごとに「こちらの方向が多い」といった傾向はあるようです。日本では右回りが多いので、競走馬が走っている写真には左側を向いている写真が多いですね。
日本の競馬場に右回りが多い理由
では、なぜ日本には右回りのコースが多いのでしょうか?各競馬場のコースとともに、右回りが多くなった理由として有力なものを紹介します。
右回りの競馬場
日本国内では、中央競馬会に属する競馬場のメインコースの方向を比べると右回り・左回りの方向は下記のようになります。
【右回り】
札幌競馬場(北海道)
函館競馬場(北海道)
福島競馬場(福島県)
中山競馬場(千葉県)
阪神競馬場(兵庫県)
京都競馬場(京都府)
小倉競馬場(福岡県)
【左回り】
東京競馬場(東京都)
新潟競馬場(新潟県)
中京競馬場(愛知県)
見てみると、やはり右回りが圧倒的に多いことや、地方による違いではないことが分かります。また、地方競馬をみても右回りコースは10か所、左回りコースは5か所と右回りが多いようでした。
ちなみに、大井競馬場は地方競馬ながら現在「世界で唯一の左右回りコース」を持つ競馬場となっています。一つの競馬場で異なる方向のレースがあると、幅のある展開がみられそうですね。
理由①ヨーロッパを参考にしたから
日本の競馬場に右回りが多い理由として、よく挙げられるのが「ヨーロッパの競馬場を参考にして作ったから」というものです。たしかに、フランスの大きな競馬場やイギリスで古くから親しまれている競馬場には右回りが多いようなので、こうした競馬場の構造を参考にした可能性はありますね。
理由②最初の競馬場が右回りだったから
日本で最初に近代的な競馬場ができたキッカケは、1859年(安政6年)の横浜港開港。それまでも国内では競馬(くらべうま)と呼ばれる和式競馬が行われてきましたが、開港により港町の周辺に外国人が住むようになり「日本でも自国の娯楽を楽しみたい」という気持ちから近代競馬が紹介されたともいわれています。
しかし、そう考えると必ずしも日本に競馬を紹介したのはヨーロッパの国々ではなくアメリカだった可能性も。実は、アメリカでは現在も人間のトラック競技と同じく左回りの競馬コースが主流です。そこで、もう一つ考えられる右回りの理由は「外国を参考にしたのではなく最初に作った近代競馬場が右回りだったから」というもの。
日本で最初に作られた横浜競馬場は、左回りにするとゴール直前が上り坂になってしまう地形だったといわれています。その対応策として出されたのが、逆回りにすることでゴール位置を変えるという案。今も昔も「ゴール前は直線かつ平地で全速力の馬が競り合うのを見たい!」という観客の気持ちは同じなのかもしれませんね。
その後、横浜競馬場は1943年に閉場されましたが、日本で最初の近代的な競馬場が後に続く競馬場の構造に影響を与えた可能性は大きいと考えられます。
右回りと左回りがある理由
では、なぜ競馬場のコースはどちらかの回転方向に統一されないのでしょうか?正解は分かっておらずさまざまな理由が考えられますが、主な理由をまとめました。
もともとの地形の違い
敢えて起伏のあるコースにしている競馬場もありますが、横浜競馬場の例にもあるように「ある程度の長さの直線を確保したい部分」「平坦であって欲しい部分」もあります。現在では重機を使用して地形を調整することも可能ですが、競馬場のなかには古い歴史を持つものもあります。このような場合に、もともとの地形や地質を考慮して設計すると適した回転方向にばらつきが出たのかもしれません。
馬にも得意不得意があるため
人にも右利き・左利きがあるように、馬も左右の運動のバランスが全く同じわけではありません。骨格や筋肉の微妙なバランスやくせによって、右回りが得意な馬もいれば左回りのほうが速い馬もいます。そのため、どちらの馬も活躍できる可能性があるようにコースの方向を統一していないとも考えられます。
競馬の予測を見ると、回る方向だけでなく地面がダート(土)か芝か、地面の湿り具合などの情報が注目されているようですね。さらに細かく見れば、競馬場の芝や砂の種類も統一はされておらず、それぞれ芝の種類や砂の目の粗さなどは異なります。こうした環境に敢えて規定を作らないのは、さまざまな状況を得意とする馬がそれぞれ適したレースで力を発揮するためかもしれません。
記録を出すことが目的ではないため
人間の陸上競技などでは、規定された状況下でより速く走ることが主な目標となります。確かに競馬でも、より速く走るために日々馬たちや調教師・騎手たちは努力とトレーニングを続けています。
しかし、競馬には娯楽・賭博としての面があるため、結果が予測しやすいことや一頭が圧倒的な強さを誇ることは良いことばかりとはいえません。こうした背景も、競馬場の環境が画一化されないことに深く関わっている可能性があります。
まとめ
普段たくさん競馬を見る人でなければ、競馬のコースに右回りと左回りがあると気付かないかもしれません。しかし、コースに目を向けてみると実は競馬場ごとにいろいろな違いがあることが分かります。みなさんも、もし競馬を見る機会があれば回っている方向やコースの起伏、地面の状態などにも注目してみてくださいね。