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極寒の地でたくましく生きる「ヤクート馬」

“寒さに強い馬”と聞いてあなたが思い浮かべるのはどのような馬でしょうか。

日本の在来種、道産子(どさんこ)の呼び名で知られる北海道和種を思い浮かべた方が多いかもしれませんね。

海外に目を向けると、北海道よりも遥かに寒い地域で暮らす馬がいます。

今回はその中の一種、ヤクート馬についてご紹介します。

ヤクート馬が暮らすシベリア・サハ共和国とはどんなところ?

極寒の地でたくましく生きる「ヤクート馬」

ヤクート馬(Yakutia horse)はロシア連邦のシベリア、サハ共和国原産の馬。まずはサハ共和国がどのようなところなのかを見てみましょう。

※シベリア:ロシア連邦領内、ウラル山脈の東側、アジア大陸北半の地域。

サハ共和国の地理と民族

サハ共和国はシベリア東部に位置し、北極海などの海に面する、日本の面積のおよそ8倍の広大な共和国です。
首都はヤクーツク、主要な民族は日本人と同じモンゴロイドのサハ人(ヤクート人)とロシア人。
北部に住むサハ人はトナカイを飼育して半遊牧的に生活し、南部に住むサハ人は馬や牛を飼っていました。
どちらもゲルに住み、季節によって住む場所を移動するのが伝統的な生活様式です。

サハ共和国の歴史

サハ人は13世紀に中央アジアから現在のサハ共和国がある場所へ移動してきました。
ヤクート馬は、この頃にサハ人が連れてきた馬たちの子孫にあたります。

もともとこの土地に住んでいたエヴェンキ人はサハ人のことを「ヤコ」(Yako)と呼んでいましたが、17世紀初めにこの地域に侵出したロシア人がそれを聞いて「ヤクート」と呼ぶようになりました。

サハ共和国の気候と自然

1926年にサハ共和国北東のオイミャコンでマイナス71.2度を記録し、これは南極大陸を除くと世界最低気温にあたります。

国土に山が多いため冬の寒さは厳しく、内陸部の1月の平均気温はマイナス50度。一方、7月の平均気温は19度まで上がり、寒暖差が70度を超える過酷な気候です。

北極海沿岸の平均気温は1月がマイナス28度、7月が2度と内陸部に比べれば寒暖差は激しくないものの、冷涼で厳しい気候であることに変わりはありません。

ヤクート馬の3つのタイプと特徴

極寒の地でたくましく生きる「ヤクート馬」

ヤクート馬の平均体高は、牡馬が140cm、牝馬が136cmほど。
シェットランドポニー、フィヨルド、アイスランディックホースなどの北方系の馬と共通する、がっしりとした体格、厚いたてがみ、密度が高く長い被毛などの特徴を持ちます。
モンゴルの馬やプジェワルスキー馬(モウコノウマ)と似ていますが、ヤクート馬の方がひと回り大きいです。

ヤクート馬は以下の3つのタイプに分類されます。

ノーザンタイプ(北方系)

最も純粋なヤクート馬といわれ、原種に近いと考えられています。

平均体高は牡馬が139cm、牝馬が137cmほど。

毛色は鹿毛、芦毛、薄墨毛が多く、背中の中心に暗色のラインが入ったり、肢に横縞の模様が入ったりすることがあります。

スモールサザンタイプ(南方系)

平均体高は牡馬が135cm、牝馬が132cmほど。最も小柄なタイプです。

ラージサザンタイプ

他の品種と交配、改良されたもので、サハ共和国の中部地方で多く飼養されています。

平均体高は牡馬が141cm、牝馬が136cmほど。

こちらの記事でヤクート馬の写真や動画を見ることができます。モコモコのぬいぐるみのようになった冬毛のヤクート馬をぜひご覧ください。

・RUSSIA BEYOND「ヤクーチアの寒さにもっとも強い馬

・世界のタテガミ「マイナス50℃でもへっちゃら!ロシア在来馬のヤクート

厳しい寒さに耐えられる秘密

極寒の地でたくましく生きる「ヤクート馬」

ヤクート馬はサハ共和国に移動してきた800年前から、厳しい環境に身体を適応させて生き延びてきました。
深い雪に覆われた植物を見つけ、蹄で掘り出して食べながら、厳寒の冬の時期も屋外でたくましく暮らすことができます。

体格:サラブレッドなどに比べれば小柄ですが、原種に近い他の品種の馬に比べると大きく、がっしりと頑丈な胴体、短めで丈夫な肢を備えています。

被毛:被毛は他の品種の馬に比べて著しく密度が高く、冬毛の長さは8〜15cmに達します。

代謝のコントロール:秋に身体に脂肪を大量に蓄え、冬には代謝を低下させて脂肪をなるべく維持することができます。また、夏の高温に備え、春には発芽したばかりの草を利用して炭水化物の代謝を高め、蓄えていた脂肪を減らすことができます。

体内の不凍物質:氷の結晶が身体の細胞を破壊しないよう、体内の不凍物質を増加させて細胞を守ることができます。

ヤクート馬の適性

極寒の地でたくましく生きる「ヤクート馬」

他の品種の馬に比べれば小柄ではあるものの、深い雪や原野の中でも早く走ることができるため、貴重な移動手段として大切にされています。また、力も強く、重い荷物を運ぶ荷役馬としても活躍。

ヤクート馬の生乳を発酵させて「クムス」という馬乳酒を作ることもできます。“酒”といってもアルコール度数は1~3%と低く、水分やエネルギー、ビタミン、ミネラルの貴重な供給源です。

まとめ

今回はヤクート馬をご紹介しました。

サハの人々と共に、厳しい極寒の地で暮らすヤクート馬。寒さや荒地に強く、サハの人にとって頼もしくかけがえのない存在です。

いつか現地に会いに行き、クムスも味わってみたくなりました。

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