とってもデリケートな「馬」
見た目は大きくて、動きも力強く優雅な馬。ですが、実はとっても繊細で人間が思いも寄らぬことですごくびっくりしてしまうこともあります。今回は、そんな馬たちの繊細さに着目して避けるべきことや仲良くなるコツについて解説します!
馬は「繊細さん」
馬の中にも、おおらかな性格の子もいれば神経質な子もいます。とはいえ、大体は人間が思うよりも繊細と考えて間違いありません。まずは、そんな馬たちの「繊細さ」について理由や具体例を見てみましょう。
警戒心は自然界での名残
身近に馬を見ていると「どうしてこんなに驚きやすいの?」「小さなことがすごく気になってしまうみたい・・・」と感じる場面がたくさんあります。そもそも、馬たちはなぜこんなに繊細なのでしょうか?
実は、馬が周りの環境に敏感なのは野生だった頃の名残と言われています。自然界の草食動物は常に肉食動物に襲われることを想定して生活しなければなりません。
もし小動物であれば巣穴に潜って隠れたりすることもできますが、身体の大きな馬たちは巣穴を持たず寝るときも食べるときも平原で過ごすことがほとんどです。そこで馬が選んだのは「敵をいち早く発見して俊足で逃げ切る」という方法。
これが、馬が非常に足が速くて、些細なことに対しても警戒心が強い理由だと言われています。
馬の近くでコレはNG!
そんな馬たちのそばで、私たちがやってはいけないことがいくつかあります。それは、大きく分けるとこちらの2つ。
・突発的な動きをする
・大きな声や聞き慣れない物音を出す
馬は警戒心が強いだけでなく、普段から私たちがどんな作業や動作をしているか意外とよく見ています。そのため、急に両手を広げる・タオルや物を振り回すなどの動作のほか、普段はしないような動きに驚くことも多いです。
また馬は非常に耳が良いので、大きな物音や大声・甲高い叫び声などにも大きな反応を示します。さらに、小さな音であっても慣れない音や正体が分からない音に対しては、落ち着かない様子であちこちをうかがい、音の方向をじっと見つめるようにフリーズしているような場面もあります。
仲良くなるコツ
ここまで読んで「そんなに繊細だったの!?」と驚いた方もいると思います。では、そんな繊細な馬たちと仲良くなるためには、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?
馬が苦手なことを知ろう
ここまで、いくつかの「馬が驚きやすい場面」を紹介してきました。これらに加えて、実際に乗馬をしていると「この馬はこの音がすごく苦手みたい」「こういう場面で怖がっている様子がある」などだんだんと普段関わっている馬たちの苦手なことが分かってくると思います。
このように馬のことを知っていけば「今はこれを気にしているかも」「気にならないように環境を調整してあげよう」「これは避けようかな」と馬の不安が強まらないよう対策することができるようになりますね。
これを続けていくと、馬の方もあなたのことを安心感のある人と認識してくれるので好感度は上がっていくはずです。
馬が安心できる関わりを
環境以外に、私たち人間の行動によって馬が驚いたり不安を感じてしまうこともあります。皆さんも自分を不安にさせる人とは仲良くなりにくいですよね。馬と仲良くなるためにも、馬の不安をあおる行動は避けて安心してもらうことが大切です。
具体的には、馬に話しかけるときは落ち着いた声で話すこと、馬の近くで急に大声や大きな音を出さないこと、馬に近づくときは視界に入りやすい位置からゆっくり近づき、馬があなたのにおいを嗅いで確認する時間をしっかり取ることなどを心がけましょう。
驚かせないで!
馬のことを思えば絶対にするべきではありませんが、ごく稀に故意に馬を驚かせる人がいます。いつもと違う表情や大きな反応を「面白い」と感じるのかもしれませんが、軽い気持ちでやったことが事故に繋がったり馬の今後に悪影響を及ぼすこともあると知っておきましょう。
思わぬ事故の原因に
馬は身体が大きく、力も強い動物。たとえ馬に悪意がなくても、不安を感じた馬が身を守ろうとしてとった行動で人間が大けがをする可能性もあります。また、驚いて跳ねたり立ち上がったりすれば重大な事故に繋がりかねません。
そのことを決して忘れず、馬を故意に驚かすような行為は絶対にやめましょう。それが、自分や周りで作業している人の安全を守ることでもあり、何より私たちとともに歩んでくれる馬たちをケガや事故から守ることにもなります。
人間不信になってしまうかも
馬は記憶力が良く、深くかかわった人間のことは数年のブランクがあっても覚えているとすら言われます。これが大切な人の記憶なら良いのですが、人に故意に脅かされて嫌な思いをしたり、暴力的な扱いを受けたことなども馬はとてもよく覚えています。
そのため、繰り返し人間に恐怖を感じた馬たちは特定の相手だけでなく人間全般に対して威嚇するような行動を見せたり触れられることを嫌がるようになってしまうことがあります。
頻繁に緊張が高まって馬自身も疲れるはずですし、人間にとっても世話や騎乗が難しくなることは想像に難くありません。こうしたケースはもちろん馬のせいではありませんが、この人間不信が原因で「性格的に常用馬に適さない」と判断されてしまうこともあります。
運動能力が高いうちは「癖はあるけれど良い成績を出せることもある馬」で通ったとしても、馬が年を取って運動能力が下がったときには、レッスンに使いにくい馬から乗馬クラブにいられなくなるのは珍しいことではありません。
故意に馬が嫌がることをするのは、その場で馬が嫌な思いをするだけでなく馬の将来にまで影響すると言っても過言ではない行為なので絶対にやめましょう。
まとめ
馬は警戒心が強く人間が思う以上に驚きやすいため、扱いにくいと感じることもあるかもしれません。しかし、馬たちの不安を解消するよう工夫することで、馬にとって「安心できる人」になれるはず。馬と上手にかかわっていくためにも、馬の繊細さや不安の原因について少しずつ理解していけると良いですね。