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馬にとって大切な「水」

多くの動物は、「食べずに生きられる期間」よりも「水分を摂らずに生きられる期間」のほうが短いといわれています。馬も例外ではなく、水は必要不可欠。今回は、暑い季節に特に気を付けたい「馬の水分補給や脱水症」について解説していきます!

体内の水分量と一日に必要な飲水量

馬にとって大切な「水」

最初に、馬の体内にある水の量と、必要な飲水量についてみていきましょう。私たち人間と似ている部分も多いので、覚えやすいはずですよ。

馬の体内水分量と飲水量

成人の体内水分量は体重の60%といわれていますが、馬も同じく体重の60%前後が水分です。

ただし、必要な水分量は人間よりもやや多く、体重1kgあたり50mlの飲水が必要なのだとか。乗馬クラブなどでよく見かけるアラブ馬やサラブレッドの体重は400kg前後なので、与える水の量は1日に20L前後が目安になるでしょう。

ちなみに、私たちにとって身近な動物である犬も、体重1kgあたり40~60mlの水を飲むという点で実は馬と同じです。しかし、馬は身体が大きいだけに、実際の水の量にすると「すごくたくさん飲むんだな!」と感じるのではないでしょうか。

水の量は環境によって調整を!

なお、今回紹介した飲水量は気温20℃くらいの快適な環境を想定したもの。このように涼しい時期と比べると、暑い時期には飲水量が79%も増加するという研究もあるようです。

運動量や環境により必要な水分量は変わるので、基本の「体重1kgあたり50ml」だけでなく、馬の様子や環境を考慮して水をあげることがポイントになります。

水を与えるタイミング

馬にとって大切な「水」

馬が好きなときに水を飲めるように、馬房では常に水を切らさないことが重要。しかし、馬が特に水を必要としているタイミングはいつなのでしょうか?

運動後

1つめの給水タイミングは、運動後。みなさんも、汗をかいたあとには水を飲みたくなるはずです。それと同じで、運動後の馬たちも水を飲みたいと感じていることが多いようです。

しかし、運動後は手入れのために洗い場に繋ぐので、馬の意志で自由に水を飲めないことも多いでしょう。素早く馬装を解いたら、バケツなどに水を汲んで鼻先に近づけてあげましょう。

なかには「毎回やっても飲まないんだよね…」という馬もいるかもしれませんが、それでもオススメしてみることは大切です。

なお、馬にもいろいろな嗜好があり「冷たすぎる水が好きではない」という馬も。このような場合には、運動前に馬装をした時点で水を汲んで、邪魔にならない場所に置いておいたものを運動後に与えると飲んでくれるかもしれません。

食事前

2つめの給水タイミングはエサを食べる前です。しかし、馬房にいれば馬は自分のタイミングで水を飲みますし、昼時は運動後の給水→そのまま食事ということも多いかもしれませんね。

そのため、あえて人間から水をオススメする場面は少ないかもしれませんが、食前に水分を摂ることは消化を助け、疝痛予防になることは知識として覚えておきましょう!

なるべく食前に水を飲んでもらうには、エサを配るより前に馬房の水を清潔なものに換えるのも大切。これは、においなどから「古い水だ」と感じると飲まない馬もいるためです。

そのほか、暑い時期は特に「水に少量の塩分を混ぜると好んで飲んでくれる」「飲水が進まない場合などは飼料(キューブ)を水でふやかして与える」といった工夫をしている厩舎もあります。

脱水症の症状

馬にとって大切な「水」

ここまでは、適切な体内水分量や給水についてお話してきました。では、もし水分が十分に摂れないと馬にはどのような変化が起こるのでしょうか?ここからは、馬の脱水症について少し解説します。

脱水症とは?

体内の水分は、血液やリンパ液、細胞などに含まれ身体のさまざまな機能が正常にはたらく手助けをしています。そのため、水分が不足すると喉が渇くだけでなく体調にも変化が現れます。

この状態が脱水症で、馬の場合には体重の3%の水分が失われると脱水による体調変化が起こり始めるとされています。3%と聞くと少ないと感じるかもしれませんが、体内水分の12~15%を失うと命に関わるため、小さな変化から早期に脱水状態に気付くことが大切です。

脱水症になると何が起こる?

では、脱水症になると具体的にはどのような変化が起こるのでしょうか?脱水症の症状として代表的なものには下記の4つがあります。

  • 食欲の低下
  • 尿の濃縮
  • 皮膚や粘膜の乾燥

食欲の低下は分かりやすい変化なので「軽い夏バテかな?」で済まさずに様子をよく観察しましょう。また、馬房の中ではオガに吸い込まれて尿の色は分かりにくいかもしれませんが、洗い場などで「尿の色が濃い」と気付いたらこまめに水をあげてみることも大切です。

皮膚や粘膜の乾燥は分かりにくい変化ですが、脱水症になると目の周囲が普段より少しくぼんでいるように感じたり、歯茎が青白く乾燥しがち。また、お手入れ中に「皮膚の状態が少し違うかな…」と気付く方もいます。

暑い時期のほか、馬が下痢をしているときなども脱水症をおこしやすいタイミングなので要注意です。

脱水症のチェック方法

馬にとって大切な「水」

馬のお世話をしたり、馬房で馬の様子を見て「もしかして脱水気味?」と思ったときに、手軽に確認する方法はあるのでしょうか?今回は、2つのチェック方法を紹介しますのでぜひ試してみてくださいね。

チェック①皮膚をつまむ

人も、脱水になったときに手の甲や腕の皮をつまむと普段より戻りにくいといわれています。馬も同じですが、馬の場合には肩の上あたりの皮膚で確認します。

皮膚をつまんで、元の状態に戻るまでに2秒以上かかれば馬が脱水を起こしているサイン。戻るまでの時間が長いほど、脱水が重症化している証拠です。

チェック②粘膜を押す

もう1つのチェック方法は、馬の歯茎を指で押してみること。押してパッと離してから1.5秒以内に色が戻るのが正常です。

一方、色が戻るまでに2~3秒かかる場合は脱水の可能性が高く、4秒以上かかる場合には深刻な脱水といえます。

まとめ

今回は、馬の水分補給と脱水についてお話しました。馬はたくさんの水分補給が必要な動物なので、お世話をするなかで必要に応じて飲水をすすめることが大切。みなさんも、レッスンの際には馬と自分自身の水分補給どちらも気にかけてみてくださいね!

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