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馬の生産牧場でのお仕事

競走馬や乗用馬の多くは、今いる厩舎で生まれたのではなく生産牧場と呼ばれる場所で生まれます。今回の記事では、この生産牧場とはどのような場所なのか、どの季節にどのような作業をして、1日のうちにはどのようなお世話をしているのかなどを紹介します!

生産牧場とは?

馬の生産牧場でのお仕事

日本では、乗用馬(乗馬のための馬)の多くは競走馬を引退した馬です。一部はもともと乗用馬として育てられた馬ですが、こうした馬は外国から輸入されていることも多いでしょう。そのため、今回は競走馬の生産牧場について紹介していきます。

競走馬として活躍している馬は、生まれてから離乳するまでを生産牧場で過ごし、1歳でセリに掛けられて育成牧場へ移ります。育成牧場で人が乗るための訓練などを受けた後、翌年の春から秋にはトレセン・競馬場の厩舎へ。

このうち、生産牧場では馬の種付け・出産・離乳までの管理を行っています。しっかりと管理すると同時に、お世話を通して馬に「人に従うこと」「人に慣れること」などを教えていくことも大切な仕事の1つです。

騎乗技術や資格は必要?

馬の生産牧場でのお仕事

馬の生産牧場で仕事をするためには、馬の種付けや出産・世話について様々な知識と経験が必要です。しかし、法的に「この資格がないと従事してはいけない」という決まりはありません。

そのため、生産牧場では乗馬経験や専門知識をすでに身に付けた人材を採用することが多いですが、なかには入職してから知識を身に付け経験を積んでいけば一切未経験でもOKとしている牧場もあるようです。

ただし、そうは言っても入職前に専門的な知識を身に付ければ牧場側にとって即戦力に近づきますし、働く本人も安心感があるはずです。

そのため、日本軽種馬協会では馬に携わったことのない人が牧場で働くために一定水準の知識を身に付けることを目的とした研修(JBBA生産育成技術者研修)を行っています。気になった方はWebサイト等を確認してみてくださいね。

入職してからも研鑽は必要

馬は生き物であり、個体差もあれば環境や人の影響も受けます。そのため、基礎的な知識があっても馬のお世話や業務で行き詰まることはあるはずです。

また、馬の種付け・出産に関する技術や馬の体調管理についても、日々進歩しています。そこで、日本競走馬協会や競走馬育成協会では就職後のキャリアアップを支える事業も行っています。

1年の流れ

馬の生産牧場でのお仕事

生産牧場への就職前や、就職後に受けられる研修について少しイメージできたでしょうか?では、実際に生産牧場で働くとどの季節にどのような仕事をするのか見てみましょう。

冬~春

馬の出産は、早春から初夏にかけて。そのため、冬のあいだは妊娠中の母馬のお世話が業務の中心となります。出産まで運動不足にならないように気を付けながら体調管理を行い、出産が近くなったら破水などの兆候にも注意していきます。

春~夏

出産が始まると、スタッフは交代で立ち合います。生まれてきた仔馬に体調の変化などがあればすぐに対応できるように、しばらくは特に気を配って健康状態を観察します。

まだ幼い仔馬には母乳をしっかり飲むこと・十分な休息を取ること・よく体を動かすことがとても大切です。そのため、それぞれの時間が過不足ないように管理をしていきます。

また、夏は馬のお世話以外にも大切な業務があります。それは、牧草の収穫と乾燥。冬場に馬たちが食べる牧草は、草が成長する夏場に刈り取って日干ししたものです。

夏~秋

自由にたくさん身体を動かすことも大切ですが、夏ごろからは引き馬が始まります。引き馬は、仔馬が人間を信頼して指示に従う練習。主に、放牧に出す際や、放牧から馬たちを戻す集牧の際に行います。

この頃からオーナーが決まっている仔馬もいますが、そうではない仔馬は秋ごろにセリに出します。そのためにも、引き馬でしっかりと人に従って歩けることや、同時に自分のバランスで歩けることが大切です。

1日の流れ

馬の生産牧場でのお仕事

最後に、1日の流れを簡単に紹介します。流れは牧場によっても異なるため、今回紹介する流れはあくまでも一例です。気になる牧場・働いてみたい牧場がある方は、実際に直接確認してみるのも良いかもしれません。

飼い(エサ)

昼のみ放牧を行っている牧場では、最初の業務として飼い(エサ)をあげることが多いでしょう。食べ残しがないか、食べているときの様子はどうか観察することが馬の健康状態を知るヒントになります。

馬たちがゆっくり食事を食べている時間は、全身の状態を確認するチャンスでもあります。食べているあいだに検温などを済ませる牧場も多いでしょう。

放牧

食べているあいだの健康チェックで問題なければ、食後から馬を放牧します。馬の多い厩舎では、夜に放牧できる体力の付いた馬は夜間に、まだ幼い子馬と母馬は昼間に放牧する場合もあります。

夜に放牧する場合には朝飼いの前に集牧して、馬たちが朝ごはんを食べているあいだに「放牧中にケガをしたり体調不良になっていないかな」と全身状態を確認します。

馬房の掃除

馬を放牧に出しているあいだの主な業務は、空いた馬房の掃除です。ボロ(フン)を回収するほか、新しいオガなどを入れて馬が帰ってくる時間に備えます。また、寝藁を使用している牧場が多いため、ワラを日の当たる場所に干すなどの作業をする場合もあります。

干したワラは、馬を集牧する前に馬房に戻しておきます。出かけているあいだにお布団が干されて良い具合に乾燥しているなんて、きっと馬たちも快適と感じているでしょう。

馬体のお手入れ

午後、時間を見ながら集牧を始めます。馬は放牧中に地面に寝転んだりしていることもあるため、集牧した後はブラッシングなどのお手入れをして衛生を保つことが重要です。見た目を整えるだけでなく、お手入れの際に皮膚や蹄の状態もよく観察します。

一日のお手入れなどが終わったら、夜飼い(夕食)を行って一日の業務はおおよそ終了です。こうした個々の馬のお手入れのほか、時期によって種付けを当番制で行うなど生産牧場ではさまざまな業務を行っています。

まとめ

生産牧場での仕事は、馬の妊娠・出産に関わるほか、生まれた仔馬が健康に過ごし人を信頼できるように「馬の心身の基礎」を作っていく仕事とも言えます。研修制度などもあるので、乗馬未経験だけれど馬に関わる仕事がしたい!という方はぜひチェックしてみてくださいね。

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