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色々と不思議な馬の歯について

馬の前歯を目にする機会は多いですが、実は見えている歯はほんの一部!今回は、そんな「馬の歯」に焦点を当てて本数・種類・役割などを解説していきます。後半では馬のデンタルケアについても紹介するので、ぜひ読んでみてくださいね。

本数や構成

色々と不思議な馬の歯について

初めて馬の歯を見た方は「意外と鋭くて怖い」「馬って前歯しか無いのかな…」など、色々な感想を持つと思います。まずは、馬の歯の本数や種類について見てみましょう。

歯の種類と役割

馬が柵をかじったり、口を開けたりしたときに見える歯は門歯(切歯)といいます。地面に生えた草をちぎって食べるために、門歯の先端はまっすぐに揃い厚みは薄くなっているのが特徴です。ちょうど、毛抜きのような感じですね。


一方、奥に生えていて普段はほとんど目にする機会がないのが臼歯です。人間の奥歯と同じく上下の歯が接する面は広く、草をすりつぶすように細かくします。ちなみに、馬は同じく草食動物であるウシと違って反芻(はんすう)ができません。そのため、飲み込む前に食べ物をとてもよく噛むそうです。

馬の歯は40本前後

健康な牝馬の門歯は12本、臼歯は24本の臼歯があるので歯は合計36本。ですが、雄の馬は36本の歯に加えて4本の犬歯があるため歯は全部で40本になります。


さらに、3頭に2頭ほどの割合で、1歳を過ぎると狼歯と呼ばれる歯が生えてくる馬もいるそうです。狼歯は左右の上顎に生えることが多いそうなので、これを混ぜると歯が42本ある馬もいるということになります。


ただし、狼歯はちょうどハミに当たりやすい部分に生えてくることが多いので、ほとんどの場合は見つかり次第馬抜歯します。途中で生えてきて、邪魔なので抜歯されてしまう…という扱いは、人間の親知らずと少し似ていますね。

歯槽間縁ってなに?

色々と不思議な馬の歯について

乗馬をしている方は、頭絡を付けるときに見たり触れたりしたことがあると思いますが、馬は顎の中程に歯が生えていないエリアがあります。このエリアが歯槽間縁(しそうかんえん)です。馬だけでなくウシ・ヤギ・ウサギなどにも歯槽間縁がありますが、実は何のためにあるのかはっきり分かっていないそうです。

一説には「臼歯ですりつぶすことができなかった硬いものをここから出すのではないか」と言われています。しかし、あまり草食動物が噛めなかったものを吐き出しているイメージはなく、馬たちが一生懸命エサを食べているあいだ口のなかでどのようなことが起きているのかは謎のままです。


謎の「歯槽間縁」ですが、私たちが馬に乗ることができるのは、この隙間にちょうどハミが入るから。昔の人も、ハミがぴったり入る位置に歯槽間縁があることを知って「馬は神が人間に与えた乗り物だ」と言ったそうですが、なんだか不思議ですね。


歯槽間縁を持った動物はたくさんいますが、馬のようにハミで指示を受けて器用に動き、成人を背中に乗せても高い運動能力を発揮できる動物はなかなかいません。私たちが乗馬をできるのは、歯槽間縁と、馬たちの身体構造・穏やかな気性があってのことというわけです。

デンタルケアについて

色々と不思議な馬の歯について

馬の歯に問題が起きると食が細くなったり、よく噛まずに飲み込んで消化器の不調をきたしたりしてしまうこともあります。そのため、馬の健康を守るには歯の健康がとっても重要!では、歯の健康を保つために、どのようなデンタルケアを行っているのでしょうか?

馬も虫歯・歯周病になる

馬の世話といえばブラッシング・丸洗いなどですが「そういえば歯磨きは必要なのだろうか…」と疑問に感じた方もいるはずです。

たしかに一部の乗馬グッズショップでは馬用ハミガキを販売していますが、馬は繊維質なエサをたくさん噛んで食べているため、基本的には歯磨きをしなくても問題ないといわれています。しかし、歯並び・狼歯の位置などによっては食べ物が詰まりやすくなることも。

このような状態になると馬も歯周病や虫歯になることがあります。対策としては、歯磨きをするのではなく、物が詰まらないように整歯をしたり狼歯が原因であれば抜歯などを行います。。

馬のデンタルケア「整歯」とは?

人間の歯医者さんでは聞くことのない言葉ですが、整歯とはいったいどのようなケアなのでしょうか?このケアには、人の歯とは異なる「馬の歯の特徴」が深くかかわっています。


馬の歯は、1年に2~4mm程度の速度で少しずつ伸びています。そして、日々たくさんの草を咀嚼することで、少しずつ表面が削れます。そのため、たとえば虫歯になったとしても人間のように治療をするのではなく、自然に虫歯の部分が削れて無くなっていくことが多いといわれています。


治療せずに悪い部分が無くなっていくという点では「歯が伸びる」というのはとても便利な特徴です。しかし、飼育下の馬は野生の馬よりも咀嚼時間が短いため、歯が十分に摩耗せず部分的に伸びすぎてしまうことがあります。


この伸びすぎてしまった部分を削って、形や長さを整えるケアを「整歯」といいます。もちろんプロでなければ難しい作業なので、獣医師・大型動物専門の歯科などにケアを依頼する場合が多いでしょう。

ケアの頻度

馬は5歳までに歯の状態が整うといわれています。それまでは、歯の生え変わりなどもあり頻繁な観察・治療が必要となるため1年に3~4回の口腔チェック・ケアを行ったほうが良いといわれています。


また、5歳を過ぎると口の中の状態は変化しにくくなるため、ケアの頻度も1年に1回ほどに減らして良いでしょう。歯の不調はハミ受けの悪さにもつながるため、競馬界では特に歯のケアがしっかり行われるそうです。


もちろん乗用馬たちも歯の定期検診を受けたほうが良いのですが、馬専門の歯科はまだまだ少なく「不調に気付いてから獣医師に診てもらう」という乗馬クラブも多いかもしれませんね。

まとめ

馬の口腔内は人間と違う部分もありますが、歯周病・虫歯になるという点では人間と同じです。また、人間とは異なり歯が徐々に伸びるため、定期的に形を整えることで噛み合わせを整えることができるといわれています。

歯の状態は馬のパフォーマンスや全身の健康にも関わってくるため、定期的に専門家によるデンタルケア・検診を受けてみてはいかがでしょうか?

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