【北海道の馬】ばん馬とどさんこの違い
ばん馬とどさんこ、聞いたことはあるけど、どちらもよく知らないという方が多いのではないでしょうか。どちらも、北海道にゆかりを持つ品種です。同じ馬ではありますが、見た目から性格まで、かなり違うみたいですよ。今回は、ばん馬とどさんこについて迫ってみます。
身体的特徴の違い
ばん馬は、北海道帯広市の帯広競馬場で重いそりを引きながら、障害物を越えていく競走をする体の大きな馬です。馬の体格による分類では、重種馬とされています。重種馬は体重が800kg以上の馬のことを言い、時には1トンを越える馬もいます。体高も180cmほどあり、近くで見ようとすると顔を見上げなくてはならないほど。首も太く、蹄も大きいんですよ。その体の大きさに圧倒されます。
ばん馬たちのルーツは海外にあります。ばん馬のうち、「半血」と呼ばれるのは、フランスやベルギーから輸入されたペルシュロン種、ブルトン種、ベルジャン種の混血のみ。それ以外の混血は「日本ばん系種」と呼ばれています。北海道の開拓民が農業や林業での力仕事に輸入した重種を連れてきて、混血が進み定着していきました。そのうち、開拓民が「うちのばん馬自慢」として、ばん馬同士に引き合いをさせるようになりました。これが、ばんえい競馬の始まりだと言われています。
逆にどさんこは、かなり小ぶりな馬です。体高は130cmほどで、体高147cm未満の馬の総称であるポニーに分類されます。しかし、体には筋肉がしっかりついて、重心も低めで安定しており、乗用にも適しています。テレビや映画の時代劇では、サラブレッドが使われていますが、実際に昔、侍が乗っていたのは、このどさんこたちのように小ぶりな土着の馬たちだったと言われています。
どさんこは「道産子」とも表記しますが、実は北海道にもともと馬はいませんでした。現在、どさんこと呼ばれているのは、南部(現在の青森県、岩手県、秋田県にまたがるエリア)から人が持ち込んだ南部馬が、北海道の気候に適していき根付いた個体の子孫なんです。南部の人たちは、雪がないころに北海道で作業をして、冬は馬たちを北海道の山に放して、南部へと帰っていきました。翌年、雪がなくなったら北海道に入り、山で馬たちを捕まえて、また使役に用いていたそうです。
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性格の違い
ばん馬たちは一般的に温厚でおとなしく、人に従順だと言われています。体の大きさでは圧倒されますが、とても穏やかな顔つきをしているんです。
どさんこは、頭のいい個体が生き残ってきたと言われています。そのため、人間のことをよく覚えて信頼し、温厚で従順な馬もいれば、少しずるがしこい面を持つ馬もいるのだとか。何度、牧柵を直しても、ちょっとしたすき間をみつけて放牧地から脱走してしまったりすることもあるそうです!
活躍の場の違い
ばん馬は力持ちのため、重いものを運ぶ能力に優れています。農具を引いて、荒地を耕したり、軍馬として供用されたりしました。開拓民として北海道にきた方たちにとって、一緒に仕事をしていく大切なパートナーでした。
また、どさんこたちも荷物を運んでいました。斜面も苦にしないため、山間部で切り出した木材の搬送もどさんこの仕事でした。どさんこは同じサイドの足が同時に動かす側対歩のため(サラブレッドや乗馬のほとんどは斜体歩)、荷崩れしづらく、荷物が痛むことが少ないことから、物や道具を運ぶときに重宝されていました。また、体が丈夫で粗食にも耐えうるため、長距離の移動にも適しているとも言われています。
その他の違い
ばんえい競馬で活躍するばん馬たちはサラブレッドと同様に血統が重視されます。現在でもばん馬の生産牧場が存在しており、大切な血脈をつないでいます。開拓時代に入植し、ばん馬を生産していたご家族の子孫が何代にもわたって、生産を続けているのだそうです。サラブレッドの生産牧場とは違って、兼業でばん馬の生産をしている生産者さんも多いのが特徴です。しかし、生産者の数も低下の一途をたどっており、後継者不足が懸念されています。
一方、どさんこには、専門の生産牧場は道東にいくつか存在していますが、その数はあまり多くはありません。現在、どさんこは約1000頭ほどが登録がされており、毎年100頭前後、新規の登録があるそうです。品種の維持のために活動している方や趣味でどさんこを生産している方が多いようですね。数は少ないとしても、生産者のみなさんはとても情熱を持って、どさんこを生産されています。見学やアクティビティが可能な牧場もありますので、北海道にお出かけの際には、是非、訪ねてみてくださいね。
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まとめ
今回はばん馬とどさんこの違いについて深掘りしてみました。それぞれの体格や性格から、任される仕事にもかなり違いがありました。しかし、どちらの品種も寒さに強く、北海道で暮らし始めた人たちのよきパートナーとして活躍し、現在のように定着しました。北海道と馬との結びつきは、今後も受け継がれていくはずです。