パラリンピック馬術競技について
パリ2024パラリンピック競技種目の中に、馬術競技があります。
障がい馬術は、もともと障がい者のための療法(ホースセラピー)やレジャー活動として始められました。
最初の競技会は1970年代に開催されており、パラ馬術がパラリンピックの正式競技として追加されたのはアトランタ1996からです。
今回は、パラリンピック馬術競技についてまとめました。
オリンピック馬術との違い
パラリンピックの馬術競技は、馬場馬術(ドレッサージュ)種目のみが採用されています。
肢体不自由と視覚障がいの選手が対象で、障がいの種類や程度に応じて、5つのクラス(グレード)に分けられています。全ての種目は男女混合でおこなわれ、全ての騎手が5つのクラス(グレード)に渡って一緒に競技をおこないます。
5つのクラス(グレード)は、以下の通りです。
ク ラ ス | 障 が い の 程 度 |
グレードⅠ | 四肢ならびに体幹に重度の障がいがあり、日常的に車椅子を使用。 歩行できる場合もあるが、バランスや体幹機能が落ちているため不安定。 |
グレードⅡ | 中程度の体幹障がい、重度の四肢障がいなど、上肢は使えるが、体幹のバランスが ほぼない。日常的に車椅子を使用。 |
グレードⅢ | 体幹、四肢に中程度の障がいがある(グレードⅡほどではない)。 日常的に車椅子を使用。 |
グレードⅣ | 両上肢の重度障がいもしくは欠損、四肢の中程度の障がい、低身長、視覚障がいなど。 日常的には車椅子は使用せずに歩くことができる。 視覚障がいの場合は、アイマスクを着用。 |
グレードⅤ | 軽度の他動関節可動域障がい・筋力低下、1肢の欠損、2肢の軽度の異常、 視覚障がいなど。 |
種目と競技ルール
パラリンピックでは、人と馬が一体となって、決められた歩き方である常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)によって、課題である図形を描いて演技し、技の正確さ、美しさを競います。
グレードIの選手は常歩(なみあし)でテストを行います。
グレードIIのライダーは常歩(なみあし)と速歩(はやあし)、グレードIII以上のライダーは常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)が可能です。
ただしグレードIIIはフリースタイルでのみ、駈歩(かけあし)が認められています。
パラ馬場馬術には、選手個人で規定演技を行う個人課目(インディビジュアルテスト)、音楽に合わせて団体で規定演技を行う団体課目(チームテスト)、そして選手個人が選んだ音楽に合わせて自由にプログラムを立て、演技を行う自由演技課目(フリースタイルテスト)の3種目があります。いずれも運動項目ごとに0~10点の得点がつけられ、その合計得点率(%)で順位を競います。
規定演技には、「パラグランプリA」と、より難度の高い「パラグランプリB」があります。
選手は障がいに応じて工夫した手綱や鞍を使い、残存する能力をフルに活かして演技をおこないます。
通常、馬術は脚で馬に指示を出しますが、下半身まひの選手については鞭の使用が認められています。また、手に障がいのある選手の場合、手綱を片手で固定したり、手を使用せずに口でくわえたり、足の指で握ったりすることもあります。
選手の障がいによってさまざまな工夫をこらして、馬に選手が意志を伝えているのです。
また、選手は各自の障がいを補うため、特殊馬具の使用や馬具の改造が認められています。
片手でも扱えるバー状の手綱や、靴や鞭を固定するゴムなど、選手が自分自身の障がいに合わせて工夫して改良した馬具が見られます。周囲のサポートなどで、さまざまな工夫を重ねて演技を披露します。
視覚障がいのある選手については、比較的障がいが軽いグレード4、5に区分けされ、「コーラー」が現在位置を声で知らせます。また、記憶障がいがある選手には、「コマンダー」が馬場外から次のコースを伝えます。
服装と馬装
パラリンピック馬術競技は、他のパラスポーツよりも服装の規定が細かく定められています。
選手は、黒もしくは暗色のヘルメット、ジャケット、ブーツを着用しなければいけません。
乗馬ズボン、手袋、ネクタイは、白またはオフホワイトと決められています。華美な飾り等は認められません。
馬装に関しても細かい規定があり、馬のたてがみは三つ編みや団子などにして、きれいに編み込むのが正装とされています。
見どころ
パラリンピック馬術は、馬と一体になって図形を描いたり、決められたルートを歩いたりと、演技の正確性と美しさ等で勝敗が決まります。
パラリンピック馬術は、パラリンピック競技のなかで唯一の採点競技です。
馬と心を通わせ、的確で最小限の指示だけで、馬が自ら演技を行っているかのように見せるのです。
パラ馬術を通して、馬術の楽しさや素晴らしさを是非ご覧下さいね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
パリオリンピックの総合馬術では、約90年ぶりに日本にメダルをもたらしました。
パラリンピック馬術でも、選手が実力を十分に発揮し、メダルを獲得できるよう期待しましょう。