「折り返し手綱」の使い方

乗馬を始めてある程度経ってくると、使用している馬具も気になってきますよね。馬具も初心者向けのものから上級者向けのもの、馬の悪癖の矯正に使うものなど、さまざまです。折り返し手綱も聞いたことはあるけど、使ったことはないという方が多いのではないでしょうか。正しく使えば、人にも馬にも優しい便利な馬具なんです。今回は折り返し手綱について、ご紹介します。
折り返し手綱とは

折り返し手綱とは、腹帯や鞍の外側に装着した長い手綱をハミ環に通して折り返して使用するものです。
調教や馬場馬術の訓練で昔からよく使われていますが、初心者には扱いの難しい馬具だと言われています。
騎座のバランスが取れるようになり、ハミ受けなどの馬術の基本要素ができるようになってきてから、使用するものです。
見た目はネックストレッチャーに似ていますが、目的は違います。
ネックストレッチャーは頭を上げてしまう馬たちが頭を必要以上に上げないようにするための馬具ですが、
折り返し手綱はハミに作用することで馬が一定の高さ以上に頭を上げづらくなり、首をリラックスして使えるようにするものといったイメージです。
効果

ハミ環を通して、テコの原理が働くので普通の手綱を使ったときより、弱い力で馬の顎を下げることができます。
そのため、頭を上げてしまう馬も折り返し手綱を使うと下あごを譲るようになり、結果、頭が下がってきます。
その状態で後肢を踏み込むとハミに少し頼りながら、首を伸ばせばリラックスしながら歩くことができます。
そうやって、頭を上げて、背をそるような苦しい歩き方をしないように教えてあげるための調教道具でもあります。
乗り手側も通常の手綱より小さい力で馬を制御することができて、ハミを取る状態を乗り手も作りやすいため、正しく使えば、人間も馬も楽をできる便利な馬具です。
軽い力でハミを受けている状態を維持しやすいので、馬と探り合う時間を減らすことができて、馬と乗り手がストレスなく、いい関係を構築しやすくなります。馬が集中しやすい環境も作ってあげられます。
さらに寒い季節など馬が元気になりやすいときなどにも重宝される馬具なんです。
馬がびっくりしたり、慌ててしまったりしたときでも、小さな力で馬を落ち着かせやすくなります。
具体的な使い方

ハミ環を通した折り返し手綱を腹帯か鞍に装着します。どちらに装着するかは、馬の反応や状態を見て決めましょう。
乗馬クラブのレッスンで使用するのであれば、インストラクターに確認してください。
装着した折り返し手綱を普通の手綱と一緒に持ち、準備完了です。
乗り手は普通の手綱を小指と薬指の間に挟み、折り返し手綱を薬指と中指で挟み、束ねたものを親指で挟みます。
また、折り返し手綱は頭を上げる馬に対して必ず使用するわけではなく、馬のコンディションや調教の内容に応じて使用することをおすすめします。
次に挙げる注意点から、一般の騎乗者には使用を禁止しているクラブもあります。
注意点

折り返し手綱はハミ環に手綱を通して使用するため、ハミに直接、圧力がかかります。馬に対する制御力は強くなりますが、前進気勢がなくなってしまうことがあります。そのため、折り返し手綱を装着したら、推進をかけることが重要です。
ハミへのあたりも強くなるため、馬が顎を譲ってくれたときは乗り手側も譲ってあげる必要があります。
また、折り返し手綱の長さにも気をつけましょう。
普通の手綱をピンと張ったときに、折り返し手綱は少し緩む程度で持つようにします。
正しい長さで持つことができれば、頭を少し上げてしまってハミが抜けてしまいそうな場合でも、折り返し手綱で制御している範囲を超えて頭が上がることはないので、ハミが抜けるのを防ぐことができます。
折り返し手綱の長さが短すぎて、普通の手綱と同じくらいの張り具合で持ってしまうと、顎を譲ってハミを受けているのに、馬に無用のプレッシャーをかけ続けることになってしまい、馬が混乱したり、苦痛に感じたりしてしまいます。
これが初心者には折り返し手綱が難しいと言われるゆえんなのかもしれません。
逆に長すぎてしまうと、頭を上にあげるのを許してしまうので、ハミが抜けてしまい、折り返し手綱の意味がなくなってしまいます。
適切に使うには折り返し手綱の長さに気をつけて、拳を柔らかく使うようにしましょう。
まとめ
今回は折り返し手綱についてご紹介しました。使い方を誤ってしまうと馬に苦痛を与える原因になりかねません。まずは、騎乗姿勢を安定して保つことができるようにしましょう。姿勢を維持できるようになったら、普通の手綱でもハミ受けをマスターしましょう。使い方を間違えるとあたりが強くなってしまう可能性があるので、普通の手綱で問題なく、ハミ受けができる馬であれば折り返し手綱は使わなくてもいいかもしれません。インストラクターにもアドバイスをもらいながら、ピンポイントで必要なときに効果的な使い方をするのがおすすめです。