【見逃さないで!】危険回避に有効な馬からのサイン
馬はとても頭の良い動物ですが警戒心が強く、思わぬタイミングで驚いて逃げようとしたり、急激な動きをすることがあります。こうしたタイミングをあらかじめ察知することで、落馬などの危険を回避できる可能性が高まります。今回の記事では、こうした危機回避に役立つ「馬からのサイン」について解説します。
耳の動きや方向
馬の感情の動きは、耳によく現れます。特に、下記のような様子が見られた場合は警戒・緊張が高まっているサインなので要注意。馬の様子をよく観察してみましょう。
耳をピンと立てる・クルクル動かす
馬は、何か気になるものがあるときにそちらに向けて耳をピンと立てます。一点をずっと見たり、その方向に耳を向けているときは「気になる・警戒しているものがあるんだな」と気をつける必要があります。
もし気になっているものを見えない場所に動かせる場合は隠したり、近くにあるものの場合は一度馬にしっかり確認させるなど、馬が安心できる方法を考えてみましょう。
耳を伏せる
馬は相手に対して「近づかないで!」という気持ちを示すときに、うなじに付くほどペタンと耳を伏せます。このような場合には、威嚇されている馬や人がさらに近づくと噛みつく・跳ねる場合もあるでしょう。
馬が何かに対して不快に感じているときには、無理に近づこうとせず落ち着くまで待ったり、威嚇している相手が馬の場合には少し距離を離したりすることをおすすめします。
頭の位置
馬の頭の位置は、基本的にリラックスしているときほど低く、周囲に注意を払っているときほど高くなります。そのため、扶助などで馬に注意を促したわけではないのに馬の首がまっすぐ上に向いている場合には、何かに注意を払っている可能性が高いでしょう。
このような場合には、冒頭で紹介したように耳をピンと立てていることが多いものです。そのため、耳を立てているときと同じように馬を安心させる工夫をすることで、馬が何かに怯えて急な動きをするリスクを下げることができます。
動きのリズムの変化
厩務をしている場面では馬の表情や全身の姿勢を確認しやすいですが、騎乗中は馬の全体を観察しにくいこともあるでしょう。このような場面では、動きのリズムが馬の異変を知るサインになる場合があります。
急に何かに注意が向いたり、部班で前後の馬との間隔を馬自身が気にしたり、周囲を飛んでいる虫が気になったり…と、馬はレッスンの最中でもさまざまなことを気にすることがある動物です。
このような場合には、何かを避けるように一瞬微妙に進行方向を変えたり、進んでいる合間に脚で周りを蹴ったりする馬が多いでしょう。こうした変化に素早く気づくためには「普段のリズム」を覚えておくことが大切です。
騎乗中にリズムの変化を感じたら、状況によって一度停止して落ち着かせたり、馬が急に走り出した場合に止められるように気持ち・姿勢の準備をしておきましょう。
その他
ここまで紹介したサインのほかにも、馬が警戒している・不快に感じているときのサインがあります。意外とよくみられるサインなので、こちらも併せて覚えておくと役立ちますよ!
尻尾の様子
馬は、犬のように尻尾を横に振ることはありません。しかし、根元を持ち上げたりおろしたりすることができます。馬が怯えたり警戒しているときには、尻尾が下がり両脚のあいだに挟まれているような状態になることがあります。
このようなときは、何に対して不安・恐れを感じているのか周りを見回してみましょう。対策としては、原因が取り除くことが有効です。しかし、近くに置いてあるものなどではなく音に対する警戒だったり、競技会の会場で普段と違う状況に馬が緊張している場合もありますよね。
このようなときは、馬がいつもより緊張状態にあるため「普段は驚かないことにも過敏になっているかも」と予測しながら接することが重要です。
前掻き
馬が前脚で地面を掘るようにひっかくことを「前掻き(まえがき)」といいます。エサをあげる前・お腹が空いたときによく見られる行動ですが、実は不満があるとき・体調が悪いときにも前掻きをする馬がいます。
不満があるときに関しては、これからエサをもらうという状況も「楽しみだよ!」と感じている馬もいれば「まだなの?早くして!」と思っている馬もいると考えればわかりやすいですね。こうした行動の延長として、人間に何かを要求したいときに前掻きをする馬がいます。
このようなときには「洗い場から馬房に戻そうと思ったら、馬房にあるエサを早く食べたくて馬が走り出す」などのトラブルが起こることがあります。騎乗中であれば問題なく乗っていられる速さでも、馬を曳いているときには事故につながる可能性があるため気を付けましょう。
また、馬は疝痛(せんつう)を起こしたときにも前掻きをすることがあります。人間でいう腹痛をイメージすると軽く考えてしまいがちですが、疝痛は命にかかわることもある病気。普段と違う様子があれば、レッスンやお世話を普段通り続けることはせずスタッフに相談しましょう。
まとめ
馬は表情の少ない動物ですが、耳や尻尾など色々な部分で気持ちに関するサインを出しています。こうしたサインを知り、人間側が「何か不安なのかな」と気付いて対処することで、馬も人間もより安全に過ごすことができるはずです。