蛇乗りのやり方とポイントを解説
馬場全体を使って、蛇がうねるように連続したカーブを描いて進む「蛇乗り」。馬の進行方向さえ制御できればなんとなく形にはなりますが、実は正しく蛇乗りをするためにはいくつかポイントがあります。今回の記事では、蛇乗りのやり方や気を付けるべきポイントについて紹介するのでチェックしてみてくださいね!
蛇乗りとは
馬場馬術の科目に出てくる要素でもある「蛇乗り」ですが、馬場・障害を問わず馬をスムーズにコントロールするための大切な要素がいろいろ詰まっています。そのため、レッスンでも蛇乗りだけを重点的に練習することがあります。
蛇乗りとは、上の図のように短蹄跡から出発して左右の半輪乗りを交互に行いながら反対側の短蹄跡まで進む運動です。カーブする回数に応じて三湾曲・四湾曲といった呼び方であらわされます。
やり方
では早速、具体的な蛇乗りのやり方をみていきましょう。蛇乗りでは、まず湾曲する回数に応じて「どこでカーブするか」のあたりを付けておく必要があります。感覚だけで均等にカーブするのは難しいので、目印を決めておくとよいでしょう。
また、蛇乗りは、単にグネグネと馬の方向を変えるだけの運動に見えるかもしれません。しかし、みなさんは輪乗りをするときに「手前が合っているか」と「内方姿勢になっているか」を気にしているはず。それと同じく、蛇乗りでも手前と内方姿勢が重要です。
カーブの位置を決める
三湾曲を例にした場合、蛇乗りのカーブの位置を決めるのに必要なのは「長蹄跡を6等分する5本のライン」です。実際に馬場にラインが書かれているわけではないので難しいですが、5本のラインを下記のように通っていきます。
- 短蹄跡から出発
- 1本目でカーブの頂点に達し長蹄跡を踏む
- 2本目で馬場の中央線を通る
- 3本目で2つめのカーブの頂点
- 4本目で中央線を通過
- 5本目で最後のカーブ
- 反対側の短蹄跡に到着
20×60mの馬場のように、ちょうど長蹄跡が短蹄跡の3倍の長さがある場合は、三湾曲は単純に半輪乗りを左右交互に3回繰り返す動きになります。しかし、長蹄跡の長さを湾曲数で割った長さ(=輪乗りの直径)が短蹄跡の長さよりも短い場合は、最初の四湾曲の図のように中央線前後で数メートル直進する必要があります。
手前を切り替える
蛇乗りは、言い換えれば手前の異なる半輪乗りを連続して行う運動です。そのため、中央線で次の輪乗りに入る前に手前を切り替える必要があります。
速歩の場合の手前変換は、人間が軽速歩でおしりを浮かせるタイミングを1拍ずらすだけなので中央線上で1拍だけ静反動を入れればOKです。
駈歩の場合は、途中で手前を切り替える方法は2つあります。1つめは「シンプルチェンジ」と呼ばれる方法で、駈歩の途中で速歩または常歩をはさんでふたたび駈歩を出します。2つめは「フライングチェンジ」といって、駈歩の最中に馬が空中で足の運びを変えることで、駈歩を出したまま手前を変える方法です。
内方姿勢を切り替える
内方姿勢とは、輪乗り・巻き乗り・方向転換など円形の運動をする際に、円の形に添うように馬体がやや弓なりになっている姿勢です。
多くの馬は、外側の手綱を首に付けて壁を作り、内側の手綱を開くことで「内側を向いているほうが楽みたい」と感じて首を内方に向けてくれます。さらに、内方の脚で馬体をグーッと圧迫すると胴体がすこし円の外側に湾曲して内方姿勢が取れるでしょう。
蛇乗りでは上記の手前変換を行った直後(もしくは同時に)内方姿勢の扶助を左右切り替えることになります。人間はもちろん、馬が混乱しないように通常の輪乗り以上に扶助の切り替えをしっかりと意識してみましょう!
ポイント
最後に、馬場馬術の要素として蛇乗りを行う場合に「不整」とされないきれいな蛇乗りのポイントを3つ紹介します。競技に出る場合に限らず、レッスンとして蛇乗りを行う場合にも意識してみてくださいね。
半輪乗りのサイズ
蛇乗りのやり方でも紹介したとおり、すべてのカーブは同じ大きさで「長蹄跡÷湾曲数=輪乗りの直径」が理想的な状態です。
普段から馬場の周りにアルファベットのマーカーがある場合は、そのマーカーを目安にしても良いでしょう。もしなければ、馬場のまわりの柵をみて、その支柱を目安にしても良いかもしれません。
中央線上での馬の向き
輪乗りのサイズにも関連することですが、蛇乗りで中央線を通過する際には馬が中央線に対して垂直(短蹄跡と平行)に進むのが正しい状態です。
しかし、輪乗りが小さすぎたり大きすぎたりすると、次のカーブまでに正しい位置に戻ろうとして中央線に斜めに向かっていくことになってしまいます。
おそらく輪乗りが大きくなってしまう人のほうが多いと思いますが、このようなときはしっかり内方姿勢を取ることで輪乗りが膨らみにくくなるはずです。
蹄跡への踏み込み
輪乗りは大きくなりすぎず中央線にはまっすぐ向かっていく…など、カーブに入るときにはすでに次の動作について考える必要があります。しかし、そんなときもカーブの頂点でしっかりと長蹄跡を踏むことを忘れずに。
一見きれいな蛇乗りができていても、長蹄跡よりも手前でカーブし過ぎて馬が長蹄跡を踏まないと「不整」となってしまいます。輪乗りが膨らんでしまうのではと警戒して小回りしすぎたときなどに陥りがちな失敗なので、膨らまない輪乗りができるようになれば長蹄跡も踏みやすくなるでしょう。
まとめ
輪乗りは初心者も行うことが多い運動ですが、その連続となる蛇乗りでは馬場の広さから輪乗りの大きさを考え、手前・内方姿勢の向きを非常に短い時間で切り替えなければなりません。苦手意識を持っている人もいるかもしれませんが、ステップアップのために外せない技術が詰まった動きなのでぜひマスターを目指しましょう!