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【馬の蹄を守る】蹄鉄の大切な役割

馬にとって何より大切な肢。
中でも蹄は体重を支え、地面を蹴り、血流のポンプの役割を持つ重要な器官です。
「蹄なくして馬なし」といわれるほど大切な蹄を守る蹄鉄。
今回は、蹄鉄の役割や蹄への付け方についてご説明します。

馬の蹄はどんな器官?

【馬の蹄を守る】蹄鉄の大切な役割

蹄の構造

馬の肢は人間では中指に該当し、蹄はその爪にあたります。
表面は角質で覆われ、人の爪と同じように少しずつ、下に向かって伸びます。
伸びる早さは1ヶ月におよそ8ミリで、蹄が伸びるほど前方の角度は小さくなり、この状態を「蹄がねている」と表現することも。

角質には血管や神経は分布していませんが、その内部には血管、神経、骨があります。

蹄は前方から蹄尖(ていせん)、蹄側(ていそく)、蹄踵(ていしょう)に分けられます。
蹄尖と蹄側の内部には骨があり、厚い蹄壁と結合しているため硬く、蹄踵は蹄壁が比較的薄く、内部は軟かい組織でできています。

蹄の裏側の中央には蹄叉(ていさ)という三角形の部位があり、人では中指の腹に該当します。
蹄叉は少し柔らかいため、石などを踏んで傷つく場合もありますので、裏掘りをする時には異常がないか必ず確認しましょう。また、裏掘りをしながらてっぴで傷つけないよう、注意しましょう。

【馬の蹄を守る】蹄鉄の大切な役割

蹄機作用

蹄の内部の血管は心臓から遠く離れているため、血液の循環が滞ってしまうことがあります。
蹄は体重がかかると主に蹄踵が広がり、かからないと縮む蹄機という動きをしますが、これがポンプのように働くことで末端の血行を促進することができます。
また、着地の時に肢にかかる衝撃を吸収することもできます。

蹄の内部で血液循環が滞ると、蹄葉炎という蹄の病気の原因になることもあります。

蹄鉄とはどのようなものか

【馬の蹄を守る】蹄鉄の大切な役割

素材

金属製のものが多く、乗用馬は鉄、競走馬はアルミニウム合金のものが多く使われています。

かつて競走馬では、調教時には重く耐久性のある鉄製の調教鉄、レース時には軽く耐久性に欠けるアルミニウム製の勝負鉄に蹄鉄を替えていました。これは頻繁に装蹄を行う必要があるため、蹄が釘穴だらけになってしまうという問題があります。
そこで、調教とレースの両方で使うことができる軽くて丈夫な兼用鉄が作られ、現在はほぼ100%の競走馬がこれを使っています。

海外では中世以降に蹄鉄が使われていたという記録が残っており、イギリスでは12世紀には鉄製のものが使われていました。

日本では戦国時代に九州の一部で蹄鉄が使われた記録がありますが、日本の馬は蹄が丈夫なため、普及しなかったようです。その代わりに、馬用のわらじなどを履かせていました。
明治になって海外から馬と蹄鉄が導入され、特に軍馬では欠かせないものになりました。

多くは馬蹄形、後ろ側が開いているU字型をしています。

後ろ側が開いていないO字型の連尾蹄鉄は、屈腱炎や裂蹄など、肢や蹄に問題がある場合に使われます。

また、蹄鉄の裏に横向きのバーをつけた鉄橋蹄鉄は、傷付いた蹄底を保護するために使います。

蹄鉄の役割

【馬の蹄を守る】蹄鉄の大切な役割

野生の馬はもちろん蹄鉄を付けていませんが、なぜ人に飼われている乗用馬や競走馬、使役馬は蹄鉄を付ける必要があるのでしょうか。

野生の馬は草原などで暮らし、運動量を自分でコントロールすることができます。蹄は1ヶ月に8ミリほど伸びますが、生きるために移動する中で自然に削れるため、蹄を削ったり保護したりする必要はありません。

人に飼われている馬は、一般的には野生馬より運動量や負荷が大きく、蹄が伸びる速度よりも削れる速度の方が早いため、蹄を保護しなければなりません。
また、屋内で飼われていると、水分やアンモニアで蹄が弱くなることもあります。
そのため蹄鉄をつける必要がありますが、蹄鉄が劣化し、蹄が伸びて蹄鉄がフィットしなくなることから、定期的に蹄を削って蹄鉄を交換する必要があります。

人に飼われていても、運動量が少ない場合や飼われている環境などによって、蹄鉄を必要としない馬もいます。

装蹄と装蹄師について

【馬の蹄を守る】蹄鉄の大切な役割

蹄鉄を馬の蹄に付けることを装蹄、装蹄を行う人を装蹄師といいます。

競走馬では2~3週間、乗用馬では1ヶ月~1ヶ月半を目安として装蹄を行いますが、蹄の伸び具合や蹄鉄の摩耗状況などによって調整します。

削ったり、釘を打ったりするのは血管や神経がない角質の部分で、馬は痛みを感じませんので安心してください。

装蹄の手順

① 古い蹄鉄を取り除く:蹄の表面に出ている釘を切り、蹄鉄を外します。
② 削蹄:伸びた蹄を削り、形を整えます。蹄の形や角度によって肢への負荷が大きく変わるため、とても大切な工程です。
③ 新しい蹄鉄を調整:削った蹄の形に合わせて蹄鉄を成形します。蹄鉄はサイズごとに大まかな形ができていますので、高温で熱し、叩いて形を変え、蹄の形に合わせます。蹄が特殊な形をしている場合は、真っ直ぐな金属の棒を曲げて蹄鉄を作ることもあります。
④ 蹄鉄を釘で蹄に取り付ける:蹄鉄を正しい位置に専用の釘で打ち付け、蹄壁に突き抜けた釘の先端を切り、折り曲げて抜けないように固定します。
⑤ 仕上げ:全体をヤスリで整えます。

装蹄師

以前、装蹄師は国家資格でしたが、現在は民間資格になっています。

(公社)日本装削蹄協会の認定装蹄師の資格試験を受験するためには、同協会が開催する装蹄師認定講習会や研修会を受講しなければなりません。講習期間中と修了後に実施される認定試験に合格し、認定申請を行って資格審査会で認定を受けると資格を取得することができます。

認定装蹄師の資格には、2級、1級、指導級の3つのグレードがあります。
1級は2級の資格を取得して4年以上を経過してから研修会を受講、昇級試験に合格したら認定申請、資格審査会で認定を受けます。

指導級は1級の資格取得後9年以上を経過してから研修会を受講し、他と同様の手続きで資格を取得することができます。

まとめ

どんなに能力がある馬でも、蹄に問題があるとその能力を発揮することができません。それだけでなく、蹄の病気が悪化すると、残念ながら命を落としてしまうことも。
大切な蹄を守るためには、いかに早く異常を発見できるかが重要です。
歩き方に違和感を感じたり、蹄の手入れをしている時などに異常を見つけたら、すぐにスタッフに相談しましょう。

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