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【馬場での心理学】馬が感じる恐怖とその対処法

馬は自然界では肉食動物の捕食対象だった歴史から、とても警戒心の強い動物です。ときには、意外なことに恐怖を感じて急な動きをすることもあるでしょう。そんなときに、自分の安全を守りながら馬を安心させるにはどうしたらよいのでしょうか?
今回の記事では、馬が驚いたり怯えたときにみせる反応や、馬が驚いてしまった場合の適切な対処法について詳しく解説します。

馬は怖がり?

【馬場での心理学】馬が感じる恐怖とその対処法

冒頭でも触れたとおり、馬は草食動物であり、人間に飼育される以前は肉食動物にいつ襲われるかわからない環境で生活してきた動物です。人間と馬の歴史は長いですが、このような環境で生き延びるための本能は、今も馬のなかに根強く残っています。

馬の大きな特徴である足の速さや跳躍力も、察知した危険をいち早く回避するために進化した機能といえるでしょう。そのため、もし騎乗中に馬が「危ない!」「怖い!」と感じたときは要注意。普段は人間が意図的に指示しているジャンプや走行以上のスピードで、急な逃避反応を見せる可能性があります。

馬はどんなときに驚くの?

馬が驚いてしまった場合の対策では、周囲の状況から「もしかして馬が驚きやすい状況かも」と予測することも大切です。もちろん馬によって性格や苦手なものは違うので反応はまちまちですが、馬が驚きやすいものとしては下記が挙げられるでしょう。

  • 突然の大きな音
  • 急な動き
  • 見慣れない物や風景

「突然の大きな音」には、人が近くで急に騒いだり、聞き慣れない音がしたりといった状況が含まれます。また、「急な動き」は人間やほかの馬の急な動きだけでなく、風で飛んだビニール袋や何かの拍子に落ちたものが当てはまるでしょう。また、いつもと違う場所にある障害物や、初めて見るものなどは「見慣れない」という理由で警戒することがあります。

馬の驚き方とその反応

馬は驚くと、急停止して周囲の様子をジッとうかがうこともあります。しかし、それだけでなく突然横に飛びのいたり、急発進したりといった方法で危険から距離を取ろうとすることもあるため注意が必要です。さらに、後ろ足で立ち上がることもあるでしょう。

これらの行動は馬にとっては自然な防御反応ですが、突発的に動いた瞬間に馬具でケガをしたり、騎乗者がバランスを崩して落馬したりと事故につながる可能性もあります。

騎乗中に馬が驚いたときにすべきこと

【馬場での心理学】馬が感じる恐怖とその対処法

では、こうした事故を防ぐためにできることはあるのでしょうか?馬が驚くときは、大抵一瞬の出来事ですが、そのときの状況に合わせてできることを可能な限り試してみましょう。

馬が怖がりそうな環境を予測する

馬が驚いた瞬間に対処することも大切ですが、上記のように馬が怖がりやすい状況を把握しておくことも大切です。環境に目を向けると、事前に「今日は風が強いから、馬が物音に驚いたり急に何か飛んできたものに驚くかも」といった予測ができるはずです。

そして、馬が驚くリスクが高そうなときには、馬が落ち着いて「今乗っている人は信頼できる人だ」と感じられる接し方を心がけましょう。特に、馬が周囲を探るように耳をクルクル動かしたり遠くをじっと見つめたりしているときには、すでに風景や音に違和感を感じている可能性があります。

馬が安心できるアプローチ

馬が緊張しているときは「急に暴れたらどうしよう」と人間も不安になるかもしれません。しかし、騎乗者が緊張すると手綱や脚を通じて不安が馬にも伝わり、さらに興奮させてしまう可能性があります。まずは深呼吸をし、全身の力を意識的に抜きましょう

また、馬は低めのゆったりとした声かけに安心感を覚えるといわれています。馬は人間の声の調子もよく聞き取っているので、馬が緊張していたら馬の名前を落ち着いた声で呼んだり「大丈夫だよ」といった声かけをしてあげるのもよいでしょう。

馬が驚いてしまったら

馬が驚いた瞬間は、急激に進行方向が変わったり馬が跳ねたりする可能性があります。そのため、まずは「危ない」と思った瞬間に、重心を柔軟に変えられるように体勢を整えることが大切です。

また、急な体勢の変化に持ちこたえても、その後しばらくは馬が興奮しているはず。このようなときは、無理に馬を制止せずゆっくり動かし続けましょう。特に、怖がっているものに向かっていく・背を向けるのではなく、少し角度を変えて横目でそちらを確認しながら歩かせるのがおすすめです。こうすることで、馬は状況を冷静に把握しやすくなります。

そのほか、小さな円を描くように動かしたり、歩幅を変えたりするのもよいかもしれません。適度に指示を出すことで、馬の意識を騎乗者の指示に向けさせることができます。

馬が驚かないようにするためのトレーニング

馬は長期記憶が優れているため、最初は怖がっていた物や音に対しても、繰り返し経験すれば慣れることができます。ただし、強い恐怖を何度も経験させるのは良いことではないので「恐怖に慣れさせる」のはおすすめできません。

ビニール袋やブルーシートなど風で音が出たり動いたりすると怖がるものを、落ち着いた状態のときにゆっくり確認させることから始めましょう。また、厩舎の近くでラジオを流したままにして、いろいろな音に慣れさせるのも効果的です。

そのほか、外乗で馬場以外の環境に慣れさせたり、小さな競技会から経験させて人混みや拍手などに徐々に慣れさせるのも常用馬として大切なトレーニングといえるでしょう。

毅然とした態度で

【馬場での心理学】馬が感じる恐怖とその対処法

さきほども「人間の緊張は馬に伝わる」という話をしましたが、馬は非常に感受性が高く、騎乗者や世話をする人の気持ちを感じ取ります。そのため、人間が不安そうにしていると、馬も「この状況は危険なのかもしれない」と考え、さらに怖がることがあります。

また、馬はもともと群れで生活していた動物です。群れのリーダーが安全を判断し、他の馬たちがその判断に従ってきたように、人間が馬の「リーダー」になることも大切です。リーダーが毅然とした態度を取ることで、馬は安心できるはずです。

まとめ

馬が驚くのは本能的な行動であり、完全に防ぐことはできません。しかし、騎乗者が適切に対処することで、人間だけでなく馬の安全も守れる可能性が高まります。馬の本能的な危険回避や「こんなものを怖いと感じるよ」という感覚を理解しながら、馬が落ち着いて行動できるよう声かけや指示を工夫してみましょう!

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