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空中を舞う馬のステップ「パッサージュ」という芸術

昨年のパリオリンピックで総合馬術の「初老ジャパン」が活躍したときに、初めて馬場馬術を観たという方もいらっしゃるかもしれません。馬場馬術は馬の「フィギュアスケート」とも呼ばれています。馬にとって難しいステップや技を乗り手がいかに小さな扶助で実施して、美しい演技にまとめるかを競う競技です。その中でも、難しいといわれている技がパッサージュ。今回はパッサージュについて、深掘りしていきます。

パッサージュとは

日本中央競馬会(JRA)の馬術応援動画。冒頭で美しいパッサージュが観られます

パッサージュとは、馬が速歩で前に進む際に四肢を高く上げるステップです。右前肢と左後肢、左前肢と右後肢をそれぞれ対にして、高く上げます。通常の速歩よりもスピードはゆっくりで、バネが効いているかのように上に跳ねるように進んでいきます。その姿は、人馬が一体となって踊っているかのよう。まるで芸術です。

まずは馬が前に行こうとするのを抑えるのに、半減脚を使いながら馬にパワーを溜めます。パッサージュには後肢の踏み込みが重要であることから、後肢からハミまでがしっかりコンタクトが取れている状態でなくてはなりません。この状態で、馬は体を収縮しパワーを溜め、関節を曲げて脚を高く上げます。これがパッサージュです。

トレーニング方法

空中を舞う馬のステップ「パッサージュ」という芸術

まずは速歩を詰めたときに、パートナーがどのような反応をするか見てみましょう。収縮常歩から、速歩発進をします。速歩の発進ができたら、半減脚を使い、速歩のまま馬を収縮させます。馬が止まろうとしたら、脚を使って推進しましょう。前に進もうとする力が強い場合は、半減脚でコントロールします。手綱でしっかりコンタクトを取って、拳はプレッシャーをかけ続けないように緩めます。

この状態で上にふわっと浮くような速歩をしたら、パッサージュに近づいている証拠です。この技は馬にとっても、かなり難しいものです。うまくできなかったときにずっとトレーニングを続けてしまうと、馬がネガティブなイメージを持ってしまうこともあり、得策ではありません。馬によって理解度や関節の柔らかさなどが違うので、じっくりと焦らずにトレーニングを進めましょう。少しでもパッサージュっぽい動きができたら、その場でたくさん褒めてあげましょう!

顔を上げて抵抗しようとする馬もいるでしょう。馬のフィジカル(柔軟さ)などもこの技の習得には関係します。体が整っていないのに無理強いをするのはNGです。馬場馬術の馬として生産されている馬たちは、関節や筋肉も柔らかく、こういった動きがしやすい体のつくりになっています。しかし、例えばサラブレッドの体のつくりは必ずしもそうではありません。だからと言って、サラブレッドにはパッサージュができないというわけでもありません。心技体が一体となったときに初めて完成する技なのです。

その他の技

JRA制作の馬場馬術のルールを紹介するこの動画では、たくさんの技が紹介されています。

馬場馬術にはこれ以外にもさまざまな技があります。

まず、パッサージュに似ている技にピアッフェというものがあります。パッサージュは前に進む際に肢を高くあげますが、ピアッフェはその場で足踏みをしながら、肢を高く上げます。馬の柔軟性が問われるエレメントです。

ハーフパスは、馬が肢を交差させながら、斜め前方に進んでいく技。馬体の柔軟性や真直性(まっすぐ前進すること)が求められます。

フライングチェンジ(踏歩変換)は駈歩の四肢が空中に浮かんでいる間に手前を変える技です。数歩ごとに踏みかえたり、1歩ごとに踏みかえたりします。特に1歩ごとに手前を変える技は難易度が高いです。馬がスキップしているようで、かわいらしく見える歩様です。乗り手の正確な扶助とそれに対する馬の理解度が高く求められます。

馬場馬術でも、最も難しい技とも言われているのがピルーエット。後肢を軸にして足踏みをしながら360度、回転します。いかに後肢を動かさずに、回転できるかがポイント。非常に難しいので、人馬ともに技術はもちろん、集中力も問われます。

このほかにも、一完歩が大きく、ダイナミックな駈歩である伸長駈歩や敬礼も採点されます。

まとめ

今回はパッサージュについて深掘りしてみました。パッサージュは、乗り手だけが理解して扶助を出しても、馬はすぐに理解できません。馬たちが自然界では絶対にしない不自然な動きであるため、まずは扶助を馬に理解してもらわなくてはなりません。乗り手には繊細な扶助や拳が求められるうえに、馬との信頼関係が構築されていない限り、成功できない難しい技です。機会があれば、ぜひ馬場馬術の大会で生のパッサージュをご覧ください。

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