【これはやっちゃダメ!】馬に乗っていないとき編
馬に乗っているあいだは緊張感を持っている人が多いはず。ですが、馬に乗っていなくても不用意な行動が馬を驚かせたり、事故につながる可能性があります。今回は「馬に乗っていないとき編」として、馬房や洗い場などでの注意点をまとめました。
馬の後ろに立つ
馬のそばでやってはいけないことの代表格。それが「馬の後ろに立つ」ことではないでしょうか?なぜいけないのか、2つの面から理由をおさらいしていきましょう。
馬にも死角あり
馬の視野は非常に広いとされていますが、さすがに顔を正面に向けた状態で360°見えるわけではありません。頭の真後ろである自分の身体くらいの範囲がちょうど馬の「死角」になっています。
みなさんも、何の前触れもなく背後に立たれたら不安になりますよね。馬も「理由は分からないけれど見えにくい場所に誰かいる」という状況はとても不安が高まります。
馬に信頼されるためにも、いきなり後ろには立たないこと。もし、お手入れをする上で後ろに立たざるを得ない場合は、一旦声をかけて「これから後ろに回るのは私だよ」と知らせるように身体に触れながら後ろに行くのがおすすめです。
死角=蹴りが届く範囲
最初は「馬との信頼」の面から後ろに立ってはいけない理由をお話ししました。そして、もう1つの理由が安全性です。
馬にとって死角となっているのは、後脚の横あたり~真後ろ。この「立つと馬を不安にさせるエリア」は、同時に「立っていると馬の蹴りが届くエリア」でもあります。
馬を安心させるという条件をクリアしていれば蹴られることはほぼありませんが、馬が何かに怯えたり虫を追い払おうとして意図せず立っていた人を蹴ってしまうというケースも。
思わぬケガをしないためにも、馬の後ろに立つときは①馬を安心させる工夫をしてから②必要最低限の時間でというポイントを押さえておきましょう。
声をかけずにいきなり触る
馬が嫌がることは、たいてい人に置き換えると想像がつくと思います。みなさんも、あいさつされずにいきなり肩をたたかれたらビックリしますよね。では、馬に触れるときはどのようにすればよいのでしょうか?
近づくときは段階を踏んで
馬に近づくときは、まず馬にとって視認しやすい前方から。そして、あいさつや馬の名前など何か声をかけてみましょう。話している内容が分からなかったとしても、馬は何となく「この人、自分に声をかけているな。こちらに来るのかな」と分かってくれるはずです。
次に、手で鼻先に触れられるくらいの距離まで近づいたら、馬の鼻のあたりに手を出してみましょう。おそらく「誰かな?」と確認するように匂いを嗅いでくれます。このように、馬のほうから人間を確認する時間をしっかりとることも忘れずに。
ここまでして、馬が警戒したり「あっちへ行ってよ」というように歯を見せる・耳を伏せるような動作をしないことを確認したら、やっと馬に触れることができます。最初に触れるのは、馬の首横や肩のあたりがオススメですよ。
威圧感を与えないことも大切
馬に警戒されないためには「いきなり」はもちろんNG。ですが、上記の段階を踏んでも馬が威圧感を感じてしまうことがあります。
例えば、近づくときに真正面から近づかれると後ずさりをする馬も。そのため、できれば斜め前あたりから歩いていくのがベストですね。また、馬に確認してもらうために手を出すときは、高く上げず馬の口より下あたりにそっと出しましょう。
大きな音や声を出す
ここまで読んで「馬って大きいのにすごくナイーブなんだなぁ」とあらためて思った人も多いのではないでしょうか。もちろん個体差はありますが、予想以上に馬は驚きやすいと考えて厩舎の近くや馬場では物音や声にも気を付けましょう。
馬は聴力が優れている
自然の中では、草食動物である馬は肉食動物の接近にいち早く気づき逃げる必要がありました。そのため、馬の聴力はとても優れています。
例えば単に「人間にとって小さな音でも聞き取れる」というだけでなく、人間にはあまり聞こえない高さの音もしっかりと聞き取ることができるのだとか。
つまり、人間にとって大した音でなくても馬がビックリしてしまう可能性は十分にあり得るということですね。
変わった音にも要注意
音量自体が大きくても、例えば装蹄師さんの作業音やオガを移動するトラクターの音など慣れている音ならばほぼ無反応な馬もいます。逆に、音量自体は小さくても普段あまり聞かない物音がするとビクビクして気が立ってしまう馬も。
私が通う乗馬クラブでも、カップに入ったアイスコーヒーをストローで飲み終わるときの「ズズーッ」という音に驚いて馬房にいた馬が跳ねてしまったことがありました。水筒で水分を取っている会員さんが多いので、おそらくあまり聞いたことがない音だったんですね。
また、聞きなれた人の声でも、急な笑い声・大声・キャーキャーという高い声などは馬が驚きやすいと言えます。厩舎で雑談する機会もあると思いますが、話が盛り上がって馬を驚かさないように注意してあげましょう!
急な動きや不審な行動をとる
馬は人間の動きをよく見ています。そして、自分のほうが何倍も体が大きいにもかかわらず、人間の動きにかなり反応を示します。最後に、馬の前ではあまりしないほうが良い動きについていくつか見てみましょう。
手を大きく振るなど
人が大きく手を上げても、馬の頭よりかなり低いですよね。ですが、例えば「おーい!」というふうに広げた手を頭の上で大きく振ったり、急に人が手をバッと上げたりすると馬はかなり驚きます。
そのほか、馬の目の前で急に走ったり、飛び跳ねたりといった動きも馬は警戒することが多いようです。もしかすると、動きと同時に普段より大きな足音がする、という部分にも驚いているかもしれませんね。
馬は「普段」を理解している
馬と過ごしていると「とっても頭のいい動物だな」と感じる場面がたくさんあります。その中の一つとして、馬は日ごろの経験から「普段はどうか」をちゃんと理解しているという点が挙げられます。
今回NG例として挙げた「大きな声」なども、レッスン中の指導のための大きな声には驚かないけれど、普段あまり大声で話さない場所で同じくらいの声量を聞くと馬が驚く、といったケースも。
馬と上手に付き合うためには、一般的なコツを押さえつつ「普段どう過ごしているか」をだんだんと知っていくことも大切なのかもしれませんね。
まとめ
馬を警戒させてしまう行動は意外に多いので、初めのうちは少し気を抜くとウッカリ今回紹介したNG行動をしてしまうこともあるかもしれませんね。ですが、馬と過ごすうちに自然と身についてくる部分もあるので、硬くなりすぎず少しずつ慣れていきましょう!