敏感な馬への接し方

人間が十人十色なら、馬も十馬十色。性格がそれぞれ違います。馬はもともと、捕食される側の動物だったため、周辺の変化にとても敏感な動物です。その中でも「このコは敏感だよ」と言われている馬が、各クラブに一頭はいるのではないでしょうか。上達してくると敏感な馬たちと接する機会も増えていきます。今回の記事では敏感な馬に対して、どのように接すればいいのか考えていきます。
騎乗する前の接し方

騎乗をする前には、必ず挨拶を済ませましょう。ただし、馬をびっくりさせるような動きは厳禁です。ゆっくりと優しく、馬が怖がらないような動き方をしましょう。馬に近づく際も前方から向かうのではなく、斜め前あたりから近づくと警戒されづらいでしょう。肉食動物の動きはターゲットに向かって、まっしぐらです。たとえ人間であっても、まっすぐ近づいてくるものには恐怖を感じてしまう性質が馬にはあります。
大きな声や大きな動きも馬を怖がらせてしまいます。馬は、捕食されないように周囲の状況を常に判断することで生き残ってきました。いつもとは違う状況にいち早く気づき、逃げて、自らの身を守ってきたのです。そのため、敏感な馬は特に普段とは違う状況が苦手です。大きな声や大きな動きは普段から避けましょう。
手の甲を差し出して、臭いをかいでもらい、納得してくれたら首などを優しくなでてあげます。ただし、このときも素早い動きをすると怖がられてしまう可能性がありますので、要注意です。ゆっくり、優しくを心がけます。また、低くてゆっくりした優しい声で、声をかけてあげましょう。耳を伏せて、触られるのを嫌がる馬に対しては、無理して匂いをかがせたり、触ったりしないようにしたりする配慮も必要です。
また、敏感な馬の場合、馬装のときも嫌がる馬が多い印象があります。時間をかけてゆっくり馬装をしてしまうと、馬に不快感を与えてしまうかもしれません。優しいながらも、手早く馬装を済ませましょう。腹帯などは、他のことに馬が気を取られているすきにさっと装着してしまうと、意外とスムーズなこともあります。他の乗り手がどのように腹帯を装着しているのか、観察するのもいいかもしれません。乗り手によって、反応がまったく違う馬もいるので、適切な扱い方のヒントが見つかるかもしれません。
まずは、自分がパートナーにとって、無害であることを理解してもらうことが一番大切です。
騎乗中の接し方

まずはパートナーがどれくらいの合図で反応をするか、探るところから始めます。パートナーが軽い馬なのか、重い馬なのか分からない場合は、必ず優しい合図から始めます。本当に軽い馬の場合は、脚を体に付けただけで反応してくれます。こういう馬に対して、最初から強い脚を使うのは危険です。最初は軽い扶助から、徐々に合図を強めていき、必要があれば、舌鼓や鞭を使いましょう。
性格が敏感な馬に軽い馬が多いのは確かですが、必ず軽いわけではありません。例えば、バランスにだけ敏感な馬もいるかもしれません。初めて乗る馬の場合、インストラクターや仲間にどんな馬でどのように乗ったらいいのか、アドバイスを聞いてみるのもいい方法です。お互いにいい印象でレッスンを終えることができれば、関係性の構築もスピードアップさせることができるかもしれません。
馬房での接し方

馬房は馬たちのプライベートゾーンのため、強気に出る馬もいます。特に敏感な馬の場合、馬房に入ってこられるのが好きではない馬もいるかもしれません。まずは馬の名前を呼んでみましょう。顔をこちら側に向けてくれたら、臭いをかいでもらいます。大丈夫そうだと思ったら、首のあたりをなでて、声をかけながら馬房に入りましょう。
馬がお尻を向けていて、こちらに来てくれない場合は餌桶を軽くたたいたりして、気を引いてみます。それでも、馬が乗り手の方を向かない場合は、インストラクターなど慣れている人に頼んで出してもらいましょう。馬の後肢で蹴られてしまったら、大けがを負うことになってしまいます。必ず馬の顔がこちらに向いているときに馬房に入るようにしましょう。
また、馬房に入ろうとしたら馬が威嚇してくるといった場合も大変危険ですので、やはり慣れた人にお願いするのがいいでしょう。そこで、乗り手も馬もお互いに怖い思いをしてしまった場合、レッスンもうまくいかなくなってしまうかもしれません。45分程度の限られた時間の中で、人馬共にネガティブな印象からポジティブな状態に持っていくのは非常に難しいはずです。お互いに対してネガティブな感情を持った状態からレッスンに入らないように、無理をせず、周りの人にお願いしてくださいね。
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まとめ
今回は敏感な馬への接し方について、まとめました。初心者のころは、おおらかなベテラン馬を配馬されることが多いため、初めて敏感な馬に接した方は戸惑うことがあるかもしれません。しかし、上達していけば、いろんなタイプの馬が配馬されていくようになります。敏感な馬、そうでない馬と分けて接するのではなく、一頭一頭、何が好きで何が嫌いなのかを把握して、対応して接してあげることが、関係構築と上達への早道なのかもしれません。