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【主役は馬】日本の三大馬祭り

馬と人間は昔から助け合って生きてきました。機械のなかった時代も馬たちの力を借りて、日本人は農業や林業を効率よくこなしてきたのです。そのころからの名残で、今も日本の各地で馬に関係のあるお祭りがたくさんあります。今日はその中から、有名な3つのお祭りを取り上げます。

福島「相馬野馬追」

戦国絵巻から飛び出してきたかのような「相馬野馬追」は福島県相馬地方で行われる国の重要無形民俗文化財のお祭りです。そのルーツは平安時代中期までさかのぼります。天皇の血筋を引き継いだ武士・平将門が馬を放ち、敵兵とみなして軍事訓練を始めたことに由来します。平将門は相馬野馬追で代々、総大将を務める相馬家の遠縁であるとされているそうです。

お祭りは今年まで7月の最終土曜日〜月曜日の3日間にかけて行われていました。来年2024年からは馬や人間の熱中症予防のために、5月の最終土曜日〜月曜日での実施が決定する見込みです。

野馬追は甲冑を着た騎兵たちが3日にわたって、さまざまな行事を行います。スケジュールや見どころを簡単にご説明しますね。

1日目 出陣式~総大将お迎え~宵乗り

相馬野馬追は出陣式からはじまります。出陣式は相馬中村神社・相馬太田神社・相馬小高神社の各妙見神社で行われますが、総大将のいる相馬中村神社では、一層、厳かに執り行われます。参拝をし、出陣式が終わると、各陣営が出陣します。北郷陣屋で、総大将お迎えの儀式を行い、祭場地まで進軍していきます。その後、相馬太田神社宮司が馬場清めの式を行い、1日目を締めくくる、宵乗りに。宵乗りでは、白鉢巻に野袴・陣羽織で草競馬をします。

2日目 本祭り(お行列~甲冑競馬~神旗争奪戦)

お祭りは朝早くから始まります。9:30ごろには騎馬隊が町中から、祭場地まで行列を作って進軍します。その後、甲冑競馬が始まります。まるで武士が競馬をしているのを目の前で見るような錯覚に陥るほど、ものすごい迫力。その後はお祭りのクライマックスともいうべく神旗争奪戦が行われます。高く上げられた神旗を数百組にものぼる人馬が奪い合うさまは、まるで古の戦場を見ているかのよう。神旗を得て、本陣へ報告するために山を駆け上がる人馬の嬉しそうな様子がまた素敵です。

3日目 野馬懸

野馬懸は、神様にみあった野生の馬を捕まえて奉納する神事で、昔の名残を唯一残しており、古式にそって行われているとのこと。実は野馬懸こそが、野馬追が国の重要無形民俗文化財に登録された理由だとも言われています。野生馬を小高神社境内に放して、御小人と呼ばれる若い人が白鉢巻・白装束といういでたちで、馬の群れに飛び込みます。「駒とり竿」で、馬に印をつけ、その馬を御小人が捕えます。その最初に捕えた馬を神馬として奉納します。

お祭り期間中は車も渋滞しがちですが、この3日間は「馬が主役」。お祭りの荘厳さや美しさもさることながら、頑張る人馬のペアやそれを支える地域の方を見ていると、とてもほっこりするお祭りでもあります。ただし、行列の前を横切ったり、高いところから見下ろすのはご法度ですよ!

岩手「チャグチャグ馬コ」

岩手県滝沢市で行われるのが「チャグチャグ馬コ」。「ちゃぐちゃぐうまっこ」と読むそうです。200年以上の歴史のある農耕馬への感謝を示すお祭りです。昔は旧暦の端午の節句に行われていましたが、現在では毎年6月の第2土曜日に行われています。100頭ほどの馬たちが色とりどりの鮮やかな装束を身に着け、鬼越蒼前(おにこしそうぜん)神社で参拝したのち、盛岡八幡宮までの14キロほどをパレードします。

このお祭りは、文化庁の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選ばれています。また、お祭りの名前の由来にもなった「チャグチャグ馬コの鈴の音」は「残したい日本の音風景100選」に選出されています。

岩手は昔から馬産地として名をはせていました。江戸時代前は軍用馬の生産が盛んでした。江戸時代以降は、人間の仕事のパートナーとして生産されるように。そのため、この地方では、馬を家族の一員として大切にする文化がありました。その文化の象徴とも言える「南部曲がり家」では、馬と人間が一つ屋根の下、暮らしていました。

チャグチャグ馬コは馬の優れた育成者であったと伝えられている蒼前が祀られている神社へ、馬の安全祈願のために参拝したことが起源だと言われています。旧暦の端午の節句のころは、田んぼの作業がおおづめとなり、馬に疲れが出やすい時期だったことから、安全祈願に蒼前詣をして、祝宴を開くようになりました。やがて、この時期になると、蒼前詣のために多くの馬があつまり、中には馬の装備に趣向を凝らすことが流行りました。これが、チャグチャグ馬コの起源であると言われています。

馬の胸に付けられている、オオカミよけの鳴輪が「チャグチャグ」と音を出して、美しい緑の山々と青空を背に進む馬の隊列を見るとまるで江戸時代にタイムスリップしたような気持ちになります。着飾ったお母さんに一生懸命ついていく仔馬も微笑ましいですね。乗り手も老若男女、みんなとても楽しそうです。

宮崎「御田祭」

「御田祭(おんださい)」は宮崎県三郷町西郷にある田代神社で、毎年7月の第1日曜日に行われる古式の農耕神事です。その起源は平安時代までさかのぼり、約1000年の歴史があると言われています。新型コロナの影響で、今年は4年ぶりに7月2日に行われました。1日(土)には前日祭も行われています。

催馬楽(さいばら)の演奏が終わると、神田に「牛馬入れ」が行われます。馬は水を張った田んぼに入ると元気になります。かかればかかるほど、健康になると言い伝えられている田んぼの泥水を派手に散らしながら、田んぼの中を走り回ります。馬が肢を泥にとられて、動けなくなって乗り手が豪快に田んぼにダイビングすることもあるそうです。

そのあとは田植え歌をうたいながら、早乙女姿の女性たちが田植えを進めていきます。田植えは農作業ではなく、昔は神事の一端ですらあったのだと実感できるお祭りです。

その証拠として、世襲制で引き継がれた祭事役がお世話をすることになっています。その祭事役、地元の方、一般の参詣者が一緒に無病息災や豊作を祈願します。御田祭は宮崎県の無形重要文化財として登録されています。

お祭りでは迫力のある働きで、立派に役目を果たす神馬の「ゴン」と「ゲン」ですが、かわいらしい一面も。美郷町のCMで垣間見ることができますよ。是非、以下のリンク先である美郷町のサイトからCMをご覧ください。

まとめ

今回は馬が主役の3つのお祭りをご紹介しました。いずれも、昔から馬とのかかわりが強い地域で行われています。興味のあるお祭りがあれば、是非、足をのばしてみてはいかがでしょうか。

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