【相性はどう?】馬と犬は仲良くなれる?
乗馬クラブへ行くと、看板犬がいることが多いですね。クラブのHPで、スタッフとして紹介されているのをしばしば目にすることがあります。看板犬は大型犬が多いように感じますが、性格が臆病な馬との相性は良いのか気になるところです。今回は、馬と犬の相性などについてまとめました。
馬と犬の大きな違い
馬と犬との一番の大きな違いは、何といっても生態的地位の違いでしょう。
生態的地位はニッチとも呼ばれ、その生物が生態系の中で占める位置や役割のことで、具体的には食物と生息場所のことです。
馬は草食動物なので、自然界では肉食動物に食べられる被食者として存在してきました。捕食者である肉食動物から逃れるために常に周囲を警戒し、捕食者から逃げることでその種を維持してきたのです。
ちょっとした音にも敏感に反応して、馬が過剰なほど怖がる様子を目にすることがあります。それこそが地球上で長い年月の間「ウマ」という種を維持することができた理由でもあるのです。
それに対して、犬はオオカミを祖先に持つ動物です。肉食動物であるオオカミは、獲物である動物を追いかけるという、捕食者としての追跡本能が強い動物です。犬もまたオオカミ同様、追跡本能が強い動物なのです。
似ているところはある?
馬と犬はそれぞれ被食者と捕食者という立場から、本能的に真逆な行動をする動物です。
似ているところはなさそうに思いますが、実はどちらも非常に賢く、異種の動物と交流する能力が高いと言われています。
馬も犬も、その能力のおかげで人との良好な関係を築き、私たちと社会環境を共有してきた長い歴史があります。
意思の疎通は?
馬も犬も共に知性が高く、社会性があり、訓練が可能な動物です。
注意をしながら少しずつ引き合わせることによって互いに寛容になり、一緒にいることを好むようになります。異種の動物間でも、コミュニケーションを取ることができるのでしょうか?
実は馬と犬は、遊び方が非常によく似ているそうです。
そのことに注目したピサ大学の動物行動学者エリザベッタ・パラージ博士は、馬と犬の意志疎通についての研究をおこないました。
この研究結果は2020年、学術誌「Behavioural Processes」5月号に掲載されています。
パラージ博士は、馬と犬の遊び方が非常に似ていることから、「遊び」が意思疎通のツールとなり、種の壁を越えたコミュニケーションをとることができるのではないかと考えました。
甘噛みをしたり、体をぶつけあったり、地面に転がって遊ぶ動作は、馬にも犬にも見られるためです。
パラージ博士が馬と犬が一緒に遊ぶ動画を分析したところ、非常に興味深い動作が馬にも犬にも見られることを発見しました。
それは「表情模倣」です。
「表情模倣」とは、「リラックスして口を開けて見せる」行動で、同種動物間におけるコミュニケーションと意思疎通の動作です。相手に対して敵意のないことを示し、友好関係を築くためにおこなう行動と言われています。しかも、馬と犬は互いの表情を素早く真似する「高速表情模倣」をおこなっていました。
「表情模倣」が共通言語として用いられ、異種の動物が意思疎通を図っていたことは、動物行動学の分野にとって大きな発見でした。
長い年月の間、食う食われるの関係にあった異種の動物間に共通言語があることは、科学者たちにとっても驚くべきことだったのですね。
お手柄看板犬に感謝状!
2023年5月、読売新聞に興味深い記事が掲載されました。
千葉県若葉区の乗馬クラブ「千葉ライディングパーク」で飼われている5歳の雌犬「小梅」が、クラブ会員の男性が倒れているの発見して助けを呼んだとして、消防署から感謝状が贈られました。
倒れた男性会員の異常を察知し、数分間吠え続けた小梅の声を聞きつけたスタッフによる迅速な対応で、男性は一命をとりとめることができました。この男性は後遺症もなく、現在もクラブで乗馬を続けているそうです。
乗馬クラブのスタッフによると、小梅は大人しく普段はめったに吠えないそうです。しかし、以前にも馬が柵を越えて逃げようとした時や、老衰で立ち上がれない馬を見つけた時など、有事の際には大きな声で吠え続けたそうです。
小梅が緊急事態の際に人の役に立つことができたのも、犬が持っている高いコミュニケーション能力のおかげだったのでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
皆さんも通っている乗馬クラブで、馬と犬が仲良くしているのを目にすることがあると思います。今回、異種間でも互いにコミュニケーションを取り、仲良くできるということがわかりました。
馬も犬も、他の動物との交流が十分可能な動物だからこそ、長きに渡り人とも良好な関係を築くことができたのでしょう。