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近代五種競技の馬術はパリで見納め⁈

前回の東京オリンピックから早3年。今年はオリンピックイヤーですね。馬術競技はベルサイユ宮殿をバックに望める美しい競技場で実施されます。近代五種の障害馬術もこの競技場で行われる予定ですが、なんと、オリンピックではこれが見納めになってしまうようです。この記事では近代五種の馬術競技について、ご紹介します。

近代五種競技とは

近代五種競技の馬術はパリで見納め⁈

近代五種競技は、オリンピックの伝統的な競技の1つであり、ヨーロッパではキング・オブ・スポーツと呼ばれ、根強い人気があります。近代オリンピックの立役者としても知られるピエール・ド・クーベルタン男爵が古代オリンピックで行われていたペンタスロン(レスリング、円盤投げ、やり投げ、走幅跳、短距離走)という競技を参考に考案しました。馬術を含めた異なるスポーツ(フェンシング、水泳、射撃、ランニング)を組み合わせて、総合的な成績を競う競技です。

実際に大会を通して、観戦したことのある方も少ないのではないでしょうか。まずは、簡単にルールを説明します。フェンシング、水泳、馬術、レーザーラン(射撃とランニング)の順番で行われます。

  • フェンシング:ランキングラウンドとボーナスラウンドがある。ランキングラウンドは、体全体を得点対象とするエペで、1分間1本勝負の総当たり戦。勝率70%を250点とし、勝率によって点数が増減する。ボーナスラウンドは45秒の勝ち抜き戦。ランキングラウンドの下位の選手から行い、1試合勝てば1ポイント。ランキングラウンドとボーナスラウンドの合計点が成績となる。ただし、2028年のロサンゼルス大会からはトーナメント戦となる可能性も。
  • 水泳:200mを泳ぎ、タイムを測定。2分30秒を250点とし、1秒につき2点の増減。
  • 馬術(障害飛越):最高120cmの12障害15飛越で300点満点からの減点方式。拒止・逃避は10点、落下は7点の減点。
  • レーザーラン(射撃とランニング):これまでに得た合計点数の1点を1秒として、上位の選手からスタート。射撃からスタート。10m先にある的に5発的中させたら、800mのランニングをスタート。これを4回繰り返す。

最終競技のレーザーランでは、ゴールを先に切った方が勝ちとなるため、抜きつ抜かれつのシーソーゲームが展開され、とても盛り上がります。多種多様な競技を組み合わせて行うため、あらゆるスキル、運動能力や精神力が求められる過酷な競技です。

五種競技から馬術がなくなる?

近代五種競技の馬術はパリで見納め⁈

日本では競技人口が2ケタとも言われているマイナースポーツですが、東京オリンピックでのある出来事によって、はからずも一躍有名になってしまいました。ドイツの近代五種の代表選手が馬をうまく制御できず、鞭で馬を打ち続けたり、コーチが馬を殴るなどしたことが発覚してしまったのです。馬術競技では、選手とパートナーがペアで出場しますが、近代五種ではランダムに騎乗馬が決められることになっており、初めて顔を合わす馬と競技をしなくてはなりません。競技実施前に試乗する時間が20分ほど与えられます。オリンピックに貸与されている馬はテストジャンプなどをパスし、十分な能力があるとされる優秀な競技馬です。選手には馬の精神面も含めて、初めて騎乗する馬と限られた時間の中でもコミュニケーションをとり、うまくコントロールすることが求められます。

それまでの成績もよく、メダルを狙える位置にいたドイツの選手は少しパニックになってしまったのでしょう。馬とコミュニケーションをとることができず、思ったようにいきませんでした。そして、鞭で打ち続けたり、コーチが手を挙げてしまうといった状況に陥ってしまいました。ニュース等でこのことが伝えられると、特に馬術が盛んな欧米では大きな問題と目されるようになりました。そして、とうとう馬術がオリンピックの近代五種競技から排除されることが決定したのです。

2028年のロサンゼルスオリンピックからの変更点

近代五種は1912年のストックホルムオリンピックから行われてきた伝統的な競技でした。当初は、1日に1競技を行うというスケジュールで実施していましたが、1996年のアトランタオリンピックから現在のように1日で全競技を行う日程に変更になりました。また、女子の競技は2000年のシドニーオリンピックから行われてきました。

しかし、近代五種の馬術はパリオリンピックで最後として、ロサンゼルスオリンピックからは除外されることになりました。オリンピック競技から近代五種自体が除外されてしまうことを恐れた国際近代五種連合が、ロサンゼルスオリンピックでは馬術のかわりに障害物競走を採用することを決めました。この障害物競走は日本のテレビ番組「SASUKE」を参考にしたと言われています。オリンピックのテストイベントでは、選手たちの反応も上々だったとか。ただ、オリンピックの伝統的な競技から馬術が外れてしまうのは少し残念な気もしますね。近代五種の選手でも、各種目に得手不得手があるはず。馬術を最も得意としていた選手にとっては大きな痛手となってしまうかもしれません。

とはいえ、国際近代五種連合は全ての大会から馬術を排除するものではないとも表明しています。引き続き、馬術を含めたオリジナルの近代五種を楽しめる機会はあるようです。

まとめ

いかがでしたか。これまでオリンピックで廃止されてきた競技は、残念ながら多くが二度と日の目を見ていません。そのため、オリンピックで行われる近代五種の馬術は、パリ大会で本当に最後になるかも。近代五種は8月8日〜11日の日程で行われます。パリオリンピックでは、近代五種の馬術にも是非、注目してみてくださいね。

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