【読めそうで読めない?】「馬」の漢字が付く生き物
馬といえば、美しい四肢を伸ばして草原を駆け抜ける姿が思い浮かびますが、実は身の回りには「馬」という漢字が使われている意外な生き物たちがたくさんいます。
読めそうで読めない難読漢字から、ちょっとユニークな由来を持つものまで、今回は「馬」の字がつく生き物を難易度別にご紹介します。知的好奇心を刺激する豆知識を覗いてみましょう。
レベル1:馬面剥
「馬面剥」と書いて「ウマヅラハギ」と読みます。
この名前は、文字通り「馬のような面長な顔をした、皮を剥ぐ魚」という特徴に由来しています。カワハギ科に属する魚で、本州以南の日本全国の沿岸や岩礁域、藻場などに広く生息しています。
最大の特徴は、その名の通りの長い顔立ちと、ザラザラとしたぶ厚い皮です。カワハギの仲間と同様に、このぶ厚い皮は手で簡単にペロッと剥がすことができるため、「剥(はぎ)」という名前がついています。
古くから大衆魚として親しまれ、市場には皮を剥いた状態で安価に流通することが多いですが、実は冬から春にかけての時期、身が締まって美味しくなるだけでなく、非常に大きな「肝」を蓄えるようになります。この肝が「海のフォアグラ」とも称されるほど濃厚で絶品であり、肝和えや鍋料理、お刺身などで楽しまれる高級食材としても高い評価を受けています。
地域によっては「ナガハゲ」や「チュンチュン」などユニークな地方名で呼ばれることもあり、富山県などではブランド化の取り組みとして「魚津寒ハギ」といった名称でPRされることもあります。
一見すると地味な姿に見えるかもしれませんが、馬のような愛嬌のある顔立ちと、グルメを唸らせる絶品の味わいのギャップが、この魚の最大の魅力と言えるでしょう。
乗馬の合間に海の世界に思いを馳せてみると、自然の造形の面白さに驚かされますね。
レベル2:水馬
「水馬」と書いて、なんと読むでしょうか。
正解は「アメンボ」です。「すいば」とも読まれることがありますが、生き物の名前としては「あめんぼ」が正解です。水面をスイスイと滑るように移動する姿は、まるで水の上を走る馬のようであることから、この漢字があてられました。
アメンボは半翅目アメンボ科に属する昆虫で、池や川、田んぼなどの静かな水面で誰もが一度は見かけたことがある身近な生き物です。彼らが水面に浮いていられるのは、細長い脚の先に水を弾く微細な毛が無数に生えているためで、表面張力を利用して沈むことなく素早く滑走することができます。
実は、この「アメンボ」という不思議な呼び名の由来は、雨ではなく、身体から「飴(あめ)」のような甘い匂いを分泌することから「飴坊(あめぼう)」と呼ばれ、それが変化して定着したという説が有力です。
漢字で書くと「水馬」のほかに「水黽」と書くこともあり、文字の持つダイナミックな印象とは裏腹に、水面を優雅に漂うその姿には独特の美しさがあります。
乗馬を愛する人にとって、馬の足取りと水面を滑るアメンボの動きには、どこかリズミカルで軽やかな共通点を感じ取ることができるかもしれません。
普段何気なく見過ごしている小さな昆虫にも、このような風流な漢字と面白い生態が隠されているのは、まさに自然の奥深さの表れと言えるでしょう。
レベル3:馬陸
「馬陸」と書いて「ヤスデ」と読みます。
これは難易度が一気に上がる漢字ですが、正解を知ると思わず納得してしまう由来があります。
ヤスデは、数十個以上の体節を持ち、短い多数の歩脚を備えた節足動物です。見た目がムカデやゲジゲジに非常に似ているため混同されがちですが、ムカデが肉食性で捕食のための鋭い毒顎を持っているのに対し、ヤスデは腐植食性で落ち葉や朽ち木などを食べるおとなしい生き物です。
危険を感じると体をクルリと丸める習性があり、人を襲うことはありません。
では、なぜ「馬陸」という漢字が使われているのでしょうか。その理由は、ヤスデが多数の脚を使って地面をうねるように進む姿や、その長い体躯が、まるで「馬が通ったあとの陸(みち)」のようであるから、あるいは「馬の列」のように見えたからという説や、多数の脚が並んで進む様子を陸上の馬に見立てたことに由来しています。
英語名では「Millipede(千の脚)」と呼ばれるように、その外見は非常に特徴的です。日本の古くからの呼び名では「円座虫(まどろむし)」などとも呼ばれ、環境の変化や土壌の健康度を示す指標生物としての役割も持っています。
不気味に見える外見の裏腹に、森の生態系のなかで落ち葉を分解し、土を豊かにする重要な役割を果たしている縁の下の力持ちです。漢字のもつスケールの大きなイメージと、足元でひっそり暮らす小さな生き物の姿のギャップに、日本語の奥ゆかしさと観察力の鋭さを感じずにはいられません。
まとめ
身の回りには、「馬」の漢字が使われているユニークで興味深い生き物たちがたくさんいます。魚から昆虫、そして多足類にいたるまで、その姿や生態を馬に見立てた先人たちの豊かな想像力には感心させられますね。
乗馬を通じて実際の馬に親しむだけでなく、こうした漢字の豆知識を知ることで自然を眺める視点がより一層楽しく深まりますね。