【夏はすぐそこ!】馬への暑さ対策とお手入れの基本
夏の乗馬って、とても暑いですよね。もちろん、暑いと感じているのは私たち人間だけではありません!馬たちを熱中症から守るために、私たちにはどのようなことができるのでしょうか?今回の記事では、レッスンの前と後にできる馬の熱中症対策について詳しく解説します。
熱中症の対策
もともと野外で生活していた馬たちも、炎天下では熱中症に陥ることがあります。最初に、馬の熱中症のことや騎乗前にできる熱中症対策について確認していきましょう。
馬の熱中症は増加傾向
みなさんの中にも「日本の夏って年々暑くなってない?」と感じている方は多いのではないでしょうか。実は、2020年の日経新聞で「2000年以降から競走馬の熱中症が急増している」という内容が取り上げられたことがあります。
乗馬クラブで熱中症になった馬の統計は無いようですが、おそらく同じように増加傾向にあるはず。大好きな馬たちの健康を守り、安心してレッスンをするためにも馬の熱中症対策は重要です。
人間の場合は「頭痛がする」「気分が悪い」など言葉で症状を伝えられますが、馬の場合は「息が荒くなる」「落ち着きがなくなる」など些細な変化が熱中症のサインになります。気温が高い日は、いつも以上に馬の様子に気を配りましょう。
暑い時期は「水と塩」が大切!
私たちも汗をたくさんかいたら水分補給に努めますよね。このとき、水ばかりを摂っていると汗として失われた塩分が補給されず体内で電解質(イオン)のバランスが崩れてしまいます。
近年では「汗をかいたら水分だけでなく塩分(ナトリウム)も摂るべき」という認識が一般的になり、塩分補給するためのタブレットや、塩分を含んだ「経口補水液」などが注目されるようになりました。
このように夏場の水分補給で水分とともに塩分を必要としているのは、馬も同じ。馬房にブロック状の塩を置いて塩分補給できるようにしたり、糖分を摂りすぎないように気を付けながらスポーツドリンクなどをあげても良いでしょう。
騎乗前にできる対策
熱中症対策では汗で失われる成分を補うことも重要ですが、そもそも可能な限り体温の上昇を抑えることが第一です。騎乗前の準備は屋根付きの洗い場など日陰で行い、また首周りに熱がこもらないように鬣(たてがみ)を編み込んだり結んであげるのも良いと思います。
もちろん準備だけでなく、レッスン自体も覆馬場など日陰で行うことができればさらに良いですね。そして、さらに重要なのが騎乗した後の熱中症対策。次の見出しからは、騎乗後にできる熱中症対策を細かく解説します。
馬具をすぐ外してあげる
レッスンが終わると、馬たちは毛の色が変わっているのが分かるほど汗だく。そんなときに、まず最初にできる熱中症対策が馬具をすぐに外すことです。
体を覆われていると暑い!
馬が鞍をつけている状態は、私たちがリュックサックを背負っているようなもの。背中が何かで覆われていると、汗が蒸発しにくく気化熱で身体を冷やすことができません。そのため、レッスンが終わったら可能な限り早く馬装を解いてあげることも熱中症対策になります。
洗い場に到着したら鞍だけではなく頭絡も外して、お手入れを始める前に水をあげましょう。鼻先で確認するだけで飲まない馬もいますが、たいていの場合はゴクゴクと飲んでくれるはずです。
馬装を解けない場合の対処法
暑さの厳しい季節に同じ馬を続けてレッスンに使うことは、馬にとって大きな負担となります。しかし、乗馬クラブの規模や時間帯によっては馬装を解かずに次のレッスンへ・・・という場合もあるかもしれません。
そんなときは、すべての馬装は解けなくとも腹帯だけはいったん緩めましょう。また、覆馬場が無く炎天下でレッスンをしている場合は、レッスンの合間だけでも洗い場など日陰で過ごすことをおすすめします。
馬を丸洗いしてあげる
馬は体重に対する筋肉量が多く、運動すると非常に体温が上がりやすいと言われています。馬たちの身体が火照ったレッスン後に、ゆっくりと体温を下げるためには「丸洗い」をしていきましょう!
水をかけるときは末端から
暑がっている馬たちの体温を一刻も早く下げてあげたいところですが、あまり急激に体の中心部を冷やすと心臓に大きな負担がかかります。そのため、水やぬるめのお湯をかけるときは「心臓から遠い部分(足先など)から徐々に」が重要です。
蹄も水で冷やすことで体温を下げる効果があるので、最初は蹄についた泥を水洗いしてから脚→臀部→背中と冷やしていくのも良いでしょう。ただし、足先→体幹と下から上へ洗っていくと、せっかく脚をきれいにしても身体を流したときに汗を含んだ水が脚にかかって再び汚れてしまうかも・・・。
そのため、足先から一通り体を冷やしたら洗うときは首→胴→足先といったように上から下に向かって作業を進めていきましょう。
首と脚の付け根がポイント
人間が熱中症になった場合は「首とわきの下を冷やすと良い」と言われます。これは、太い血管が体表近くを通っている部分を冷やせば体温が下がりやすいから。馬も同じく、冷やすときのポイントは首と脚の付け根(腋窩や股)です。
丸洗いの最初に全身を冷やしていくときは、足先から徐々に脚の付け根まで水をかけていったら、腋窩や股は少し長めに冷やすとあまり時間をかけずに身体の熱をとることができます。その後、身体まで水を掛けたら首もゆっくりと冷やしましょう。
しっかり乾かしてあげる
夏は馬の体温を下げることに気を取られがちですが、高温多湿な環境は蹄の大敵。夏はただでさえ湿度が高いですが、丸洗いの頻度が上がることで蹄が濡れている時間も長くなります。
蹄を湿ったままにすると蹄叉腐乱を起こしたり、蹄周辺の炎症を起こす原因になりかねません。汗をシッカリと流して身体の熱も取れたら、丸洗いは短めに切り上げて全身の水気を切り、乾いたタオルでよく拭きましょう。
脚や蹄冠・蹄に触れて水気が十分取れたことを確認したら、あとは蹄底です。丸洗いに使った洗い場は下が水浸しなので、できれば地面が乾燥している場所に移動して蹄底や蹄叉を乾かします。
まとめ
人間も馬も、熱中症予防の基本は同じ。なるべく暑さを避けながら、運動後には身体にこもった熱を逃がす工夫が必要です。気候の厳しい季節だからこそ、馬の小さな体調変化を見逃さず人馬共に健康に過ごしたいですね!