【難しいけど習得したいテクニック】内方姿勢とは
乗馬を続けていく過程で「内方姿勢」というものを習います。指導を受けながらも混乱してしまうポイントでもあります。しかしできるようになると、さまざまな場面で役立ち、乗馬や馬術の必須テクニックともいえるほど、重要なポイントです。
今回はイメージしやすいように、具体的なやり方と注意点について説明します。ぜひ、身に着けて乗馬スキルをアップさせましょう。
なぜ内方姿勢を取るの?
乗馬の習っていると、あるところで内方姿勢をとるように教わります。インストラクターはそのテクニックの大切さを知っているので何度も教えてくれます。そんな「内方姿勢」、なぜそんなに重要なのでしょう。そしてどのようにすると出来るようになるのでしょう。
最初に内方姿勢がどのようなものを説明し、どうしてその姿勢を取るのかを説明します。
内方姿勢とは
内方姿勢とは、簡単にいうと「回転時(曲がるとき)に馬が曲がりやすい姿勢」のことをいいます。つまり、回転時に馬体を輪線上(弧)に合わせて重心を内方に移動し、遠心力に対応することになります。
自転車に乗って角を曲がる時、行きたい進行方向にハンドルをきって、無意識にでも重心のバランスをとります。
乗馬も曲がるときには、手綱を握っている両手で進行方向に馬の首の方向を変え、さらに重心のバランスをとります。
内方姿勢はただ曲がるだけでなく、「馬が曲がりやすい姿勢」が求められています。馬が曲がりやすい姿勢って具体的にどんな姿勢か説明します。
例えば馬が人を乗せて左に曲がるとき、顔が左を向き、身体も左に重心が傾いていたら曲がりやすいでしょうか。左側の肢が上げにくいと思いませんか。それを避けるため、頭は左を向き、身体は右側に起こすことで重心を中央にもってくる。そうすると左右どちらの肢も動きやすくなりますよね。
そのためには、人間は両手・両足というそれぞれのパーツをそれぞれ正しいタイミングで正しく操作する必要があります。
なぜ内方姿勢を取るの?
馬や豚など蹄がある動物には四肢に球節という関節があります。この球節より下は左右には動かずまっすぐにしか動きません。
そのため馬を直線上で動かすときには問題ありませんが、曲線上では難しくなります。そこで考えられるのが、肢を交差するか(2蹄跡運動)、肢がぶつかるか(交突)、ひねるかです。
正しく肢が交差するのはいいのですが、肢がぶつかったり、ひねったりすると怪我の原因になります。馬にとって肢の怪我は大問題です。競走馬の場合、大きな体を支える4本肢にかかる体重は平均470㎏です。あの細くて長い肢で100㎏以上の体重を支えていることになります。そこで1本でも肢を怪我してしまうと健康な肢への負担が大きくなり、健康だった肢も蹄葉炎(ていようえん)、蹄叉腐爛(ていさふらん)といった病気を発症します。
内方姿勢を取ることで、馬体全体を使って大きく屈曲させ、馬にとって曲がりやすく、スムーズに動けるだけでなく、馬への負担が軽減されます。
具体的なやり方
内方姿勢が馬にとって負担が少なく曲がることができること、怪我の予防になることが理解できると、乗馬のパートナーでもある馬のために内方姿勢をしっかりマスターしようという気持ちになりませんか。
しかし、先ほど説明したように両手・両足のパーツをそれぞれ使いこなす必要があるため、難しく感じるかも知れません。ここからは具体的なやり方について説明します。
首を進行方向へ向ける
内側の手綱を少しだけ開いて、進行方向である方向(内側)へ首を向けます。内側の手綱だけで曲がり始めなければ、内側の手綱を引っ張る、外側の手綱・外側の足を使って馬の首を進行方である内側に向けてください。
押し手綱で首の形をつくる
馬は首が内側にむけば自動的に曲がります。これは理解できるかと思います。しかし、どれくらい曲がるのかは人間の指示が必要になります。
曲がってほしいと思っていたところまで行ったら、開いていた手綱からゆっくり押し手綱に変えて指示をします。指にかかる重さを変えずに押し手綱に変えられるようになれば、馬の顔は内側を向いた状態をキープできるになります。
内側に傾かないようにする
内側を意識しすぎると身体が内側に傾いてしまいます。そこで押し手綱と内方脚を使って、内側に倒れないようにしましょう。
ポイントは馬の肩です。洗い場などで馬を横に押すとき、馬は肩から横に動きます。そのため、肩を内側に残しておくと内側に傾いてきます。そこで進行方向よりも内側に入ってきたら、押し手綱を強め、内方脚をしっかり使い、肩を首よりも外側に出すようにしましょう。
また、肩を外側に出すことを意識しすぎると、外側で開き手綱を使うことも考えられます。確かにそれによって体を外側に起こす手助けが出来ます。しかし、内側の押し手綱より、外側の開き手綱の方が強いとどうなるでしょう。馬の首が外を向いてしまい、内方姿勢ではなくなってしまいます。
外側の開き手綱を使うときには、ゆっくり力の調整をしましょう。
姿勢をコントロール
ここまでくると内方姿勢が出来てきたかと思います。あとは両手・両足を使って維持してみましょう。
形が崩れそうなとき、早めに気づき、その部分にプレッシャーをかけて姿勢をコントロールすることがポイントです。
何度もいいますが難しい技術なのですぐにできなくても大丈夫です。しかし今後も使える、重要なスキルなので覚えておきましょう。
注意点
ここまでの説明で実際にやってみて、上手く人もいるでしょうし、上手くいかない人もいると思います。上手くいかない場合、次の注意点を確認してみることをおすすめします。
「体は外側」の意識
内方姿勢の原点が「回転時(曲がるとき)に馬が曲がりやすい姿勢」です。そのため、負担がかかりやすい内側の肢の負担を軽くし、上げやすくする目的もあります。
そこで内方姿勢をつくるために、馬の首を進行方向である内側に向かせ、馬体も内側に傾いてしまうと内側に肢が上げにくくなります。首は内側でも、馬体は外側に起こすことを意識し、それを忘れないようにしましょう。
両手の手綱の力加減
手綱を持つ内側の手、外側の手の働きがそれぞれ異なります。練習中にショートカットされてしまったり、手綱が強すぎたのか馬が止まってしまったり、曲がりにくくなってしまった経験はありませんか。馬によっても反応が異なることもあります。経験を積んで、力加減を覚えていきましょう。また内方姿勢は手綱を持つ両手だけではく、両方の脚も使う必要があります。
最初は難しい技術ですが、覚えればさまざまな場面で使うことができます。
どんな場面で効果が発揮されるの?
内方姿勢について「さまざまな場面で役立つ」と説明してきましたが、どれほどの場面があるのか紹介します。
・回転や図形運動をするとき
・駈歩発進をするとき
・馬の口の抵抗がでるとき
・ショルダーフォアや肩内など2蹄跡運動を求めるとき
・前肢旋回や後肢旋回するとき
・斜め横歩やハーフパスなどの横運動を求めるとき
・馬を丸めたいとき(収縮)
この説明で、まだ聞いたことがない、聞き慣れない言葉もあるかも知れませんが、スキルの向上と共に覚えていきますし、できることも増えてきます。つまり、今だけでなく今後も内方姿勢が役に立つ場面が増えるということで、覚えておいて損がないスキルです。
まとめ
今回は覚えておくとさまざまな場面で使える、言わば乗馬や馬術の必須テクニック「内方姿勢」について説明しました。
内方姿勢は乗馬のパートナーでもある馬の負担が少なく、曲がりやすい姿勢でスムーズに曲がることが出来る、そして万能といわれるほど役立つ場面が多くあります。
難しいと感じてもスキルの向上にもつながりますので、是非挑戦してみましょう。