パラ乗馬、障がい者のための初めての乗馬

一般の乗馬クラブと障がい者乗馬を専門的に扱っているクラブとの違い

パラ馬術競技をご存知でしょうか。パラ馬術競技とは、肢体不自由または視覚障がいがある選手向けの乗馬競技です。競技は馬場馬術と馬車競技があり、パラリンピックでは馬場馬術のみが採用され、東京オリンピックでも観戦することが出来ました。しかし、肢体不自由、視覚障がいといっても障がいの特徴も違いますし、程度も違います。
パラリンピック出場の方々はどこでどんな練習をして、パラリンピック出場までたどり着くのでしょう。また、障がいがありながら乗馬をする上で、工夫されていることはあるのでしょうか。具体的にどのようなものがあるのか紹介します。

クラス分け

競技者は、肢体不自由や視覚の障がいの程度によりグレードⅠ~Ⅴまでの5つのクラスに分けられます。Ⅰの方が障がいが重く、Ⅴの方が軽くなります。それぞれの違いを紹介します。
グレードⅠでは重い障がいがある人が対象となり、脳性麻痺の選手などがいます。座面を工夫したり、力が弱い手足にゴムを装着するなどの工夫をして馬をコントロールしています。なお、グレードⅠの競技は常歩試行までになります。
グレードⅡには、元JRAの調教助手だった宮路満英選手がいます。宮路選手は脳出血の後遺症により右半身に麻痺が残っています。また、身体面の障がいだけでなく、高次脳機能障害という脳の障がいも抱え、コースを覚えるのにも苦労したようです。グレードⅡでは、常歩を主として、速歩をしてもよいとされています。
グレードⅢには、やや重い障がいがある人が対象となり、先天性脳性まひがある稲葉将選手がいます。稲葉選手は両下肢が麻痺しているため、特別な馬具としてムチと鐙カバーを使っています。運動としては、駆歩に至らない初歩的な試行をしてもよいとされています。
グレードⅣでは、やや軽い障がいがある人が対象となり、元JRAの騎手、高嶋活士がいます。高嶋選手はレース中の落馬により右半身にまひが残りました。その後、馬をコントロールするため本来であれば右足を使いたい場合は、重心を右にかけるなどしてコントロールを工夫しています。
グレードⅤは軽い障がいがある人が対象となり、初級、中級レベルの試行ができます。
ここまで、肢体不自由な方を取り上げましたが、視覚障がいがある場合も競技の工夫があります。その例として、馬場の中には各ポイントがありますが、そこに最大13名までガイドを付けることができます。選手はポイントが見えないため、ガイドは声を出してその位置を伝えることになります。

一般の乗馬クラブと障がい者のための乗馬クラブ

障がいがある人が乗馬を始めるとき、最寄りの乗馬クラブでもできるのでしょうか。確かに障がいがある、なしにかかわらず、子供でもお年寄りでも、誰でも乗馬を楽しめる乗馬クラブもあります。しかし、乗馬クラブの中には障がいがある人の乗馬をサポートする設備やノウハウがなかったり、ボランティアがいなかったりするところもあります。
気になる乗馬クラブがあれば直接問い合わせてみるのをおすすめします。また、東京障害者乗馬協会(TADER)のホームページでは、障害者乗馬に取り組んでいる団体を紹介しています。
東京障害者乗馬協会:http://tader.jp/cont/link.html

障がい者のための乗馬クラブ

障がい者のための乗馬クラブは、知的障がい、自閉症スペクトラム、脳性麻痺、小児麻痺、二分脊椎、全盲などそれぞれ違った障がいを持った人が乗馬を楽しんでいます。そこには、馬の乗り降りを補助してくれるボランティアがいたり、障がいに合った馬具があったり、視覚障がいの人には声による誘導をするなどあらゆる工夫とノウハウがあります。
やってみたいけれど不安、という人はぜひ体験乗馬を利用してみるといいでしょう。

かかる費用に違いはあるの?

乗馬にかかる費用は高いイメージを持っている人が多く、さらに障がい者乗馬というと費用の心配もあると思います。一般の乗馬クラブと障がい者のための乗馬クラブの費用を比較してみましょう。
東京の一般の乗馬クラブの場合、入会金200,000円前後、月謝15,000円前後、騎乗料1回(45分)2,000円前後になります。
一方、東京障害者乗馬協会の場合、入会金24,000円、年会費10,000円、騎乗料1回(20分)1,500円になります。
入会する前に乗馬ができるか不安、競技大会への参加を目指したい、乗馬をする気はないが馬と触れ合ってみたいなど、不安や楽しみは人それぞれです。まず気になることがある場合は、問い合わせをしてみましょう。

乗馬が出来る場合と出来ない場合

障がい者乗馬は、肢体不自由な方、視覚障がいがある方、発達障害がある方など多くの人が楽しむことができます。しかし、残念ながら出来ない場合もあります。乗馬が出来ない場合として、下記に示します。
・コントロールができない意識障害(てんかん・ナルコレプシー・低血糖症など)
・急性期の関節炎
・急性期の多発性硬化症
・骨粗鬆症
・重度の脊柱後弯症(せきちゅうこうわんしょう)と脊柱側弯症(せきついそくわんしょう)
体験乗馬や入会する前に、聞き取り(インテーク)を行うこともあります。状況により、乗馬が出来ない場合でも、馬と触れ合うことで運動機能、精神機能を向上させる活動もありますので、障がい者乗馬に興味のある人はまず、問い合わせをしてみましょう。

障がい者向け乗馬情報のご案内

乗馬自体、まだメジャーではないスポーツですが、さらに障がい者向けの乗馬情報を効率よく集めるにはどうしたらよいのでしょうか。いくつか代表的な団体、WEBを紹介します。

一般社団法人 障がい者乗馬協会(JRAD)

一般社団法人 障がい者乗馬協会(JRAD) は、障がい者の社会参加と相互理解を深める為、乗馬を通じて機能回復及び健康維持を図り、障がい者乗馬の普及を推進すると共に、パラリンピック競技種目であるパラ馬術のNFとしての競技力強化と普及・定着を図る事を目的とした団体です。世界で戦うためのパラ馬術、癒しと機能回復を目指すホースセラピーなどの情報が豊富です。
一般社団法人 障がい者乗馬協会 https://jrad.jp

パラサポWEB

パラリンピック、パラスポーツの総合サイトで、乗馬のみならず、ブラインドサッカーや車いすバスケットボール、水泳など多くのスポーツを扱っています。それぞれの競技の魅力が紹介されており、障がい者馬術についても観戦ガイドがあります。
パラサポWEB https://www.parasapo.tokyo

馬によるセラピー活動のためのガイドブック

障がい者乗馬・ホースセラピー活動を実施するためのガイドブックです。実際に馬によるセラピーはどのように行うのか、服装や留意する点なども写真付きで記載されているため、イメージがしやすいガイドブックになっています。
馬によるセラピー活動のためのガイドブック https://www.jouba.jrao.ne.jp/horse-therapy/

まとめ

障がいのある人は、障がいがあることでやりたいことや行動が制限されることが多くあることが想像できます。しかし、パラスポーツの一つとして、障がい者乗馬を始めることもできます。確かにオリンピックとはルールも馬具も違いますが、自分より身体の大きい馬に乗ることで自信に繋がったり、また肢体不自由の方が、自分では歩けなくても馬に乗れば歩いてくれたりと世界が広がり、いい変化がみられるのも想像できます。
はじめることに不安がある場合は、体験乗馬から始めてみたり、情報を集めたり、また問い合わせをしてみましょう。

 

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