【チャームポイントは耳】インドの在来馬「マルワリ」
「マルワリ」という馬をご存知でしょうか?インドの在来馬であるマルワリは、長きに渡りインド国内の一部の地域で飼育されており、日本では見ることができません。しかしその姿を一度目にすれば、誰もがその可愛らしさの虜になること間違いなし!です。
そんな貴重なマルワリについて調べてみました。
ミステリアスな起源
マルワリはインド北西部、ラジャスタン州のジョードプル(旧マールワール王国)の在来馬です。
その昔、インド西海岸に漂着した船に乗っていたアラブ馬とインド在来馬のポニーなどを交配して生まれたと言われていますが、実は起源はよくわかっていません。12世紀には、ラージプート族が軍馬としてマルワリの飼育繁殖をおこなっており、マルワリはその子孫であると言われています。いつどのように誕生したのか不明瞭、そのことが神秘的でミステリアスであると言われている理由となっています。
マルワリは勇敢で忠誠心あふれる馬なので、昔から軍馬として重宝されてきました。インドでは、戦場におけるマルワリについての数々の伝説が語り継がれており、神聖な馬とあがめられてきました。
また、マルワリは「インドの誇り」とも言われ、王族よりも尊敬されていた時代もあるそうです。
馬が王族よりも神に近い存在だったとは、当時のインドの人々にとっても非常にミステリアスな存在だったのでしょう。
身体的特徴
マルワリの一番の特徴は、カールした耳です。外側へ向くようにくるんと丸まり、ほとんど両耳の先がくっついています。このような湾曲した耳は『インド耳』と呼ばれています。
マルワリの耳は、なんと180度動かすことができるそうです。そのため聴力が非常に優れています。これは砂漠のような隠れる場所のないところでも敵の存在をいち早く知り、身を守ることに役立っているのです。また方向感覚にも優れているので、インドではマルワリを軍馬として用いてきました。
またマルワリには歩様にも特徴があります。
マルワリは、脚を高く遠くに上げて走る側対歩をおこないます。この歩様は、リヴァルまたはリワルと呼ばれており、砂漠の砂の上を移動するのに適応した結果だと言われています。
現在ではリヴァルを活かし、マルワリは馬場馬術の世界で活躍しています。また結婚式などに登場して、祝宴を盛り上げています。
性格
マルワリの性格は利口で勇敢で強健といわれています。その性格が軍馬に向いていたため、かつては戦象(軍事用の象)に乗った敵と戦うための調教がおこなわれていました。まさに『インドの誇り』と言われる由縁です。
マルワリが戦象と戦った最も有名な戦いが、1576年の「ハルディーガーティ(Haldighati)の戦い」です。この戦いでは、伝説のマルワリ馬と呼ばれるチェタックが活躍しました。
チェタックは、敵の戦士が乗った象に前足で襲いかかり、主人マハラナ・プラタプが槍で敵と戦うのを援護しました。
敵の戦士は攻撃を交わしたものの、代わりに象使いが死んでしまいました。象使いが死んで半狂乱になった象によって、チェタックは足を1本切り落とされてしまいます。
大けがを負ったチェタックは最後の力を振り絞って主人マハラナ・プラタプを戦場から連れ出し、マハラナは無事生き延びることができました。
この戦いは馬達の忠誠と勇敢のシンボルとして、歴史家に高い評価を受けているそうです。
大ヒットした映画にも登場
2022年、日本でも上映された大ヒットインド映画、『RRR』をご存知ですか?
主人公ラーマとビームが初めて出会うシーンで、ラーマが乗っている馬、この馬がマルワリなのです。
チャーミングな耳が印象的なため、映画を観た多くの人たちがマルワリについてインターネット検索したそうですよ。
また、『RRR』と同じ監督が制作した映画、『バーフバリ』でもマルワリが登場しています。この映画では、戦いの場面でマルワリが着飾って登場しています。
昔の軍馬は、装飾品を沢山身にまとって戦場で戦っていたそうです。華やかなマルワリは、それだけで軍の士気が上がるだけでなく、マルワリを神格化していたことの証でもあるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
マルワリはイギリス植民地時代にイギリス人によって排除され、20世紀前半には絶滅の危機に瀕していました。その後インド政府が保護し、2000年までは国外へ輸出することが禁止されていました。
2000年に輸出が解禁されて以降、珍しさもあり世界中で人気を集めています。今までにインドから輸出されたマルワリは世界で数十頭しかおらず、日本にはまだ輸入された記録がありません。
日本でもチャーミングなマルワリに会える日が、1日も早く訪れると良いですね!