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【総合馬術団体】日本代表チームが銅メダル!

今回もさまざまな名勝負を生み出したオリンピック。日本代表チームの「初老ジャパン」が総合馬術団体で初めて銅メダルを獲得する快挙を成し遂げました。東京オリンピックで、あともう一歩でメダルに手が届かなかったところから、同じメンバーでチーム一丸となり、取り組んできたことが実を結びました。馬術でのメダルはあのバロン西こと、西竹一選手のロスオリンピックから92年ぶり。馬術本場の地で並みいるヨーロッパのチームを破っての銅メダルは、日本の馬術競技者ならず、アジア諸国の競技者の皆さんにもきっと勇気を与えたはず。あの感動をもう一度、たどってみましょう。

1日目

【総合馬術団体】日本代表チームが銅メダル!

7月27日に行われた団体の馬場馬術。調教審査とも言われ、馬の動きや従順性、技の完成度などを競います。全部で64組の人馬が競い合いました。日本代表は、北島隆三選手はセカティンカJRA号、大岩義明選手はMGHグラフトンストリート号、戸本一真選手はヴィンシーJRA号とタッグを組み臨みました。

一番手の北島選手とセカンティカ号は減点34.50で37位でスタート。「駈歩で馬のテンションが上がってしまってコントロールが難しくなりましたが、点数は思ったよりも悪くありませんでした。クロスカントリーと障害は得意な馬なので、明日、頑張ります」とコメントしていました。

二番手の大岩選手とグラフトンストリート号のペアは減点25.50の素晴らしい演技で8位。「良いスコアを出せて満足しています。明日のクロスカントリーはテクニカルでよくできたコースだと感じています。チームの二番手という僕のポジションはチームに余裕をつくらなければならないので、しっかりアタックして自分の仕事をして、みんなが笑っているところにゴールしたいですね」

三番手の戸本選手とヴィンシー号は減点27.40で18位の発進です。「直前の大きな拍手などで馬のテンションが上がって、最後まで緊張した状態でした。チームの三番手として減点25はいきたかったです。クロスカントリーは選択肢がたくさんある障害物が多いのですが、全てストレートラインで行く予定です」と話していました。

この時点でチームとしては、イギリス、ドイツ、フランス、ニュージーランドに次ぐ5位となりました。

2日目

【総合馬術団体】日本代表チームが銅メダル!

翌日のクロスカントリーは自然を模した障害物を時速30kmほどで飛越していかなくてはならない、非常にタフな種目です。水濠に設置されたものやジャンプをして高いところから降りるものなど多種多様な障害物があり、人馬の信頼関係やスタミナが求められる過酷なコースになっています。パリオリンピックでは、全長5,149mで28障害(41飛越)のコースがヴェルサイユ宮殿に隣接する森の中に設置されました。

この日の初老ジャパンの出番は、12番目に北島隆三選手&セカティンカJRA号、36番目に大岩義明選手&MGHグラフトンストリート号、60番目に戸本一真選手&ヴィンシーJRA号が出番を迎えます。

まず、北島選手とセカティンカ号が規定タイム9分2秒から16秒遅れて無事、完走。減点は6.4。「あれだけたくさんの人の中を走って気持ち良かったです。ほぼプラン通りの走行ができました。セカティンカはビッグハートですし、能力の高さを感じます。今、団体3位につけていることについては、そのつもりでやってきたので驚きはないです。まずは明日のホースインスペクションです」と北島選手。

大岩選手とグラフトンストリート号、戸本選手とヴィンシー号がともに減点なしで完走します。大岩選手は「自分の仕事はきっちりしなくてはいけないと思っていたので、それができて良かったです。減点0でゴールした時は、よっしゃー!という感じでした。三番手の戸本選手に繋げることができました。今のところは、ここに来る前にチームとして想定していたスコア通りにきています。最後まで自分たちのベストパフォーマンスをして、全てを出し切りたいですね」とコメント。

戸本選手は「一番手の北島選手が馬を下りてすぐこちらに走って来ながら、コースの状態を伝えてくれました。それを聞いて自信を持って走れました。チームに勢いをつけてくれたと思います。コースはほぼプラン通りに回れました。今のところチームで3位ですが、ここで4位との差を気にするよりも、上位との差を意識していきたいです」とのこと。

クロスカントリーが終わって、大岩選手は5位、戸本選手は8位、北島選手が28位につけます。チームとしては、減点93.80でイギリス、フランスに次ぐ3位となり、メダル圏内に突入しました!

3日目

【総合馬術団体】日本代表チームが銅メダル!

3日目は障害ですが、競技開始前にインスペクションがあります。馬体検査をして、馬に怪我や異常がないかを確認します。この検査をパスしないと、障害へと駒を進めることはできません。

ヴィンシー号は1回目のインスペクションでパスしました。グラフトンストリート号とセカンティカ号は保留となりましたが、グラフトンストリート号は再検査をパスします。しかし、残念ながらセカンティカ号は肢に怪我があったので、再検査を棄権することにしました。リザーブの田中利幸選手&ジェファーソンJRA号のペアが代わって、障害に出場することになったため、初老ジャパンは20点の減点を受け、障害は減点113.80の5位からスタート。万事休すかと思われました。

最初に飛越するのは田中選手とジェファーソン号。飛越が得意だというジェファーソン号の背に自信を持って騎乗した田中選手はタイムオーバーの減点1.6のみで帰ってきます。「急遽交代を聞いた時には鳥肌が立ちました。その時点で銅メダルまで3落下差だったので、絶対に減点0で帰ってこないといけないと思い、プレッシャーはありましたが、下見でチームのみんなからアドバイスももらっていいイメージをもってコースに臨みました。ジェファーソンはジャンプもスーパーな馬なので自信をもっていけました。スーパーな仕事をしてくれました。観客の盛り上がりもすごく、それを楽しむこともできました。自分の役割を果たすことができて良かったです。この4人のチームはかなり長いので信頼もあります。北島は同じ会社のスタッフで一緒に活動しており、障害馬術が得意な選手なのでコースの下見や待機馬場でもすごくサポートしてくれました」と述べています。

次に飛越したのは、戸本選手とヴィンシー号。素晴らしい飛越でクリアラウンドを達成しました。戸本選手は「前日にクロスカントリーを走った後、グルームをはじめ多くの人がサポートして馬をケアしてくれたおかげで、最終日の舞台に無事に立つことができました。クロスカントリーを終えて団体3位でメダルを狙えるところにいたので、今朝のホースインスペクションでセカティンカが棄権したことは残念でしかたなかったです。でも、障害馬術では急遽交代した田中さんが障害減点0で帰ってきたので、チームは一つだと感じました」と語りました。

最後に登場したのは、大岩選手とグラフトンストリート号のペア。落下ゼロの減点0.4のみで戻ってきます!大岩選手は「団体戦の走行時は、その時の順位やどれくらいの差がついているのかを知らずに走りました。みんな、僕にプレッシャーをかけないように余計な情報を入れなかったのだと思います。おかげで集中してコースを回ることができました。東京大会ではアクシデントがあって不完全燃焼で終わってしまったので、今回はベストな状態で競技に挑むことを第一に考えて準備してきました。人馬の交代があって減点20が加わった時は、まだ可能性がある、諦めないつもりでいこうと思いました」とコメントしていました。

3人とも落下ゼロで回ってきた障害終了時には減点がチーム合計で115.80となり、スイスとベルギーを上回って銅メダルを獲得しました。またトップ25人馬が出場ができる個人戦でも、戸本選手とヴィンシー号は5位、大岩選手とグラフトンストリート号は7位にそれぞれ入賞する結果を残しました。

仲間の素晴らしい飛越を見た北島選手も「ホースインスペクションで棄権した時にメダルに届かないと思いましたし、責任を感じていたのですが、この結果はミラクルです。チームの力に感謝です。これまでずっと自分たちにはメダルが獲れる力があると思ってやってきました。長く長くかかりましたが、ようやく悲願のメダルを手にすることができて良かったなと思います。3人の走行はキスアンドクライで見ていたのですが、ちゃんと見られず後ろでうろうろしていました。大岩さんがゴールした瞬間は感動しかない、涙しかなかったです。ありがとうしかなかったです。みんな同じ気持ちだったと思います。これがチームですね。この経験は次の世代に絶対に伝えたいと思っています」と話していました。

銅メダル獲得の快挙となったポイント

出典: 日テレスポーツ【公式】   チャンネル登録はこちらからどうぞ!

銅メダル獲得の快挙となったポイントについて、翌日の記者会見で大岩選手が長く同じチームで強化を図ってきたことと拠点をヨーロッパに置いたことを挙げていました。東京オリンピックに向けて、強化をするために東京オリンピック以前より、同じメンバーで腕を磨いてきたことが結果につながったと考えているそうです。また、馬術の訓練をしていくうえで、環境の整っているヨーロッパで長い間、トレーニングを受けられたことが今回の快進撃につながったと考えているともお話されていました。

実は2回目のホースインスペクションを棄権した際のペナルティを、2回目のホースインスペクションにより失格となった際の100点だと勘違いしていたそうです。他の国のコーチから「棄権だったら減点は100じゃないはず。ペナルティを確認した方がいい」とアドバイスを受け、棄権時の減点が20点であることを初めて知ったそう。それで「イケる」という空気に一気に変わったのだそうです。

外国のコーチからアドバイスを受けられたのも、幸運だったのではないでしょうか。これを知って飛越しているか、していないかで、結果も違ったかもしれません。

長い間、同じメンバーで臨んでいたからこそ、チームの結束やお互いの信頼関係があり、最後の「あきらめない気持ち」につながったのではないでしょうか。それが、運の良さも引き込んだのかもしれません。チーム一丸となって手繰り寄せた素晴らしい銅メダルでした。

まとめ

今回は素晴らしいチーム力を発揮して、文字通り、全員で銅メダルをもらった総合馬術の初老ジャパンのオリンピックでの熱戦を振り返ってみました。これを機にたくさんの方に、マイナースポーツと言われる馬術に興味を持ってもらい、一人でも競技人口が増えることを願ってやみません。初老ジャパンのみなさん、パートナー馬たち、本当におめでとうございます!そして、お疲れさまでした。4年後も楽しみにしています。

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