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【奥が深い!】正しい停止について考えよう

「停止は馬が動いていないから、歩いたり走ったりすることに比べて簡単」と思っている方はいらっしゃいませんか?

実は、馬を正しく停止させることはかなり難しいことです。正しく停止するためには、その前に正しく動いていないといけません。禅問答かとんちのようですね。

今回は馬に乗る人にとっての永遠の課題、正しい停止についてご説明します。

停止の理想的な反応スピード

あぶみ

馬が活発に動いていないのに、止めようとしてもずるずる前に動いてしまっていつまでも止まらない。「ゆっくり動いていれば止めやすそうなのに」と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、これは馬が自分のペースで好き勝手に動いているだけで、人の指示を無視した状態。スピードは遅くても、馬が止まりたくなければ停止することはできません。正しく停止するためには、馬が乗り手の指示に従って活発に運動している必要があります。

理想的な反応スピードは「可及的速やかに」。馬が乗り手の指示を待ち、乗り手が馬に停止の準備をさせられていれば、少ない歩数でスムーズに止まることができます。

なぜスムーズに停止できないのか

【奥が深い!】正しい停止について考えよう

馬に停止の準備ができていない

歩いたり走ったりしている馬は急に止まれません。停止の前には、馬に意識と身体の準備をさせる必要があります。

停止をしようと思ったら、まず乗り手は深く鞍に座り、両脚を馬のお腹にしっかりつけて圧迫しながら、拳を自分のお腹の前に固定して前方への動きを止めます。

これを半減却といい、停止に限らず歩法(常歩、速歩、駈歩)や歩度(収縮、尋常、中間、伸長)を移行する時には必ず行う「さあ、これから違うことをするから準備して」という馬への合図。この合図を理解できれば、馬の意識の準備は完了。

では、馬の身体の準備についてです。
半減却は拳だけで引っ張るのではなく、脚で馬を前に出し「on」の状態にして、次の扶助に対しスタンバイさせておくことが重要。
この時、馬の歩度は詰まった状態になり、後半身が踏み込み、前半身が起き上がって、スムーズな移行を行うことができる体勢になっています。

扶助があいまいで馬に伝わっていない

半減却が馬に伝わっていないと、真面目な馬なら同じ歩法・歩度を続けます。
その状態で急に手綱だけ引かれても、馬はどうしたらよいか分かりません。

少し敏感な馬なら口だけを引っ張られたことに対して引っ張り返し、いわゆる「引っかかった」状態、止まらずに走り続けてしまうかもしれません。

そうならないようにするためにも、明確な半減却を行い、馬がそれに従ってはじめて明確な停止の扶助を出すことが必要です。

停止の仕方

【奥が深い!】正しい停止について考えよう

停止の前の準備、半減却を行って馬をスタンバイさせます。
この時、馬は収縮、つまり活発に動きながら歩幅が縮まり、上に弾むような動きに。

馬の準備が整ったところで拳を控えます。上から見てハミと手綱・拳・前腕・肘で作ったコの字形の箱に、最後の一歩で馬をキュッと納めるようなイメージですね。

部班で「○○で停止」の号令がかかった場合は、その手前で準備を完了しておく必要があります。
おそらくその場合は事前に「歩度を詰め」の号令がかけられているはずですが、その号令がなかったとしても自分で逆算して馬をスタンバイさせておきましょう。

運動の一番最後の停止でなければ、上手に停止できたからといって気を緩めてはいけません。
あなたも馬も、停止の次の運動に向けた準備が必要です。スムーズに次の歩法に移行できるよう、スタンバイの状態でいましょう。

停止するときの掛け声

【奥が深い!】正しい停止について考えよう

ほとんどの馬は調馬索を使った調教を受けています。
調馬索で馬を止めたい場合、「ウォー」「ホー」「止まれ」などの号令をかけますよね。それを馬が理解していれば、人が乗っている時にも有効なはずです。

大切なのはそのときの声のトーン。落ち着いた低い声をかけるようにしましょう。
特に馬が走り出して止まらなくなった場合に、大きな声、高い声で「ホー!」といくら言っても、かえって馬が興奮してしまいます。
こんな時はまず自分が落ち着くことが何より大切。一度深呼吸して、低い声で馬を安心させましょう。

なお、ブリティッシュスタイルでは調教時以外は声による扶助はあまり使いません。
馬場馬術の試合中、馬に繰り返し声を掛けたり舌鼓を使ったりすると過失となり、減点されますので気を付けましょう。

ウェスタンスタイルではボイスキュー、声による扶助を使います。
停止の場合は長く低いトーンで「whoa」(ウォー)または「hooo」(ホー)と声を掛け、同時に拳をみぞおちのあたりまで上げて背筋を伸ばし、坐骨を押し下げて深く座ります。

まとめ

簡単そうに見えて実はとても難しく、奥が深い「停止」。

質の高い停止のベースにあるのは、いかに馬が乗り手の指示を待っているかということです。

停止がうまくできるようになったと気付いたとき、きっと今までより一つ上のステージに進んでいるはずですよ。

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