【こんなにスゴイ!】馬が持つポテンシャル
馬との関わりが深い方は、ふとした瞬間に「こんなこともできるの?」と驚かされることもあるのではないでしょうか?
今回の記事では、跳躍力・走行速度・持久力のほか、環境への適応能力など馬が秘めるポテンシャルについて紹介していきます!
ジャンプ力
練習では数十センチの障害物から始めますが、大会では難易度の低い障害物でも1m前後の高さがあります。諸説ありますが、これくらいの高さは馬から見ると「人間にとっての陸上競技のハードルくらいの高さ」といわれています。
なお、日本馬術連盟が主催・公認する障害馬術競技は難易度により6段階に分かれています。各区分で使用される障害物の最大高は下記のとおりです。
大障害A:~160cm
大障害B:~150cm
中障害A:~140cm
中障害B:~130cm
中障害C:~120cm
中障害D:~110cm
国内トップレベルの選手たちが飛んでいる障害は高さ160cm。この高さになってくると、騎乗者の技術力が必要なのはもちろん、障害馬術を得意とする馬を選ぶことが多いでしょう。多くの馬にとって、160cmは「無理ではないけれど続けてスムーズに飛ぶのは大変なこともある」高さと言えそうです。
では、障害馬術でのジャンプの最大記録はどれくらいなのでしょうか?ジャンプの高さが試されるピュイサンスという競技の世界記録は、ドイツのフランケ・スターロ選手が保持する約240cm!
この高さも30年以上破られていないスゴイ記録なのですが、実は公式な試合以外での世界記録は247cm。こちらはチリのアルベルト・モラレス氏がイベントで出した記録であり、なんと70年以上破られていないそうです。
ちなみに、ジャンプが高いほど騎乗者は障害物の前後でバランスを崩しやすいものですが、なんと鞍無しで212cmのジャンプを披露したロバート・ウィテカー選手という強者が。
馬は人間に指示されなければ無駄な跳躍はしないと言われていますが、成人男性を乗せてここまで飛べるなんて、馬だけだとどれくらい飛べるのか気になりますね。
最高速度
高さの次は、速さについてです。乗馬で用いられる基本的な歩様の中で、最も速い歩様は「駈歩」です。初心者の方の中には、スピード感がありすぎて怖いという方もいるでしょう。
しかし、駈歩の速さは時速20kmほど。市街地でロードバイクに乗る程度の速度で、慣れてくればフワッフワッと風を切る感覚が気持ち良いと思えるようになるはずです。この速さが、馬にとって一番速いのでしょうか?
実は、馬にはもっとスピードが出せる歩様があり、これを襲歩(しゅうほ)といいます。競馬の馬たちはこの歩様なので、見たことがある方は多いでしょう。襲歩の平均時速は時速70kmほど。駈歩の3倍以上のスピードで、一般道を走ったらスピード違反になるほどの速度です。
足が速い馬といえばサラブレッドというイメージがあると思いますが、実は速さの記録に名を残しているのはクウォーターホースという品種。名前のとおりクウォーターマイルレースに用いられることが多い品種です。
サラブレッドよりも筋肉質で機動力に優れ、302mレースではなんと時速92.6kmを記録したことがあるのだとか。馬は法律上「軽車両」なので高速道路には入れませんが、スピードだけなら高速道路でも問題ない速さですね。
持久力
馬はかなり速いスピードで走れますが、例えば最高時速90km近くで走れたとしても、その速度を1時間出し続けられるわけではありません。
そのため、馬の体力を加味しながら一般的な馬と騎乗者が1日にどれくらいの距離を移動できるか考えた場合、実は常歩で地道に進むのが最も長距離を移動できるとされます。この場合の1日の移動距離は、約60kmです。
ただし、馬の持久走ともいえる競技「エンデュランス」では、1日をかけて約160kmもの距離を走破します。通常は「ずっと常歩で1日60km」が一番効率が良いとされる中で、そこからさらに100km近く距離を伸ばすなんてすごいですよね。
エンデュランスでは、途中のチェックポイントで獣医師などによるチェックが行われ、馬に無理をさせていると判断されれば失格。馬の体力と健康に関する知識、そして、休憩と走行のバランス感覚がモノを言う競技です。
環境適応能力
馬は頭がよく、昔から広い地域で人間と生活を共にしてきました。しかし、もとから世界中のほとんどの地域に馬がいたわけではありません。いくつかの地域に、それぞれの気候風土に合った馬が生息していたと考えられます。
たとえば、寒い地域に住む馬は毛が長く、森に住む馬は豊かなたてがみを持っています。このような見た目の違いは、偶然ではなく環境に適応した結果でしょう。
さらに、馬がいない地域に住む人たちは、他の地域の馬の中から自分たちの地域の気候や風土に適した馬を連れてくることで生活に馬を取り入れました。また、適した馬がいないときには、馬の交配を重ねながら地域に合った品種を作り上げてきたのです。
その結果、現在では馬の品種は200種を超えるといわれています。なかには身体的特徴ではなく身体能力・血統などを証明するような分類もありますが、それを除いてもかなりの数です。この数と生息地域の広さからも、馬は環境への適応能力が高い動物といえます。
まとめ
馬には、日頃接する中で「すごい!」と感じられる能力もあれば、知ってみると実はすごい!というポテンシャルもあります。
乗馬では「馬を上手に操作する技術」に目が行きがちかもしれませんが、それだけではなく「ポテンシャルを引き出す乗り方」にもぜひ意識を向けてみましょう!