馬にも「つむじ」がある?

馬にもつむじがあるのをご存じですか?馬の体毛は斜めに生えているので、毛の流れがあってつむじができやすいそうです。しかし、同じつむじでも人間のつむじと馬のつむじは、特徴が大きく異なるようです。しかも、つむじの数や場所によって、馬の性格がわかるとか?今回は馬のつむじについて深掘りします。
どこにあるの?

人間のつむじは後頭部にありますが、馬の場合はどうなのでしょうか?実は…体中のいたるところにできるんです。これは馬の毛の生え方に秘密があります。馬の毛は斜めに生えているため、毛の流れが体中にあって、結果としてつむじがたくさんできます。顔からお尻まで、つむじができる場所に応じて、それぞれに名前までついています。つむじの形にもいくつか種類があるようですが、実際はさまざまな形が組み合わさって、複雑で独特な形を形成するものも多いようです。つむじができる場所や形は個性があり、一頭として同じ馬はいません。人間でいうところの指紋に近いイメージですね。
馬の個体識別に利用

指紋は人によってそれぞれ違うため、個人特定に使われます。実は、馬のつむじこと「旋毛(せんもう)」も日本では個体識別に使用されているんです。例えば、同じような毛色、体高、星、ソックスの馬の馬房が隣り合わせの場合はややこしいですよね。サラブレッドの場合、現代では取り違えが起きないようにマイクロチップを耳に埋め込んであります。マイクロチップを読み取りさえすれば、そっくりな馬でも個体識別を簡単に行うことができます。しかし、マイクロチップがなかった時代では、この「旋毛」をそっくりな馬を識別するために使っていたんです。スキャナーがない場合は、今でも旋毛を確認するのが一番早く識別できる方法です。
馬の登録情報にもつむじの記載がある
サラブレッドは、血統を管理している機関に登録する必要があります。登録に際して、日本では登録機関であるジャパン・スタッドブック・インターナショナル社が実馬を確認したのち、血統書や個体確認書を作成して登録します。
登録には血統登録と繁殖登録があります。生まれた仔馬の個体識別情報や血統を登録するのが「血統登録」です。繁殖登録は繁殖馬の血統や成績を登録するものです。海外から輸入された馬はパスポートを持っており、そのパスポートには個体識別の情報が載っています。その情報と実馬に齟齬がないのか、やはり個体検査をして繁殖登録を行います。
また、血統登録をした馬には健康手帳が発行されます。この健康手帳は馬が移動をするたびに必ず馬と一緒に保管されるものです。ワクチン接種歴なども記録してありますが、そこにも個体識別の情報として旋毛の情報が記載されています。
どんなふうに登録される?
ジャパン・スタッドブック・インターナショナル社のホームページに掲載されている血統書のサンプルには、特徴が「流星鼻梁白断鼻梁小白鼻白断上唇白下・唇小白・珠目正・波分二長・左初地・沙流上・前左後三細長白・右後一白」と記載されていました。まるで暗号のようです。
最初の「流星鼻梁白断鼻梁小白鼻白断上唇白下」は顔の白斑を示すものです。白斑とは、白い差し毛のことで、つむじ同様に個体識別の大切な情報です。興味のある方は、この仔にどんな流星がはしっているのか、下記のリンクから個体確認書のサンプル(PDF)をご確認ください。また、最後の「前左後三細長白・右後一白」は四肢に見られる白斑の特徴を示しています。「前左後」は両前肢と左後肢を示し、「右後」は右後肢を示しています。
2番目に記載のある特徴「珠目正」は顔にあるつむじの特徴を示しています。「珠目(しゅもく)」とは鼻梁中央より上の部分にあるつむじのことを指しています。「正」というのは、場所を示します。目と同じ高さにあるものが「珠目正」。それより上にあれば「珠目上」、下にあれば「珠目下」と表記されます。また、顔にはつむじが複数ある馬もいますので、個数も記載されます。珠目につむじが2つある場合は「珠目二」とします。
同じように「珠目正」以降のつむじ暗号を解読していくと「首の下付け根側の2/3(波分/なみわけ)に10cm以上の長いつむじが2つ(二長)、左前肢の球節から付け根にかけての部分(左初地)に1つ、後肢の球節から飛節にかけての部分(沙流上/さるのぼり)に1つあります」という意味になります。
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馬の性格も分かっちゃう?

昔からつむじの位置や数によって、性格に特定の傾向がみられるとも言われています。
同じ位置に同じつむじのある馬が同じ性格なのかと言えば、そうではないかもしれません。血液型占いのようなものかもしれませんね。
少し前の研究ですが、「コーニック馬の額のつむじの遺伝率」という論文が発表されています。また、乳牛の気性と旋毛の関係性も研究されており、「旋毛という外部形態から気質の関係が示唆された」と報告されています。そう考えると、同じ大型動物である馬の場合も、気質とつむじに関係性があるというのもあながちありえない話ではないかもしれませんね。ちなみに、人間の場合、つむじが右巻きか左巻きかは遺伝によるものだそうです。
馬のつむじと性格に関して特に有名なのは、顔につむじが2つ以上ある馬はやんちゃな馬が多いというもの。しかも、数が多ければ多いほど、やんちゃ度が増すと言われています。また、顔のつむじは発現している場所によっても性格が違うと言われています。目の上につむじがある馬はおとなしい、目の高さにある馬は普通、下にある馬は少しやんちゃだといわれることもあるそうです。また、臀部のつむじ「後双門(うしろそうもん)」がある馬は気性の荒い馬が多いとも言われています。
まとめ
今回は馬のつむじについて深掘りしました。馬の個体識別には、マイクロチップという技術とつむじや白斑の確認というアナログな手法が併用されていて面白いですよね。今の時期は冬毛なので、顔などは比較的分かりやすいはずです。みなさんも是非、愛馬やパートナーのつむじ探しに挑戦してみてください。