【グイッポ知ってる?】馬の6つの癖
何となく貧乏ゆすりをしたり、ペン回しをしたり、頬杖をついたり。人間にも癖ってありますよね。そして、その癖から性格や深層心理を探ってしまうこともあるのではないでしょうか。
馬も人間と同じように癖があり、その癖が個性になることもあります。今回は馬の癖について解説します。
馬の癖2分類
「無くて七癖、あって四十八癖」という言葉があります。これは、人間の癖は無さそうでも7癖、有る人は48癖あるという意味で、多かれ少なかれ癖があるということです。
人間の癖には、毎晩お酒を飲む癖、食後にゴロゴロする癖など止めた方がいい癖や、嘘をつくときに鼻をさわる、恥ずかしいときに頭をポリポリかくなど矯正しなくてもよい癖があります。
では、馬はどんな癖があるのでしょう。馬の癖は大きく分けて2つあります。一つ目は、欲求や恐怖など理由があるもので「異常行動」とか「悪癖」などともいわれます。
そして二つ目は、理由がなく繰り返される行動で「常同行動」ともいわれます。
異常行動・悪癖の4種
「異常行動」についてはその行動の理由がわかる分、矯正することが可能と考えられています。また、「悪癖」とまでいわれてしまうと、治した方がよさそうですよね。
ここからは具体的な異常行動、4種を解説します。
咬癖(こうへき)
咬癖とは、人間や他の馬のことを咬む癖のことをいいます。攻撃的な馬によくみられる癖ですが、そうでない馬でも人間との信頼関係がこじれているときや、食事中に近づくと威嚇のために咬んでくる馬もいます。
他にも人間に甘えてじゃれているときに、うっかり咬んでしまう馬もいるのでどんなときにも注意が必要です。
また、人間や他の馬ではなく自分を咬む馬もいます。この場合は、「身っ食い」と呼ばれます。人間でいう自傷行為と同じようにストレスが原因のものもありますし、退屈なため咬んでしまうこともあります。
馬の歯は尖っているわけではなく噛みちぎることはありませんが、硬い人参やリンゴをそのまま噛み砕くことができるほど力があります。場合によっては咬まれて骨折をしてしまうこともあります。
咬まないように矯正することも大切ですが、咬まれれば人間も馬も怪我をするので予防も必要です。
蹴癖(しゅうへき)
人間や他の馬を蹴る癖のことを蹴癖といいます。馬が蹴る理由としては、視界が広い馬ですが真後ろは死角となり、そこに何か気配を感じたときに身を守るために本能的に蹴ることがあります。この場合の予防策として、馬の視界に入る位置から優しく声をかけながら近づくと蹴られることが回避できます。
また尻尾に赤いリボンを付けた馬を見たことがありませんか。あのリボンはオシャレのためではなく、「蹴る癖があるから気を付けて」と、周りに知らせるための印なのです。
もちろん、その危険な癖は矯正する方がいいのですが、周りがそのことを知ることで距離をとるなどの対処をし、危険や事故を回避することができるようになっているのです。
膠着(こうちゃく)
膠着とは、馬が極度の緊張や何か物をみることで驚いて動かなくなったり、騒いだり、横に飛んだりする癖をいいます。
例えば、馬場に出た後、騎手の指示にまったく従わずに動かなくなってしまうことがあります。これは競馬の世界でもあることで、ゲートが開いても発進しないことがあるのです。
緊張が原因のこともあるので、その場合は優しく声をかけて落ち着かせてあげましょう。
後退癖(あとびき)
後退癖とは馬を繋ぐときや運動のときにでる癖で、何かが嫌だったり、驚いたりしたときに後ずさりをするように後ろに後退していく癖です。
その時に不意にお尻や後ろ肢が何かに触れるとさらに驚いてしまいます。
このときも馬が安心できるように優しく声をかけてあげましょう。
常同行動2種
常同行動については、人間でいう貧乏ゆすりやペン回しのように特に意味も理由もなくやる癖で、その行動により快感を感じたり、ストレス解消につながることがあります。
理由がないため矯正することが難しいとされています。ここからは馬の常同行動として代表的な「熊癖(ゆう癖)」と「さく癖」について説明します。
熊癖(ゆう癖)
熊癖とは「ふなゆすり」とも呼ばれ、馬房の中で前肢を広げて身体を左右に大きく揺らす癖のことをいいます。
ここでこのような疑問を持ちませんか。「馬」なのになぜ「熊」が付くのか。
実は熊も檻の中でこのような動きをするようです。そしてそこから、「熊癖」という名前が付きました。
これはよく馬房の中でみられ、退屈しのぎでやり始めたり、他の馬がやっているのを見て真似をして始めるケースが多いようです。
この癖がある馬は、姿勢を悪くしたり、蹄の形が悪くなったり、前肢の腱を痛める原因にもなるため、競走馬としては嫌がられる癖の一つです。
人間と同じように、癖がつくと直すのが大変です。癖になる前に叱るなどして止めさせるように努力することも大切です。
また、退屈しないように運動に連れ出すことも重要です。
さく癖(グイッポ)
さく癖とは、馬房の中で飼い桶や壁板などに上の歯を押し当てて空気を飲み込む行為で、その音から「グイッポ」とも呼ばれています。
これも退屈なときに覚えてしまったり、他の馬がやっているのを見て真似して始めるケースが多いようです。
さく癖も人間や他の馬に危害を加えるわけではありません。しかし、空気を飲み込むことで腸内にガスが溜まり、風気疝という馬の腹痛を引き起こす原因になります。馬が腹痛(疝痛)を起こすと、最悪の場合は死に至ることもあるので注意が必要です。
また、空気を飲み込みことで栄養不良になることもあります。
矯正するかしないか?
馬の癖の始まりは恐怖心や欲求不満、単なる他の馬の真似からのものになります。最初は小さな行動ですが、それが習慣化して「癖」になります。
人間も癖になったものを矯正するのは、ストレスが溜まりますし、一苦労だと思います。しかし、「健康に悪いから」「行儀が悪いから」ということで矯正されたり、自分で矯正した癖もあるのではないでしょうか。また反対に、そのまま個性として残っている癖もあると思います。
馬も癖によっては矯正するもの、個性として残していいものがあります。その基準は一概には言えないくらい、難しいものです。
矯正するもの
異常行動、悪癖ともいわれる咬癖や蹴癖など、人間や他の馬に危害を加える恐れがある癖は矯正した方がいいですよね。
一方、常同行動の熊癖やさく癖は人間や他の馬に危害を加えることがありません。また快感に結びついたり、ストレス解消になっていることもあるため、無理に矯正する必要はなく、その馬の個性として付き合っていく考え方もあります。
しかし、熊癖は肢を痛める原因に、さく癖は疝痛の原因にもなることから、矯正した方がいいという考え方もあります。
矯正の方法
癖になる行動のきっかけは、人間への不信であったり、恐怖心やストレスだったりすることがあります。
そのため、優しい声掛けや適度な運動など馬との関わり方を見直すことも必要です。
またそれぞれの癖を矯正する方法として、具体的な方法や道具もあります。例えば、さく癖がある馬に対しては、口にカゴを付けたり、顎にバンドを巻くこともあります。
まとめ
人間にもそれぞれ癖があって個性があるように、馬も同じように癖があって個性があります。
しかも、人間の癖の中には健康や行儀が悪いという理由から、矯正する必要がある癖があるように、馬にも矯正が必要な癖があります。
例えば、人間や他の馬に危害を加えるような咬癖や蹴癖については矯正するべきです。またこのような癖は、異常行動や悪癖とも呼ばれ、理由や意味があるため矯正しやすい癖ともいわれています。